Summary
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スタートアップの広報・PRでは、国の動きや社会課題と自社の情報発信を結びつける「GRの視点」が重要
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GRを活かした広報・PR活動は「政策味付け型」「お墨付き型」「規制改革型」の3パターンに大別できる
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年間の政策決定サイクルを可視化した「政策カレンダー」が、GRを活かした広報・PR戦略立案に有効
国内最大級の独立系VCであるグローバル・ブレイン(GB)では、投資先支援の一環として「PRコミュニティ」を通じて、投資先企業の広報・PR担当者向けにナレッジ共有やメディアキャラバンなどのハンズオン支援を行っています。これまで4年間で50回以上開催し、さまざまな企画を実施してきました。
先日のPRコミュニティ勉強会は、「GR×PR~政策の文脈を活かして情報発信戦略を考える~」をテーマに開催。GBにて投資先企業のGovernment Relations(GR)支援を担当する河原木 皓に加え、GRを活かした広報・PRに取り組んでいるnewmo株式会社(newmo)の渉外・広報室長 中澤 理香氏にご登壇いただきました。モデレーターを務めたのは、GBで投資先企業の広報・PR支援を行っているBrand Communication Teamの松井 小麦です。
本記事では、勉強会にて語られた広報・PR活動にGRを掛け合わせる重要性や、具体的な実践方法、質疑応答で話題に挙がったGR推進のポイントをお届けします。
メディアの文脈とも相性の良い「GR」の視点
スタートアップが広報・PR活動を行う際、「新機能のリリース」や「資金調達の発表」などの情報発信を行うことが多くあります。これらは重要な発信ではあるものの、メディア側からすると「個別企業の単なる宣伝」と捉えられかねないため、取材や報道にまで至らないケースも少なくありません。
この課題を突破する方法の1つが、広報・PRと「GR」の掛け合わせです。GRとは「Government Relations」の略で、事業成長を目的として政府や自治体など行政に関わる活動全般のこと。
GBの河原木は、前職の経済産業省での知見を活かし、投資先企業の規制改革や公的支援策の活用、自治体・官公庁へのサービス導入などに伴走するGR支援を担当しています。
河原木は勉強会の冒頭、スタートアップの広報・PRにGRの視点を取り入れる意義について次のように説明しました。
「多くのスタートアップの取り組みは、何らかの社会課題解決と結びついています。国の動きや法改正、社会課題のトレンドと自社のニュースを紐づけて発信すると、いま社会で何が起きているかという『大きなテーマ』の中に自社の動きを盛り込めるため、メディアにとっても取り上げやすい文脈を作ることができます」
「大きなテーマ」とは、たとえば政府が掲げる重点分野や「地方創生」「AIの社会実装」「労働力不足の解消」といった社会課題のキーワードのことです。これらと自社の事業を掛け合わせることで、社会的な関心と自社を紐づけた認知獲得を目指せます。
河原木 皓:2023年にGB参画。Government Relations(GR)チームとして、投資先スタートアップの公的支援策の活用や規制改革などをサポート。
パターン別にみる「GR×PR」のスタートアップ事例
次に河原木は、GRとPRを掛け合わせたアプローチを「政策味付け型」「お墨付き型」「規制改革型」に分類して解説。パターンごとの具体的な事例とともに紹介しました。
1.政策味付け型
1つ目の「政策味付け型」は、政策トレンドや制度変更といった国のニュースに自社の取り組みを重ね合わせて発信する手法です。3つの中で最もハードルが低く、実践しやすい特徴があります。
事例:株式会社HQ
従業員体験(EX)を最大化するEXプラットフォームを展開するHQは、食事補助に関する新サービスをリリースする際、プレスリリースに「企業が負担する食事補助の非課税額上限が42年ぶりに引き上げられた」という税制改正の動きを盛り込みました。
「税制改正の流れに乗って追加リリースされた、お得な新サービス」という明確なユーザーメリットを訴求した結果、日本経済新聞をはじめとするメディアで税制改正のトレンドとともに報道されています。
事例:Starlight Engine株式会社
フュージョンエネルギーの実現に取り組むStarlight Engineは、60億円超の資金調達を発表する際、フュージョンエネルギー開発が国策として推進されているという文脈を加えて発信。政府の成長戦略に挙げられている分野での大型調達としてメディアの注目を集めました。
2.お墨付き型
2つ目の「お墨付き型」は、国や自治体の認定制度、表彰制度、事例集などに自社が選ばれたことを発信し、信頼性を高めるパターンです。特に、大企業を顧客とするようなスタートアップがエンタープライズ営業を加速させるために活用しています。
事例:Lazuli株式会社
プロダクトデータプラットフォーム「Lazuli PDP」を提供するLazuliは、経済産業省が開催した「商品情報プラットフォームを活用した新たな流通DXコンテスト」に応募し、優秀賞を受賞。「業界全体のデータの課題解決に取り組む、国も認めたAIスタートアップ」というポジションを確立し、主要顧客である大企業への営業をさらに加速しました。
事例:ミチビク株式会社
取締役会DXプラットフォーム「michibiku」を提供するミチビクは、経済産業省が取りまとめた「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」の企業事例集に、自社プロダクトの導入事例が掲載されました。「国の方向性や社会トレンドに合致したプロダクト」として信頼感を高め、大企業への商談や自社の採用活動に活かしています。
※なお、本取り組みにはGBのGRチームが伴走支援を行いました。支援の詳細はこちらの記事からご覧ください。
3.規制改革型
3つ目の「規制改革型」は、自社事業の成長のために既存の法律や規制の変更が必要な場合に取る手法です。このアプローチを行う際は、官公庁への直接的な働きかけだけでなく、メディアを通じた世論形成を同時に進める「両輪の動き」が不可欠となります。
たとえば、日本の法制度で認められていない新たなビジネスを行うために、政府の規制改革推進会議などで法改正の必要性やエビデンスを提供する動きと並行して、メディアを通じて制度改革の重要性やメリットを発信するアクションが考えられます。実際にこうした動きをしているスタートアップも多く、この記事で後述するnewmoもその1つです。
「政策カレンダー」から逆算して広報・PR戦略を練る
勉強会の中では、GRを活用した広報・PRを実行するための具体的なアクションも提示されました。その1つが、国の来期の重点分野や予算・税制が決定されるサイクルを可視化した「政策カレンダー」の活用です。
河原木は「国の政策決定は、毎年ほぼ決まったサイクルで動いている」と語り、スタートアップが最低限押さえておくべき国の年間イベントを3つ挙げました。
※なお、GBの公式YouTubeチャンネルの動画「【戦略17分野370兆円投資】2027年度概算要求を元経産省がスタートアップ向け徹底解説/戦略17分野予算が大幅増/スタートアップ向け活用法/フィジカルAI関連は1兆円超/国が最初の顧客となる注目予算」では国が2026年8月31に公表した2027年度予算の概算要求について解説しています。
国は毎年この3つのターニングポイントを経て、翌年の春から新しい予算・税制・法律をスタートさせます。そのため、この3つのタイミングで自社の事業領域に関する記述(自社の業界にまつわる制度や規制の変更、予算の増加など)をチェックし、そこから逆算して広報・PR施策を組み立てることが効果的です。
河原木は、この政策カレンダーを実際にスタートアップが活用した場合のイメージ例についても共有しました。
例:ゲーム領域のスタートアップが活用する場合
2026年の7月に国が発表した「日本成長戦略」では、戦略17分野の中に「コンテンツ」が明記され、中でもゲーム領域は「2033年度までに官民で24.5兆円を投じる」という目標が示されました。
このファクトを知っていれば、自社のプレスリリースに「ゲーム領域は官民で24.5兆円の投資目標が掲げられた重点分野」といった文脈をすぐに盛り込むことができます。さらに8月・12月に予算が具体化するタイミングに合わせて、追い風となるメッセージを発信していくことも可能です。
例:家事支援・ベビーシッター領域のスタートアップが活用する場合
同じく2026年7月の「日本成長戦略」では、家事支援やベビーシッターに関しては「国家資格の創設」や「サービス利用時の税制措置を含む支援策」を検討することが盛り込まれています。
このことを踏まえ、自社のニュースを発信する際は「国家資格創設へ」や「税制措置の検討が進む」といったキーワードをあわせて記載すると、大きな社会の流れを踏まえた広報・PR施策を展開できます。
ステークホルダーとの関係構築や社内体制のポイント
勉強会の後半では、GRを活かした広報・PRに取り組むnewmo渉外・広報室長の中澤氏も交えて質疑応答を実施。以降はその内容を抜粋してお届けします。
中澤 理香:ミクシィ、Yelpを経てメルカリでPRの立ち上げから上場以降まで携わり、マネージャーを務める。退職後、フリーランスを経て、2020年10月より10Xに入社、2021年より取締役CCO。退任後、2024年newmoに参画。
Q. 政治家・省庁・メディアへのアプローチの順番や訴求の使い分けはどうすべきか?
「政治家・省庁・メディアへのアプローチの順番や使い分けはどうすべきか?」という質問に対し、河原木は「省庁→政治家→メディア」という3段階の順序が考えられると回答。「まず担当省庁へ直接アプローチして課題を伝え、なかなか進捗しないようであれば政治家の力も借り、進展させるきっかけを作る。それと並行して、メディアも巻き込んで世論を醸成するというステップが一般的」と語りました。
newmoの中澤氏は、「自社都合の要望だけでは国もメディアも動きづらいため、業界全体の課題であり、かつ国民がどれだけ困っているかという『社会的なイシュー』として訴えかけていくことが不可欠」と回答しました。
さらに続けて中澤氏は、それぞれのステークホルダーの利害関係を把握しておく重要性も解説。「たとえば、政治家へのアプローチでは、地元の選挙区や支持者のリアルな課題と業界・自社事業を絡めたストーリーとして届けると理解いただきやすい。一方、メディアに関しては、『直近の制度改正が見込まれる点』や『いまニュースになっているXXXの裏側』と時事に絡めるなど、それぞれの立場から興味を持ってもらえる文脈でファクトを共有すると良い」とし、newmoで意識した具体的なコミュニケーション方法なども含めて紹介しました。
Q. GRを推進するための社内体制や外部リソースの活用は?
「GRを推進するための社内体制や外部のリソース活用はどうあるべきか」という問いに対しては、中澤氏が自社の体制とノウハウを語りました。
中澤氏は「スタートアップのPRやGRは1~2名程度の小規模な体制であることが多く、リソースには当然限りがある」とした上で、外部パートナーを活用することも1つの手であると提言。
「GR支援会社などに関係構築の支援を依頼するケースが多いが、同じ『政治家』や『官僚』でも、専門性のある領域は人によって異なるため、自社の領域に対して知見がある専門家などを見極めてリレーションを構築していくことが必要」と語り、実践的なアドバイスとともに勉強会を締めくくりました。
質疑応答の時間には、参加者から各社の事業課題に即した多様な質問が投げかけられました。
社会の追い風を受けて、事業を伸ばすために
本勉強会では、自社の情報発信を国の動きや社会課題と結びつける「GR×PR」の重要性や具体的な手法について解説しました。
国の政策動向や社会トレンドを捉えた「GR×PR」の取り組みは、スタートアップが事業成長を加速させるための強力な武器となります。しかし、リソースが限られ、ノウハウや経験が少ないことが多いスタートアップにおいて、自社単独による政策動向のキャッチアップや省庁との折衝、GRを掛け合わせた戦略的な広報・PR展開はハードルが高いのも事実です。
GBではそうした課題感を抱えるスタートアップをサポートするため、河原木の所属するGRチームや広報・PR支援を担うBrand Communication Teamが各専門領域の支援を提供しています。
「規制改革やルールメイキングに取り組みたい」「自治体・省庁との連携を深めたい」「政策トレンドを活かした広報・PRを展開したい」といったニーズをお持ちのGB投資先企業の方は、ぜひ担当キャピタリストまでご連絡ください。また、こうした事業支援を伴う資金調達に関心のあるスタートアップ起業家の方からのお問い合わせもお待ちしています。
GBでは今後も「未踏社会の創造」というミッションのもと、スタートアップの事業成長に資するような発信や活動を継続して行ってまいります。
※所属、役職名、数値などは勉強会開催時のものです
(編集:GB Brand Communication Team)