広報・PR未経験でも成果を出せた秘訣とは──スタートアップが押さえておきたい5つのアクション

グローバル・ブレイン(GB)が投資先支援の一環として投資先企業の広報・PR担当者向けにこれまで約50回続けてきた施策「PRコミュニティ」。その勉強会で語られた、スタートアップに多い「1人広報」でも活用できるナレッジをご紹介します。

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【Summary】

  • 事業成長に直結するKPIを立て、会社の実績を数字で把握する

  • ステークホルダーの行動と社会の動きからメディア戦略を立てる

  • 社内情報と外部リソースをフル活用し「1人広報」の限界を突破する

国内最大級の独立系VCであるグローバル・ブレイン(GB)では、投資先支援の一環として「PRコミュニティ」という施策を通じて、投資先企業の広報・PR担当者向けにナレッジの共有やメディアキャラバンなどの支援を行っています。これまで4年間で通算約50回開催し、さまざまな施策を実施してきました。

先日のPRコミュニティでは「事業成長につなげる広報・PRをテーマに勉強会を開催。メインスピーカーとして登壇したのは、野菜がもらえるお買い物アプリ「カウシェ」を提供する、株式会社カウシェの広報 原田 七穂氏です。原田氏は同社で未経験から広報・PRとしてのキャリアをスタートしましたが、地道な広報・PR戦略および施策の実行を通じて、直近1年で18件のテレビ取材につなげました。結果としてアプリのデイリーアクティブユーザー数は68倍、売上総利益は252倍となるなど、、事業成長に寄与した実績を持っています。

本記事では、原田氏が勉強会で明かした事業成長につながる広報・PRのための具体的なアクションを5つご紹介します。(※モデレーター:GB Brand Communication Team 松井 小麦

勉強会当日の様子
勉強会当日の様子

1.「広報・PR以外」の仕事で自社・製品の理解を深める

まずはじめに原田氏は、自身のキャリアから得られた広報・PR業務への示唆を紹介。

前職ではマーケティングや法人営業に携わっており、広報・PRは未経験だったという原田氏。カウシェ入社後に採用広報やプロダクト広報に携わり、さらに領域を広げてマーケティングに関与した時期もあったそうです。こうした「複数領域にまたがるキャリアが広報・PR担当者として事業を深く理解する大きな武器になったといいます。

たとえば、採用領域に携わることで「採用の停滞が事業のロードマップの遅れにつながり、結果的に目標達成ができなくなる」という、事業と採用の因果関係を理解することにつながったと語ります。また、SNSや広告出稿に携わってアプリマーケティングを学んだことが、自社のビジネスモデルの把握につながったそうです。

原田氏は「広報・PR以外の領域を経験することが、プロダクトの特性や会社の売上構造への理解につながったと、幅広い業務に携わる意義を強調しました。

カウシェ原田 七穂氏
原田 七穂:大学在学中から越境ECのスタートアップ立ち上げに参画し、コンテンツマーケティングから実店舗運営まで経験。以降も一貫してスタートアップに携わり、キュレーションEC「Cart」や美容医療の口コミ・予約サービス「トリビュー」にてマーケティングや法人営業を担当。2022年よりカウシェの広報に従事。

2.事業成長と接続するKPIを立てる

次に、原田氏はスタートアップの広報・PR担当者が陥りがちな罠として「メディア露出そのものが目的化してしまうことを挙げ、事業成長と接続するKPIを立てる必要性を指摘。

カウシェでも過去にメディア露出を複数実現できたものの、アプリのインストールにまったくつながらなかったケースがあったといいます。そうした経験から、現在カウシェでは広報・PR活動のKPIとして「アプリのインストール数」を追っているとのこと。「XX月に『XXXXX』というメディアでこんな切り口で紹介され、XX万件のインストールにつなげる」のような具体的な数値目標を立てて実行していると明かしました。

また、原田氏は「事業にコミットする広報・PRのためには『数字』を読めるようになることが不可欠と強調。社内のスプレッドシートを毎日見て事業に関わる数値をチェックしているとも語り、「社内メンバーと同じ目線で会話するためにも、他部署や経営陣との共通言語である『数字』を理解するべきだ」と述べました。

3.CEOの“頭の中”や社内情報を網羅的に把握する

社内コミュニケーションに関する話題の中で、原田氏が加えて明かしたのは、CEOとの1on1を行う重要性です。事業の旗振り役であるCEOの目指す方向と広報・PR戦略を一致させるために、意識的に1on1に取り組んでいるといいます。

原田氏がCEOとの1on1でよく聞くのは「いま、1番脳内を占めていることを3つ教えてくださいという質問。これにより、CEOがいま最も懸念していることに気づけたり、少し先に起こる事業の動きを察知したりできるといいます。実際に、1on1では社内でも極秘だった大企業との資本業務提携について早期に共有してもらい、余裕を持って広報・PR戦略の策定を進められたのだそうです。

モデレーターの松井が「CEOは多忙なことが多い。1on1の時間を確保できない場合はどうすればよいか」と尋ねると、原田氏は「コーヒーを一緒に買いに行くついでに雑談をするだけでも良い。信頼関係を築くためには日々の接点が不可欠と回答。また、時にはCEOのGoogleカレンダーを見て、社内の他部署とのミーティングの後半の時間を譲ってもらうなど、泥臭く関係構築していくことが大切だと話しました。

グローバル・ブレイン松井 小麦
松井 小麦:2019年GBに参画。GB自体のPRと投資先のPR・プロモーション支援に従事。

さらに、自ら積極的に社内情報を取りに行くスタンスも重要です。原田氏は、経営会議の議事録など、社内で公開されている情報を確認することに加えて、他部署のSlack上のやり取りを毎日読み切るのを日課にしているとのこと。プロダクトチームのチャンネルから新機能のネタをいち早く見つけたり、営業チームの投稿から顧客の声を把握したりと、事業や現場のトピックスをリアルタイムで掴んでいるそうです。

4.「ステークホルダーの行動」と「社会の動き」から戦略を立てる

CEOの方針や事業状況、現場のネタなどを把握した後は、それらを広報・PRおよびメディア戦略に落とし込んでいきます。

原田氏はカウシェのメインユーザーは「地方在住の節約志向な50代女性」であるという前提を共有しつつ、彼女たちに情報を届けるために立案したメディア戦略の具体例を紹介しました。

まずはじめに行ったのが、メインユーザー層の生活リズムの分析です。彼女たちは夜早く就寝する傾向があることをユーザーインタビューから知り、生活の中で目にしている可能性が高い朝のニュース番組や昼の情報番組に露出できると効果的ではという仮説を設定。さらにWebの領域では、ターゲット層が最も利用するSNSがインスタグラムであると特定し、マーケティングチームと連携してインフルエンサー施策を実施しました。

外部メディアに取り上げてもらうには、メディア側の関心を惹くアプローチも重要です。原田氏はメディアとのコミュニケーションにおいては「社会の動きと自社の話題を絡めることを意識。たとえば、総務省から「消費者物価指数」が発表されるタイミングに合わせ、節約や物価に関連する自社サービスのニュースを記者やテレビディレクターに提案したそうです。

重要なステークホルダーであるメインユーザーの生活実態に寄り添い、かつメディアが報じたい社会的な文脈を掛け合わせる設計が奏功し、1年で18件のテレビ取材をしてもらえることに。(前年比2.66倍)番組放映後にはアプリのインストール数も大きく増加し、事業成長につながる広報・PRを実現できました。

5.VCなどの外部リソースを徹底活用する

最後に原田氏は、スタートアップで広報・PR活動を行う際は「外部リソースを活用することが重要と発言。

スタートアップの広報・PR担当者は1人体制であることが多く、社内だけで悩んでいては視野も狭くなりがちです。そこで、出資元であるVCの支援チームなどを巻き込み、パートナーとして活用することを推奨しました。

具体的な活用事例として挙げられたのは、GBが主催した、複数の投資先企業が合同でキー局プロデューサーへピッチを行うメディアプロモートイベントです。この場を活用し、カウシェでは同局の情報番組で自社の特集を組んでもらうことに成功しました。

また、PRコミュニティを通じて出会った他企業の広報・PR担当と連携し、「節約」をテーマにしたメディア向けイベントを企画・共催した事例も。その際、企画書の段階でGBの広報・PR支援メンバーに壁打ちを依頼したことで、企画をブラッシュアップできたとも振り返りました。

これに対し松井は「GBの広報・PR支援体制やPRコミュニティを活用した好事例。ぜひ投資先企業の皆様にはGBの支援を積極的に活用してほしい」と発言。原田氏は「VCは投資先企業の企業価値向上を望んでいる。遠慮せずに相談することがお互いの成果につながるのでは」と語り、社内外の多くの人を巻き込んで広報・PR活動を行う意義を強調してセッションを結びました。

積極的な議論が続いた質疑応答

講義の後には、参加者と登壇者による質疑応答も実施。スタートアップで広報・PR活動に励む者同士の積極的な意見交換が交わされました。

なお、開催後の参加者アンケートでは満足度100%を記録。「明日から実践できそうなノウハウに富んだ貴重な会でした」「PRは事業理解に尽きると思いました」などポジティブなコメントを多数いただきました。

今後もGBでは「未踏社会の創造」というミッションのもと、スタートアップの事業成長に資する機会を積極的に設けてまいります。

※所属、役職名、数値などは勉強会開催時のものです
(編集:GB Brand Communication Team)

コラボレーター

原田 七穂のプロフィール画像

原田 七穂

株式会社カウシェ

PR

松井 小麦のプロフィール画像

松井 小麦

グローバル・ブレイン株式会社

Director, PR Talent