
重富 渚
グローバル・ブレイン株式会社
Investment Group Partner
2018年にGBに参画。国内外のスタートアップのソーシング、投資実行から投資支援まで一貫通貫して従事。スタートアップ企業と大手事業会社との協業支援も行う。また、ESGポリシーマネージャーとしてESGポリシーを投資検討プロセスを導入し、VC業界におけるESG意識の醸成に取り組む。
グローバル・ブレインでは、投資先企業を対象に2026年度のESG実態調査を行いました。182社の回答から見えた現状と課題、持続可能な成長に不可欠なESG経営のヒントをお届けします。

国内最大級の独立系VCであるグローバル・ブレイン(GB)
GBでは、グローバルに活躍するスタートアップの創出のため、ESG(環境・社会・ガバナンス)
その活動の一環として、2026年も投資先企業を対象にしたESG実態調査を行いました。本記事では、2026年度の調査結果に基づき、スタートアップにおけるESGの現状と課題、今後求められる具体的な対応策などについて解説します。
目的 :株式上場を目指す企業としてのESGの意識醸成、およびESGの実態調査
質問項目 :全45問 (各社の基礎情報含む)
集計方法 :Googleフォーム
調査期間 :2026年1月21日(水)
対象企業 :国内外のGB投資先企業すべて
回答数 :182社(国内企業:138社、海外企業:44社)
2026年度の回答社数は、2025年度の134社から182社へと大幅に増加しました。
全体的な回答の傾向に関しては昨年度との大きな変化はなく、多くの企業でガバナンス、社会、環境の順に対応が進んではいるものの、依然として環境への対応が最も高いハードルとなっています。詳しくは次項以降でご紹介します。
今回の調査では、「1.環境・2.社会・3.ガバナンス」
ESGマテリアリティとは、企業が持続的に成長し、中長期的に企業価値を向上させるために優先して取り組むべき「重要課題」
しかし、今回の調査ではESGマテリアリティを把握している企業は全体の7%程度に留まりました。特定に取り組む企業の特定手法についても調査したところ、国内企業ではSDGs、海外企業ではISO26000やEcoVadisなどが活用されていることがわかっています。
もう1つのESGインシデントとは、事業活動において社内外で発生するESG関連の重大なトラブルや不祥事(環境破壊、情報漏洩、ハラスメントなど)
ESG経営においては、平時の取り組みだけでなく、こうした有事の際に迅速かつ適切に対処できる体制づくりが不可欠です。今回の調査では、社内外におけるESGインシデントの通報窓口や受付の仕組みを設けている企業はステージを追うごとに増加し、レイター期には対応率が90%に達していることがわかりました。インシデント発生時の対応体制は、事業規模の拡大とともに着実に整備が進んでいるようです。
GHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)
現在、国内のプライム市場では、気候変動が企業財務に与える影響を開示する国際的枠組みである「TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)
GHG測定ツールとしてはExcel管理のほか、外部サービスやコンサルタントなどが活用されていました。 なお、自社のコア事業に対して、気候変動がもたらす影響をマネジメントレベル以上で議論している割合はいずれのステージでも半数以下に留まっており、課題が大きい箇所といえます。
自社が事業を展開する市場において、有害物質の管理や排出・廃棄方法に関する規制や動向を定期的に確認しているかという点についても調査を行いました。
各社の事業領域の特性もあり重要性は意識されているものの、国際規格(またはそれに準拠した枠組み)
昨今注目されている「事業活動による生物多様性」
事業規模がまだ小さい企業が多いため、影響範囲の把握自体が難しいケースもあると想定されます。一方で、生物多様性への影響により、サプライチェーンの分断や原材料調達リスクが発生する恐れもあることから、スタートアップに対する意識付けは今後も求められます。
今後の事業成長に必要となるコア人材の採用において、多様性の確保の必要性を意識している企業はいずれのフェーズでも90%程度存在しています。
しかし、多様性の確保や公正な人事を行うための具体的な方針や仕組みにまで落とし込めている企業は30%程度に留まり、上場に近いレイター期であっても40%以下という結果になりました。
採用後の従業員のパフォーマンス向上に寄与する福利厚生などの施策については、シード期であっても半数近くの企業が対応しており、人材への対応やエンゲージメント向上に対する意識の高さが伺えます。
ハラスメントなどの不祥事の通報窓口の整備状況は、ステージを追うごとに対応率が高まる傾向にあります。
一方で、昨今注目される「マーケティング施策における倫理性・社会的責任を踏まえた方針」
ガバナンスの領域は、環境や社会の項目と比較して最も整備が進んでいます。取締役会を設置している企業は全体で76%に達し、シードステージであっても半数以上が設置済みです。さらに、ステージを追うごとに社外取締役の人員も拡充されており、経営陣のガバナンスへの高い意識が見受けられます。
自社のプライバシーポリシーはいずれのステージでも80%以上の企業が定めており、データ漏洩などのインシデント対応計画についても70%の企業が整備を完了しています。
情報保護に関する外部認証の取得状況は、ステージが進むにつれて向上。具体的には、ISMSやプライバシーマーク、ISO/IEC27001などの取得事例が多く挙げられており、上場や商取引に向けた重要事項として意識高く取り組まれていると推察されます。
一方で、行動規範(ハラスメント防止など)
スタートアップの各ステージで強化が進むガバナンス領域ですが、一部では対応が限定的な項目もあります。サプライヤー選定においてESG基準を設けている企業はいずれのステージでも20~30%程度に留まっており、今後の課題といえます。
今回の調査を通じて、ガバナンスや従業員向けの施策は、外部投資家や従業員規模の拡大に合わせて自然と促進される傾向があることがわかりました。一方で、環境への対応は依然として意識的な取り組みが必要であり、ハードルの高さが明らかになっています。
GBでは、2022年から本アンケートを継続実施しており、スタートアップの各フェーズにおけるESG課題の傾向や共通性が明らかになってきています。今後GBとしてはそうした知見を活かしながら、スタートアップに向けたより実践的なナレッジシェアを行い、フェーズに応じた投資先支援を行っていく予定です。
今後もGBは持続可能な社会の実現に責任を持つVCとして、グローバルに活躍するスタートアップの創出を目指し、ESG活動・支援を継続してまいります。
※所属、役職名、数値などは記事掲載時のものです
(編集:GB Brand Communication Team)
環境省.“「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

グローバル・ブレイン株式会社
Investment Group Partner
2018年にGBに参画。国内外のスタートアップのソーシング、投資実行から投資支援まで一貫通貫して従事。スタートアップ企業と大手事業会社との協業支援も行う。また、ESGポリシーマネージャーとしてESGポリシーを投資検討プロセスを導入し、VC業界におけるESG意識の醸成に取り組む。