働く子育て世代のために、スタートアップが取り組んでいること

スタートアップにとっても、働くパパ・ママへの取り組みは重要です。

ユーフォリアで広報として働く大塚さんは絶賛子育て奮闘中(写真の前列中央・オレンジニットの女性)

執筆: Universe編集部

スタートアップのチームを強くするカルチャーとは何か?その答えは一様ではないため、いろいろな企業の声を聞いてみようという企画の後半です。前半では各社の福利厚生について4社の取り組みをお伝えしました。後半は働き方について、です。

人にはライフステージに合わせたイベントがあります。特に大きいのはやはり結婚や出産でしょう。子育て世代はそのまま労働人口における現役世代であることが大半ですから、スタートアップにとっても、働くパパ・ママへの取り組みは必須とも言えます。スポーツテックのユーフォリアで広報を務める大家純子さんも子育て真っ最中のお一人です。

「もともとリモート業務を推奨しているユーフォリアですが、コロナ感染症が始まる前は毎日出社していました。朝送り出して出社。17時に退勤し18時にお迎え。帰宅後家事、子どもが寝るまでドタバタ…という生活でした。残業がある時は子どもを寝かせた後、深夜に起き出し残りの仕事を片付けます(それは今も変わらない)。17時退勤だとどうしても時短勤務にならざるを得ず、本当はもっと働きたい、でも子育てもしっかりやりたい、という複雑な心境を抱えていました。どこかで諦める、我慢する、頼る、ことをしないと両方を100%はできません(できているパワフルな方もいらっしゃるとは思いますが)」

こうした子育てしながらでも働きたい、という思いはスタートアップでも大企業でも同じかもしれません。一方、感染症拡大は強制的にリモート環境での仕事を余儀なくしました。結果、この状況にも変化が生まれています。

「感染症が広まって完全リモートワークが始まると通勤時間の2時間が業務に使えるようになり、時短勤務ではなくほかの社員と同様にフルで働くことが可能になりました。生活の変化もありますが、引け目を感じなくていいという心理的な変化も大きいです。ユーフォリアはほかにも小さな子どもがいる社員が多いので、Slackの子育てチャンネルで相談しあったり、リモートでパパ・ママ会をしたり、理解度が高く助かっています。働きながら子育てするのは、大変なことも多いですが、子どもはやがて大きくなって手がかからなくなります。期間限定の大変さと割り切って、体力つけて今を楽しめるといいですね」(大家さん)

そんなパパ・ママ奮闘記について、会社の代表として子育てに取り組む経験をシェアしてくれたのが、クラウド受付「RECEPTIONIST」代表取締役CEOの橋本真里子さんと、ファーメンステーション代表取締役の酒井里奈さんです。現在進行中のリアルなエピソードを語ってくれました。

リリース直後の妊娠を支えてくれたチーム

ファーメンステーションのチーム写真(代表の酒井さんは写真の前列中央)
ファーメンステーションのチーム写真(代表の酒井さんは写真の前列中央)

ファーメンステーションの代表として、製造拠点がある岩手に出張を繰り返しながら子育てを経験したのが酒井さんです。夫婦共に出張などが多く、お子さんが小学校の自由研究として酒井さんに同行、インタビューをしたこともあるのだとか。

「夕ご飯の時間に帰れない!間に合わない!と言うときは、近所の行きつけのお店に連絡してご飯出してもらったり、同じマンションのお友達のお宅にお世話になることも(泊めてもらったり)しょっちゅうです」(酒井さん)

その酒井さんと同じく子育て奮闘中のママ代表が橋本さんです。彼女もまた、仕事と子育ての両立に周囲の力をうまく借りているとお話していました。

「母親も社長も代わりのない立場であるので、どうしてもどちらかを優先しないといけないときがあります。具合の悪い子どもをシッターさんに頼んで取材や重要な会議に出かけなければいけないときは母親としても非常に辛いです…。また、0歳のときは保育園に預けることができないので、会社に連れていくことが多かったです。抱っこ紐でミーティング、会議しながら授乳などはよくある風景で、紹介など関係性のある往訪先には「お伺いしたいのですが、子どもと一緒で…」と事情をお伝えし一緒に行ったこともあります」(橋本さん)

周囲の助けを借りる一方、会社としてできることもあります。橋本さんが今、欲しいと考えている制度が「子どものワクチン接種サポート」だそうです。子どもは3歳くらいまで予防接種やワクチンが多く、接種後の体調変化が懸念されるために当日は保育園などに預けることができません。当然、親は有給などを使って仕事をお休みする必要があります。橋本さんは「打つことが義務つけられており誰もが遠る道だからこそ、会社の制度でサポートしても良いのでは」と考えているのだとか。

また、酒井さんは会社に多くのママ・パパが在籍していることから、全社的な取り組みも検討しているとお話してくれました。

「今のメンバー、10名のうち4名がママ、3名がパパ、子どもの数は合計9人、まもなく10人の予定です(祝!)。お子さんの送り迎えの時間などを加味した時間帯での勤務が可能ですし、リモートワークもOKで、たまにメンバーのお子さんが登場するのも楽しいです。コロナ禍で実現していませんが、家族や親しい人を職場に招待するファミリーデーのようなものをやりたいと思っていますし、東京オフィスだけでなく、岩手の拠点、私たちのビジネスの原点である未利用資源が実際に循環している様子を、家族のみなさんにも見て理解してもらえる機会を作りたいですね。美味しいものも多いし、お子さんも絶対楽しいと思います」(酒井さん)

そんなお二人が口を揃えるのがスタートアップならではの柔軟な対応力です。

経験者の酒井さんが「スタートアップだと会社によるかもしれませんが、大企業に比べて柔軟な対応が可能ですし子育てしやすい印象がある」と語るように、チームとの関係が近い分、大変な状況を周囲が放っておけなくなるのではないでしょうか?橋本さんもチームとのオープンなコミュニケーションが鍵になったと振り返ります。

「スタートアップの仕事は大企業と違って見えやすいです。規模が小さいからこそ『このサービスはお父さん/お母さんが働いてる会社のものなんだよ!』と自信を持って言えるし、子どもも親の仕事がイメージしやすく、彼らを通じて誇りや『やりがい』を感じられると思います。大企業と違って制度が整い切っていないのを難しいと思う分、制度を作れる可能性があることは楽しさでもあるかもしれません。

私はサービスリリースして間もなく『これから忙しくなるぞ!』というタイミングで妊娠しました。不安を抱えてCOOに打ち明けた時『絶対に産んだほうがいいよ!』そして『みんなで育てればいいよ。みんなで交代に抱っこしてさ」と言ってもらいました。周囲が子育てに対する理解があったことはその後の私のどれだけ支えになったことかわかりません。核家族が多く、少子高齢化の中で家族・夫婦だけで子育てする時代から、地域やコミュニティで育てる時代になっているんじゃないかと思っています。頼ることはだめではないし、もっと周りを頼りながら子育てしていって欲しいと思います!」(橋本さん)

子育てと仕事の両立はもちろん大変ですが、見方を変えるとまた違った景色が見えてきます。酒井さんも「否応なしに一旦仕事の手を休めて、ご飯を作ったり、子どもと過ごす時間があることで、頭の切り替えができて人間らしい生活を送ることができているかもしれません」と語るように、それまでとは異なる人生の過ごし方を体験できる機会を得た、とも言えるのではないでしょうか。酒井さんは後に続くパパ・ママたちにこんな楽しいアドバイスをくれました。

「ハードワークで、子どもと過ごす時間が短いことを気にしていた時期もありますが、今は全然気にしていません!出張に同行したり、オンラインの様子を見たりしたことで、私の仕事を身近に感じてくれて、家族は最大の理解者になってくれていると思います。あと、子どもが早く自立します!私があまりに色々なことをやらないので、我が家の2人は、料理も洗濯もなんでもできるようになりました(今、中2と小5です)。親が生き生きしていたら、子どももハッピーかなと思います!」(酒井さん)。

Universe総研はじめます

今回、福利厚生やパパ・ママの取り組みを通じてスタートアップのカルチャーを切り取ってみました。やりがいや報酬、働き方と一口に言っても、事業内容やチームの在り方、それぞれの変数によってその表現方法は様々です。共通するところもありながら、独自の切り口を作り、そしてチームがそれを実践することでカルチャーは成長・定着していきます。

絶対的な回答があるわけではありませんが、ケースを追うことで参考になることも大いにあると感じています。そこでGB Universeでは「Universe総研」として、スタートアップのカルチャーを伝える連載を始めます。前述しましたが、内向きの取り組みを積極的に広報することで話題にし、まだ見ぬ未来のチームメンバーに届けることも大切なカルチャーづくりの一環になると考えています。

編集部では引き続き、いくつかの切り口で取材を続け、みなさんに役立つ情報をお届けできればと思います。