VCハンズオンリアル座談会(3)VCの支援について正直どう思ったか

ハンズオンにおける課題や受け入れの方法についてお伝えします。

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執筆: Universe編集部

前回からの続き。VCによるハンズオン支援は本当に役に立つのか。何を実施してどのように受け入れるべきなのか。前回の具体的な戦略、アクションプランから、ハンズオンにおける課題や受け入れの方法についてお伝えします。(文中の一部敬称は略させていただきました)

インタビュアー:慎正宗(グローバル・ブレインStrategy / Biz Dev)
インタビュイー:株式会社OKAN 代表取締役CEO・沢木 恵太氏、株式会社ROXX 代表取締役・中嶋汰朗氏

VCハンズオンは必要か?

:中嶋さんは社内でも解像度が一番高い。そこにみんなが追いつけてなくて、現場とのギャップになってる。その現場と経営の間に出来てるギャップを埋めるというのが、僕らの支援で価値を出していきたい所ですね。

そこでお二人に質問なんですけれども、VCの支援部隊が入って来るというのは、ぶっちゃけどう思いました?

沢木:二つ目の質問に重なってくるんですけど、結局フェーズチェンジっていう話あるじゃないですか。フェーズチェンジする時にひずみが起きますと。ひずみが起きて、全部自分たちで内部で解決できればいいんですけど、解決できないんですよね。リソースが足りない、その能力を持ってるタレントが少ない。

その状態でよくアドバイスはいただきます。ただ、「そりゃ分かるんですよ、いやでもできないんです」っていう話もあるので、本当にやれるんだろうかって最初はちょっと疑ってました(笑。でも実際に中に入ってもらったら、案件持ってくるし、商談もめっちゃ一緒に行ってくれますし。あ、違うかもって思いました。

中嶋:僕が気になるのは実行部分が伴うのかっていうところ。戦略的な部分というよりも、やり切れてるのかの方に8割方は問題があるし、うちもそうだった訳ですよ。だから本当にやりきれるのかが心配だったっていうのはありますよね。

:OKANも昨年8月ぐらいに入ったけど、10月ぐらいまで話してくれなかったもんね、あんまりね(笑。お手並み拝見みたいな(笑

沢木:僕が話した内容を、自分なりに解釈してまとめてみましたってドキュメントを書いて持ってきてくださったんですよ。そこまでやる人はまずいないので、その時点でなんか違う!と思いましたよね。

:最初の信用獲得はけっこう大事ですね。ROXXの場合は実名で競合インタビューやって、最後はその競合に中嶋さんと一緒に会いに行って、協業をお願いするっていう(笑。やっぱりその辺りは大事かな。

じゃあ逆に、ぶっちゃけここは難しいなとか、ここ改善してくれたらもっと嬉しいなみたいなポイントってありますか?

沢木:入っていただいて良かったなと思っているんですけど、ここから先は難しいだろうなと思ってます。引き際が難しいだろうなと。現場に入らなくなって、アドバイザー的な感じになって、現場がやりづらいみたいなことが起きるんだろうなと感じています。

:まさにそれで、やればやるほど僕らは楽しくなって好きになっちゃうから、引き際、卒業は難しいんですよね。戦略施策を2ラウンド回して1回目は半分僕らも手伝う。2回目は自分たちで回して、それが1クオーターうまくいったら卒業しようと。卒業っていうのは僕らにとって本当は一番幸せなことなので、今後も出来る限り数多くの卒業支援先を作っていきたいなと思ってます。

では次の質問ですが、ハンズオン支援について、どういうフェーズや課題意識を持ったスタートアップにお勧めしたい、またはこういうところにはお勧めはしないみたいなのはあったりします?

中嶋:型がまだないところですね。間違ったやり方を正しいと思い込んでやっているケースが多いんですよね。そのときどきに応じてベストだと思ってやってるんですけども、より良いやり方というのがある。

それがトゥーマッチなのか、何かがめちゃくちゃ足りてないのか。やりすぎっていうくらいやっちゃうと疲弊を生むし、足りてないと成長しないし。その適度なタイムラインを知る。

俺は3カ月待てと言われたらめちゃくちゃストレスなわけです。待てるか!って思う。でもここは待たないと結果出ないっていう意見を社内で俺に言ってくる人はやっぱりいないし、取締役会で毎月丁寧にやってても、全部は伝わんないじゃないですか。

:その点でいうと、僕らが活動支援してるところは毎週内部でフィードバックしてるんですよ。今こういう状況だって。組織の状況はこうで、課題がこうで、今こういうことやってると。だから株主とのコミュニケーションや現場の状況の理解みたいなのはすごい上がる。

中嶋:株主入ってくると、けっこう難しいじゃないですか?やっぱり毎週会って話すっていうのはなかなかできないし。

社長の参謀となる遊撃部隊、“ミドルオフィス”の必要性

:生の情報をちゃんと分かっていると強いですよね。取締役会って一番お化粧された情報が上がってくるっていう世界だから。キャピタリストが生の情報を生のまま理解できるというのは、すごく重要なことだと思うんですよ。

沢木:OKANは今100名超えぐらいなので、ミドルオフィスが必要になってくるんですよ。(初期は)経営企画なんていらないじゃないですか。でも経営企画がいないと成り立たない状態になっていくんです。

:部門が縦割りになって、横が何やってるか分かんないとか、部門横断でプロジェクトが動かなきゃいけないんだけどその旗振る人がいないとか、そういう状態。そこにやっぱりミドルオフィスが必要になってきますよね。

最後に、どんな状態だと支援が役に立つのか?1年やって思ったことを共有したいと思います。一つはスタートアップ側の成長意識とか危機意識。これが高いか低いかで、すごく差が生まれます。

もう一つはキャピタリストとスタートアップの信頼関係が高いか低いか。成長意識も信頼関係も低い場合だと、支援効果が引き算になっちゃいます。

中嶋:そんな会社、あるんですか?

:あんまりないですが、こういう場合は「Do No Harm」ですね。支援しない。逆に成長意識や危機意識は高いんだけど、信頼関係が低い場合。これは最初の沢木さん(笑。この場合は支援効果が足し算止まりになるんで、信頼感を醸成します。たとえば「俺が営業して仕事取ってくるわ!」っていう具合にクイックウィンを取って、足し算から掛け算に持っていく。

僕は信頼関係の方が大事だと思ってます。関与する現場メンバーのコミュニケーション総質量ですね。まず人数と、頻度、質。人数はすごく大事で、支援しててもCXOしか出てこない会社への支援は効果がなかなか出ないです。これはたぶん信頼関係がまだ成立してなくて、現場まで入って欲しくない、見て欲しくないという状態に陥ることもあります。

中嶋:そうなるんですね。

:一方で、2社ともそうだけど、(参加しているのが)現場メンバー含めた全員みたいな世界になってくると、僕らもどこに価値が出しどころがあるかっていうのが見えるし、どこに課題があるからそこ行こうかっていうのが見えるので、価値が出しやすい。

もし今後、支援に入る機会が頂ければ何も隠すことはなく、オープンにしていただけると信頼関係は絶対担保されるかなと思います。僕らもそれに対してはしごは絶対に外さないので。

沢木:ステークホルダーに開けっぴろげにするって、けっこう怖いんですよ。

:ドキドキしますよね。

沢木:でも、ちゃんとスタートアップ側に立つってスタンスがあるからできた気がします。

中嶋:確かに悪いことを先に言うってやっぱりできない期間が僕は長かったので、特に株主。良い報告がしたいから。やばい!うまくいかないって言いづらい。

:でも中嶋さんのところも沢木さんのところも、現場はすごくオープンですよね。支援に対して。NOっていう姿勢があまりない。それはやっぱり成長したいとか、学びたいとか、外の意見を聞きたいとか、一緒にやってみたいとかの気持ちがすごく強いから。

どんどん現場に会わせた方がいいと思うんですよね。株主だからCXOが対応しなきゃいけないとか、そんな必要はたぶん全然ないので、会えば会うほど現場も伸びるし、僕らも課題が分かるし。

最後に我々の支援にご興味のある皆様。近くご一緒できる機会、ご縁を楽しみにしています。まだまだリソースが少なくて、そんな数はこなせないんですけども、ぜひご一緒できればなと思っています。支援のご希望があれば、担当キャピタリストにご一報いただければと思いますので何卒よろしくお願いします。