インパクト投資を考える上で重要な「3つの基本要素」——グローバルにおけるESG投資、インパクト投資の最前線(2)

今回はインパクト投資における3つの基本要素について解説していきます。

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執筆: Universe編集部、講演・編集協力: 須藤 奈応

昨今、ESGを考慮した事業運営は、持続的に経営を行うために必要不可欠な要素となっています。グローバル・ブレインでもESGポリシーを策定し、運用プログラムに順次適用していくことをお知らせしました。

先日開催された、オープンイノベーション推進に積極的な大企業様とのラボ「αトラッカーズ」の定例会にて、国内外のインパクト投資に造詣の深い、一般社団法人 社会変革推進財団 須藤奈応さんより、投資を通じたSDGsやサステナビリティへの取組みをご紹介いただきました。ESG投資に対する理解を深めるため、お話しいただいた内容を再構成して全3回に渡りお届けいたします。

前回の記事:「ESG投資」と「インパクト投資」における投資判断の違い

前回はESG投資とインパクト投資の違いと、インパクト投資は(1) 金銭的なリターンを追求し、(2) 投資家にインパクト創出の意図があり、(3) そのインパクトを可視化するというのがポイントとなるというお話をしました。

今回はこのインパクト投資における3つの基本要素について解説していきます。

(1) 金銭的リターンの追求

世界が直面している様々な環境的、社会的な課題を解決するためには、2030年までに2.5兆ドルもの膨大な投資が必要と言われています。当然、国の予算では到底まかないきれないので、課題解決のために民間資金の活用は必要になってきます。

「良いことをしている」という満足感のためだけに民間資金が投入されることはありませんので、インパクト投資では金銭的リターンをしっかり追求します。

ちなみに、すべての投資家が「インパクト創出」と「金銭的リターンの追求」を同程度で見るわけではなく、投資家によって考え方は異なります。また、事業会社でインパクト投資に取り組んでいるところがありますが、戦略投資を目的とするところもあれば、財団から投資を行うところもあります。

(2) 投資家にインパクト創出の意図がある

投資家は「なぜ」「どのようにして」インパクトを生み出すのかを、投資戦略の策定時に検討します。そして「何が」社会的・環境的課題なのかを検討する際には、SDGsが活用されることが多いです。

ここで重要なのは、SDGsの項目から1つ選ぶということに加え、インパクトテーマの理想となる姿を投資家が描くこと、そしてその理想となる社会に向けて、どのような先に投資や提携をしていけばいいのかの道筋を描くことです。

例えば気候変動問題を取り上げたとき、関連企業に投資をするということだけでは、インパクト投資と呼べません。気候変動問題を解決した理想的な状況を想像し、そこに至るまでの道筋を描き、解決手段としての投資や提携のあり方を決めていくという、バックキャスティングの発想がインパクト投資には必須だとされています

(3) インパクトを可視化する

投資先が社会的環境的課題を解決してインパクトを生み出すことを、「投資家が社会的リターンを生み出す」と表現します。社会や環境に良さそうな会社に投資をしただけでは本当に社会的リターンが出ているのかがわかりません。金銭的リターンが財務諸表等の活用を通じて可視化されるように社会的リターンについても可視化することが必要です

投資家がインパクトを測定し、その測定プロセスを改善していくためにマネジメントします。これを英語ではImpact Measurement and Managementといい、頭文字を取って社会的リターンの可視化をIMMと呼びます。

金銭的リターンを追求すること、投資家にインパクト創出の意図があること、インパクトを可視化すること、この3点が揃わない限り、インパクト投資とは呼ばれません。

インパクト投資には様々な投資家が参入してきています。次回はその具体的な事例について、ご紹介していきたいと思います。

須藤奈応
一般社団法人 社会変革推進財団

10年ほど資本市場におけるサステナビリティに関する取り組みを調査。現在はアメリカでインパクト投資などの調査研究を行う。海外の投資情報を日本語で届けるニュースレター「ImpactShare」も運営中。インパクト投資を初めて学ぶ方を対象にした入門書「インパクト投資入門」が、日経文庫より11月に発売予定。