
河原木 皓
グローバル・ブレイン株式会社
GR Team Director
2023年にGBに参画。Government Relations(GR)チームとして、投資先スタートアップの公的支援策の活用や規制改革などをサポート。
グローバル・ブレインにて投資先企業のGR(公共政策)支援を行う河原木が、2027年度予算の概算要求を解説しました。スタートアップが行うべき具体的なアクションもまとめています。

2027年度予算の概算要求は、戦略17分野への官民投資に向けたファーストステップ
AI・半導体や、防衛、ヘルスケア、コンテンツなどの領域で予算が大幅拡大され、関連スタートアップの好機に
国の支援策を最大限活用するには、早期から自社関連の予算を特定し、省庁への事前相談を進めることなどが重要
国内最大級の独立系VCであるグローバル・ブレイン(GB)
国が2026年8月31日に公表した「2027年度予算の概算要求」
(本記事は GBの公式YouTubeチャンネル の動画「 【戦略17分野370兆円投資】
はじめに、概算要求の基本的な仕組みと、2027年度予算の概算要求が持つ意味について解説します。
予算の概算要求とは、翌年度の政府予算案を作成するための「たたき台」
2027年度予算の概算要求における最大のポイントは、国が注力する「戦略17分野」
また、今回の概算要求には金額が明記されていない「事項要求」
2027年度の補助金や制度のたたき台である概算要求や、その中でも予算拡大が見込まれる事項要求を踏まえておくことは、スタートアップが来年の戦略を先んじて立てる上で有効です。
それでは具体的にどのような分野へ予算が投じられるのか、特にスタートアップにニーズが高い7つの領域に絞って内容を見ていきましょう。
AI・半導体領域では、特に現実世界で自律的に判断・行動するロボットの身体制御を行うための「フィジカルAI」
また、特定業界向けの「バーティカルAI」
防衛分野では、防衛省や経済産業省が5本の新規事業を要求しています。AI、サイバーセキュリティ、宇宙、ドローン、先端素材などの技術を持つ企業を対象に、幅広い支援が展開される見込みです。
従来の防衛市場は大企業が中心でしたが、現在はスタートアップの持つ新しい技術やプロダクトに対する期待が高まっています。そのため今回は、課題の公募から基礎研究、実証実験、そして最終的な本格調達まで、一連のプロセスを一気通貫で支援する仕組みが提案されました。
具体的には「防衛課題解決研究制度(仮称)
医療機器分野では、経済産業省から1,000億円規模の「医療機器スタートアップ等エコシステム強化事業」
DTSUとは「ディープテック・スタートアップ支援事業」
ゲーム、アニメ、漫画、音楽、実写の5分野におけるコンテンツ製作や海外展開を支援する予算が、2026年度の350億円から約4.6倍へと大幅に増額要求されています。現在、国はコンテンツ分野に注力しており、エンタメ・クリエイティブ領域の企業にとっては大きなチャンスです。
量子コンピュータやソフトウェア開発に対する予算は、2026年度の約1,000億円から約2,000億円へと約2倍の金額が要求されています。この概算要求には「次世代量子コンピュータの国等による調達」
フュージョンエネルギーは、政府が2030年代の発電実証を目指すなど、国策として推し進める方針が示されています。
今回の予算要求では、経済産業省で2本の予算が計上されました。
1つは、2026年度に新設されて話題となった「フュージョンエネルギー発電実証推進事業」
2つ目は「フュージョンエネルギー産業基盤強化事業」
レアアースなどの重要鉱物確保に向けた予算が2026年度の10倍規模へ拡充されたほか、経済安全保障上重要なスタートアップに対し、国による「出資・債務保証」
国による「出資・債務保証」
次に、事業分野にかかわらず、すべてのスタートアップが活用できる領域横断的な施策についてもご紹介します。
2027年度に新設を検討している予算の中で特に注目しておきたいのは、政府自身がスタートアップのプロダクトを購入する支援制度の強化です。経済産業省と内閣府から「スタートアップの製品・サービスの社会実装・市場導入の推進」
この予算要求の背景にあるのが、2026年5月に政府が発表した「スタートアップ総力創出パッケージ」
4年前には、国が設定したテーマを対象にスタートアップの技術実証を約2,000億円で支援する「SBIRフェーズ3基金事業」
従来の補助金が研究開発費や実証コストの一部を補助する支援であったのに対し、政府調達は国自身が最初の顧客となってスタートアップの製品やサービスを直接発注・購入する仕組みです。単なるコスト支援にとどまらず、スタートアップに対して「直接の売上」
従来も設けられていた、スタートアップが活用できる定番の補助金についても見ていきましょう。
経済産業省が予算要求した「中小企業成長加速化補助金」
顧客に提案して自社プロダクトの導入を促進する補助金については、従来分かれていた「中小企業省力化投資補助金」
今回公表された2027年度予算の概算要求を踏まえ、こうした国の支援策をスタートアップが最大限活用するためのポイントもご紹介します。
今回ご紹介した予算は全体のごく一部であり、各省庁には何百本もの予算が存在します。まずは自社の事業領域や技術に近い施策がどの省庁で要求されているかをチェックし、どのように事業成長に結びつけられるかを検討することがファーストステップです。
また、12月末には財務省との調整を終えた政府案が公表され、予算額や内容がより具体化されるため、このタイミングで改めてチェックすることが有効です。
実際の補助金の公募などは2027年2月~4月ごろからスタートします。しかし、公募が始まってから検討を開始しても、実際の応募期間は約1カ月しかなく時間が足りません。予算内容を確認しながら逆算し、応募する補助事業の選定や必要なアライアンスの検討などをあらかじめ進めておくことが重要です。
また、公募の倍率は各省庁のWebサイトなどで公表されているケースが多いため、事前に競争率を把握して自社が獲得しやすい支援策を特定しておく必要もあります。
概算要求の内容を踏まえて、制度を活用した実績のある起業家仲間から情報収集を行ったり、多数のスタートアップによる活用事例を把握している私たちのようなVCに、自社が受けられる支援策を相談したりする方法も有効です。
場合によっては、自社のアイデアが予算のコンセプトに合致しているか、関係省庁の担当部署に直接相談に行くこともありうるかもしれません。
国の補助金や委託費は出資や融資と異なり、特別な経理処理が必要になるなど、特有のルールを理解しておくことも重要です。
たとえば、同一事業に対して2つ以上の補助金をもらうこと(重複受給)
こうしたルールをあらかじめ理解することで、採択されたあとのトラブルを避けることにつながります。
2027年度予算の概算要求におけるスタートアップ向けの注目予算と知っておくべき活用法について解説しました。
国の支援策は、スタートアップが成長を実現するための強力な武器となります。しかし、何百本とある膨大な支援メニューの中から自社に最適なものを見極めることや、省庁への事前相談・提案準備を行うことは、スタートアップ単独ではハードルが高いのも事実です。
そうした課題感を抱える投資先企業を支援するのが、私たちGBのGR Teamです。「自社に関連する予算を特定したい」
GBでは今後も「グローバルに活躍するスタートアップの創出」
※所属、役職名、数値などは動画公開時のものです
(編集:GB Brand Communication Team)

グローバル・ブレイン株式会社
GR Team Director
2023年にGBに参画。Government Relations(GR)チームとして、投資先スタートアップの公的支援策の活用や規制改革などをサポート。