【スタートアップ向け】2027年度の補助金・予算速報──概算要求から読み解く注目領域と活用法

グローバル・ブレインにて投資先企業のGR(公共政策)支援を行う河原木が、2027年度予算の概算要求を解説しました。スタートアップが行うべき具体的なアクションもまとめています。

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Summary

  • 2027年度予算の概算要求は、戦略17分野への官民投資に向けたファーストステップ

  • AI・半導体や、防衛、ヘルスケア、コンテンツなどの領域で予算が大幅拡大され、関連スタートアップの好機に

  • 国の支援策を最大限活用するには、早期から自社関連の予算を特定し、省庁への事前相談を進めることなどが重要

国内最大級の独立系VCであるグローバル・ブレイン(GB)にて、投資先企業のGovernment Relations(GR:公共政策)支援を担当している河原木です。GBに参画する前は、経済産業省で約15年間にわたり政策立案に携わってきました。現在はそのバックグラウンドを活かし、投資先企業の公共政策周りの支援を専門に行っています。

国が2026年8月31日に公表した「2027年度予算の概算要求」には、スタートアップの事業成長につながる大きなチャンスが込められています。本記事では、今回の概算要求の内容を紐解き、スタートアップが国の補助金や支援を自社の事業に活かすためのポイントを解説します。

(本記事は GBの公式YouTubeチャンネル の動画「 【戦略17分野370兆円投資】2027年度概算要求を元経産省がスタートアップ向け徹底解説/戦略17分野予算が大幅増/スタートアップ向け活用法/フィジカルAI関連は1兆円超/国が最初の顧客となる注目予算」 を再構成したものです)

スタートアップが「2027年度予算の概算要求」を知るべき理由

はじめに、概算要求の基本的な仕組みと、2027年度予算の概算要求が持つ意味について解説します。

予算の概算要求とは、翌年度の政府予算案を作成するための「たたき台」となるものです。毎年8月末に各省庁から提出され、秋から年末にかけて財務省との折衝が行われた上で、12月末に政府案として具体的な金額や内容が決定します。その後、年明けの国会審議を経て、2月~4月頃にかけて実際の補助金公募や新制度がスタートするというスケジュールで動いています。

2027年度予算の概算要求における最大のポイントは、国が注力する「戦略17分野」において、予算要求の上限が撤廃されたことです。従来、各省庁の予算要求には「前年度予算の何%以内」といった上限が設けられていました。しかし今回は、政府が発表した約370兆円超の投資を目指す「官民投資ロードマップ」を実現するため、そのファーストステップとして戦略17分野を中心にこの上限が取り払われています。スタートアップはこの370兆円構想における重要なプレイヤーとして位置づけられており、概算要求にはスタートアップ向けの施策案も多く盛り込まれました。

また、今回の概算要求には金額が明記されていない「事項要求」という項目が多く見られます。事項要求とはあえて具体額を示さず、年末にかけて財務省との折衝の中で決定する内容のことで、一般的に大型予算が組まれやすい枠組みです。つまり、「事項要求」と記載されている項目ではさらに予算が拡大していく可能性が高いことを意味します。

2027年度の補助金や制度のたたき台である概算要求や、その中でも予算拡大が見込まれる事項要求を踏まえておくことは、スタートアップが来年の戦略を先んじて立てる上で有効です。

【領域別】スタートアップが押さえるべき注目予算

それでは具体的にどのような分野へ予算が投じられるのか、特にスタートアップにニーズが高い7つの領域に絞って内容を見ていきましょう。

AI・半導体

AI・半導体領域では、特に現実世界で自律的に判断・行動するロボットの身体制御を行うための「フィジカルAI」に対して、2026年度の約3,900億円から大幅増額となる1兆円以上の大型予算が要求されています。政府が掲げる「2040年にAIロボット1,000万台導入」という目標もあり、国として本腰を入れて支援を拡大する姿勢が示されています。基盤モデルの開発にとどまらず、ロボットのアームやハンドといった部品開発、さらには量産に向けた設備投資まで支援メニューを拡充する内容になっています。

フィジカルAIの概算要求

また、特定業界向けの「バーティカルAI」においても、経済産業省による約3,700億円のポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業を通じて、国内の生成AI基盤モデル開発を支援するためのプログラム「GENIAC」への支援を継続する内容になっています。さらに内閣府では、医療や製造、金融などの現場へ領域特化型AIを導入・社会実装するための予算として、新たに約1,000億円が要求されています。

バーティカルAIの概算要求

ディフェンステック(防衛)

防衛分野では、防衛省や経済産業省が5本の新規事業を要求しています。AI、サイバーセキュリティ、宇宙、ドローン、先端素材などの技術を持つ企業を対象に、幅広い支援が展開される見込みです。

従来の防衛市場は大企業が中心でしたが、現在はスタートアップの持つ新しい技術やプロダクトに対する期待が高まっています。そのため今回は、課題の公募から基礎研究、実証実験、そして最終的な本格調達まで、一連のプロセスを一気通貫で支援する仕組みが提案されました。

具体的には「防衛課題解決研究制度(仮称)」や「変革型防衛研究プログラム(仮称)」などです。スタートアップのプロダクトを実際の現場で活用し、アジャイル的に改善を回していく「ディフェンステックSBIR制度(仮称)」も盛り込まれています。

ディフェンステックの概算要求

ヘルスケア

医療機器分野では、経済産業省から1,000億円規模の「医療機器スタートアップ等エコシステム強化事業」が要求されました。この中にいわば「医療機器版DTSU」と言える内容が含まれています。

DTSUとは「ディープテック・スタートアップ支援事業」の略で、分野横断的にVCからの出資額の倍額相当を国が研究開発支援として補助する仕組みです。今回はこの仕組みを医療機器に特化させる形で支援制度が新設され、医療機器系スタートアップを後押しする内容になっています。

ヘルスケアの概算要求

コンテンツ

ゲーム、アニメ、漫画、音楽、実写の5分野におけるコンテンツ製作や海外展開を支援する予算が、2026年度の350億円から約4.6倍へと大幅に増額要求されています。現在、国はコンテンツ分野に注力しており、エンタメ・クリエイティブ領域の企業にとっては大きなチャンスです。

コンテンツの概算要求

量子

量子コンピュータやソフトウェア開発に対する予算は、2026年度の約1,000億円から約2,000億円へと約2倍の金額が要求されています。この概算要求には「次世代量子コンピュータの国等による調達」を見据えるという文言が新たに盛り込まれており、国が主導して調達や実証を推し進める姿勢が明確に示されました。

量子の概算要求

フュージョン(核融合)

フュージョンエネルギーは、政府が2030年代の発電実証を目指すなど、国策として推し進める方針が示されています。

今回の予算要求では、経済産業省で2本の予算が計上されました。

1つは、2026年度に新設されて話題となった「フュージョンエネルギー発電実証推進事業」です。スタートアップ向けの発電実証に向けた予算で、2027年度は326億円と金額面でさらに拡充される内容になっています。

2つ目は「フュージョンエネルギー産業基盤強化事業」です。トカマク型やヘリカル型など複数存在する核融合炉の開発方式に対し、共通して必要となる技術課題を国が横断的に支援する予算枠となっています。

フュージョン(核融合)の概算要求

経済安全保障・重要鉱物

レアアースなどの重要鉱物確保に向けた予算が2026年度の10倍規模へ拡充されたほか、経済安全保障上重要なスタートアップに対し、国による「出資・債務保証」という新たな支援メニューが盛り込まれました。

国による「出資・債務保証」とは従来の補助金や委託費とは異なり、国が直接出資を行ったり、銀行からの融資に対して債務を保証したりする仕組みです。経済安全保障というテーマに特化して、スタートアップに対して新しい支援が追加されたのは特筆すべき点だと思います。

経済安全保障・重要鉱物の概算要求

【全領域対象】スタートアップ向けの定番補助金・支援

次に、事業分野にかかわらず、すべてのスタートアップが活用できる領域横断的な施策についてもご紹介します。

2027年度の新設予算

2027年度に新設を検討している予算の中で特に注目しておきたいのは、政府自身がスタートアップのプロダクトを購入する支援制度の強化です。経済産業省と内閣府から「スタートアップの製品・サービスの社会実装・市場導入の推進」という名称で予算要求されました。

この予算要求の背景にあるのが、2026年5月に政府が発表した「スタートアップ総力創出パッケージ」というスタートアップ政策の大きな方向性をまとめたものです。この中の目玉施策として、スタートアップのプロダクトを政府自身が購入して社会実装を加速させるという内容が盛り込まれています。

4年前には、国が設定したテーマを対象にスタートアップの技術実証を約2,000億円で支援する「SBIRフェーズ3基金事業」という大きな支援制度もありました。今回はこの「SBIRフェーズ3基金事業」をバージョンアップさせ、かつ「スタートアップ総力創出パッケージ」の方針も踏まえて、技術実証だけでなく政府調達の機能を強化する方針が示された形です。

従来の補助金が研究開発費や実証コストの一部を補助する支援であったのに対し、政府調達は国自身が最初の顧客となってスタートアップの製品やサービスを直接発注・購入する仕組みです。単なるコスト支援にとどまらず、スタートアップに対して「直接の売上」と「政府との契約という社会的信用」をもたらす点が主な違いです。

2027年度の新設予算

スタートアップが活用できる定番補助金

従来も設けられていた、スタートアップが活用できる定番の補助金についても見ていきましょう。

経済産業省が予算要求した「中小企業成長加速化補助金」や「新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業」などは自社のプロダクト開発に活用可能です。また、「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」や「グローバルサウス未来志向型共創等事業」など、研究開発や海外展開に活用できる補助金が継続して要求されています。

顧客に提案して自社プロダクトの導入を促進する補助金については、従来分かれていた「中小企業省力化投資補助金」と「デジタル化・AI導入補助金」が統合され、「省力化・デジタル化・AI投資補助金」として要求されました。 中小企業がAIやデジタルツール、省力化につながるハードウェアを導入する際に最大450万円が補助されるため、スタートアップにとっては「この補助金を使えば導入コストを削減できます」と顧客に提案することで受注率向上を見込むことができます。

スタートアップが活用できる定番補助金

「概算要求」の段階からスタートアップができること

今回公表された2027年度予算の概算要求を踏まえ、こうした国の支援策をスタートアップが最大限活用するためのポイントもご紹介します。

1. 自社領域に関わる予算を特定し、チェックする

今回ご紹介した予算は全体のごく一部であり、各省庁には何百本もの予算が存在します。まずは自社の事業領域や技術に近い施策がどの省庁で要求されているかをチェックし、どのように事業成長に結びつけられるかを検討することがファーストステップです。

また、12月末には財務省との調整を終えた政府案が公表され、予算額や内容がより具体化されるため、このタイミングで改めてチェックすることが有効です。

2. 公募開始前から逆算して提案内容やアライアンスを準備する

実際の補助金の公募などは2027年2月~4月ごろからスタートします。しかし、公募が始まってから検討を開始しても、実際の応募期間は約1カ月しかなく時間が足りません。予算内容を確認しながら逆算し、応募する補助事業の選定や必要なアライアンスの検討などをあらかじめ進めておくことが重要です。

また、公募の倍率は各省庁のWebサイトなどで公表されているケースが多いため、事前に競争率を把握して自社が獲得しやすい支援策を特定しておく必要もあります。

3. 起業家仲間、VC、または省庁の担当部署に事前相談を行う

概算要求の内容を踏まえて、制度を活用した実績のある起業家仲間から情報収集を行ったり、多数のスタートアップによる活用事例を把握している私たちのようなVCに、自社が受けられる支援策を相談したりする方法も有効です。

場合によっては、自社のアイデアが予算のコンセプトに合致しているか、関係省庁の担当部署に直接相談に行くこともありうるかもしれません。

4. 受給のルールを理解する

国の補助金や委託費は出資や融資と異なり、特別な経理処理が必要になるなど、特有のルールを理解しておくことも重要です。

たとえば、同一事業に対して2つ以上の補助金をもらうこと(重複受給)は禁止されています。1つの補助事業の中で、人件費、設備費、旅費、外注費などの経費を切り分けて管理し、業務日誌などのエビデンスを揃えないと補助金が支払われません。いったん採択されると、計画の変更・中断には国の許可が必要です。

こうしたルールをあらかじめ理解することで、採択されたあとのトラブルを避けることにつながります。

国の支援策を事業成長の武器とするために

2027年度予算の概算要求におけるスタートアップ向けの注目予算と知っておくべき活用法について解説しました。

国の支援策は、スタートアップが成長を実現するための強力な武器となります。しかし、何百本とある膨大な支援メニューの中から自社に最適なものを見極めることや、省庁への事前相談・提案準備を行うことは、スタートアップ単独ではハードルが高いのも事実です。

そうした課題感を抱える投資先企業を支援するのが、私たちGBのGR Teamです。「自社に関連する予算を特定したい」「概算要求を踏まえて応募の準備をしたい」といったニーズを持つGBの投資先企業の方は、ぜひ担当キャピタリストにGR支援についてお問い合わせください。

GBでは今後も「グローバルに活躍するスタートアップの創出」という目標を掲げ、スタートアップの事業成長に資するような発信や活動を継続して行ってまいります。

※所属、役職名、数値などは動画公開時のものです
(編集:GB Brand Communication Team)

コラボレーター

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河原木 皓

グローバル・ブレイン株式会社

GR Team Director

2023年にGBに参画。Government Relations(GR)チームとして、投資先スタートアップの公的支援策の活用や規制改革などをサポート。