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インパクト投資に続々と参入するプレイヤーたち——グローバルにおけるESG投資、インパクト投資の最前線(3)

インパクト投資家と一般的なVCが共同で投資を行うという事例も出てきています。

執筆: Universe編集部、講演・編集協力: 須藤奈応

昨今、ESGを考慮した事業運営は、持続的に経営を行うために必要不可欠な要素となっています。グローバル・ブレインでもESGポリシーを策定し、運用プログラムに順次適用していくことをお知らせしました。

先日開催された、オープンイノベーション推進に積極的な大企業様とのラボ「αトラッカーズ」の定例会にて、国内外のインパクト投資に造詣の深い、一般社団法人 社会変革推進財団 須藤奈応さんより、投資を通じたSDGsやサステナビリティへの取組みをご紹介いただきました。ESG投資に対する理解を深めるため、お話しいただいた内容を再構成して全3回に渡りお届けいたします。

前回の記事:インパクト投資を考える上で重要な「3つの基本要素」

現在グローバルにおけるインパクト投資は市場規模が75兆円となっており、PE、 VC、保険会社などのアセットオーナー、上場株式に投資をするアセットマネジメント会社、ファミリーオフィス、事業会社などが続々と参入してきています。

また、最近はインパクトを創出しているスタートアップに対して、これらのインパクト投資家と一般的なVCが共同で投資を行うという事例も出てきています。

セールスフォースの取り組み

セールスフォースによるインパクト・ファンドは、戦略投資を目的として、2017年に5000万ドルの資金調達により創立されました。その前から世界的に有名なCVCを設立するなど、もともとグローバルに投資を実行してきた企業ですが、このファンドでも一般的なCVCと同水準のリターンを期待しており、投資の意思決定機関と投資委員会も同じメンバーで構成されています。

戦略投資を目的としているため、セールスフォースの既存システムと連携させたり、既存顧客への販路開拓を支援したりするなど、自身が提供するプラットフォームに親和性の高いサービスへの投資に積極的です。

投資先の例では、すでにEXITしているRaiseMeという教育ベンチャーがあります。アメリカの授業料はとても高いため、所得の低い家庭にある子どもは経済的に難しいと、進学を諦めてしまうこと多いと聞きます。

そんな子どもたちのために、高等教育機関に対してマイクロ奨学金を提供しているのがRaiseMeです。自分の行きたい大学のアカウントを作成すると、現状の成績にもとづいて大学進学する際の奨学金を少しずつ獲得することができます。

メルクの取り組み

アメリカに本拠地を構え、グローバル展開している製薬会社メルクのインパクト・ファンドの規模は5000万ドル。もともと医薬品や金銭の寄付を発展途上国や貧困層向けに行なっていましたが、それを補う形でインパクト投資を小さくスタートさせました。

時代の変遷とともに、しっかりとしたリターンを求めることができる市場になってきたこともあり、現在はEXITすることも想定したインパクト・ファンドを運用しています。

投資対象としては、病院やケアセンターなどのインフラ、保険、診察のためのデジタルツールなど、途上国や新興国の貧困層に対してヘルスケアのサービスやソリューションを提供しているところとなっています。

メルクの特徴はインパクト企業への直接投資に加え、LP投資も行なっているところです。代表的な事例に、ビル&メリンダ・ゲイツ団とともに出資をした、グローバル・ヘルス・インベストメント・ファンドがあります。主に発展途上国の健康問題に取り組む製品や診断ツールを開発する11社に投資しています。

約5年前にスタートしたこのファンドは、IPOや買収を検討する段階にきている投資先も複数あるとのことでした。

ここまで3回に渡ってESG投資、インパクト投資について具体的な事例も交えながら紹介してきました。みなさまの理解を深めるのに少しでもお役に立てれば幸いです。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

須藤奈応
一般社団法人 社会変革推進財団

10年ほど資本市場におけるサステナビリティに関する取り組みを調査。現在はアメリカでインパクト投資などの調査研究を行う。海外の投資情報を日本語で届けるニュースレター「ImpactShare」も運営中。インパクト投資を初めて学ぶ方を対象にした入門書「インパクト投資入門」が、日経文庫より11月に発売予定。