
佐生 友行
株式会社HQ
VP of Engineering
次世代福利厚生プラットフォーム「カフェテリアHQ」などを提供するHQが、グローバル・ブレインと取り組んだ知財活動とMoat構築のポイントについてご紹介します。

次世代福利厚生プラットフォーム「カフェテリアHQ」
そんな同社の成長に伴走してきたのが、国内最大級の独立系VCであるグローバル・ブレイン(GB)
これらの支援に対しては、HQ代表取締役の坂本 祥二氏などもSNS上でコメントを寄せてくださっています。
本記事は、HQとGBが営業、知財、採用などの領域で総力戦的に行った取り組みを紹介する記事のうちの「知財編」
同社の知財戦略の狙いや、約1年で10件もの特許出願を達成できた成功要因、さらには同社のプロダクトや開発に関するスタンスなどについて、HQのVP of Engineeringである佐生 友行氏、新規事業開発の円城寺 博氏、GB知財チームの渡邉 美春に聞きました。
──HQが知財活動を本格化させることになった背景を伺わせてください。
HQ・円城寺:CEOの坂本と私や佐生の間で、知財の必要性に合意できたことがきっかけです。私は前職が競合ひしめくレッドオーシャンの領域だったこともあり、会社も知財を重視していました。
サービスはレッドオーシャンになればなるほど機能が似てきます。そうした環境下では、他社が特許を持っているがゆえに、本来自分たちが欲しいと思うものが作れなかったり、既存特許に抵触しないようコストをかけて製品開発をしたりしなければなりません。そうした苦労を実際に体験していたからこそ、知財の重要性を痛感していました。
HQ入社後に調べてみたところ、福利厚生に関する直接的な競合企業は特許をあまり申請していないことが分かりました。であれば、ここでしっかりと特許を取ってMoat(継続的な優位性)
──直接的な競合の特許は少なかったとのことですが、将来的に新たな競合が進出してくることを見据えた上で知財を強化した面もあったのでしょうか。
HQ・円城寺:その通りです。福利厚生が賃金以外のすべてと言われるように、福利厚生は領域がかなり幅広いため、直接的な競合だけではなく、潜在的な競合も福利厚生領域に染み出してくることは十分に考えられました。食事補助HQに関してはそうした間接的な競合の存在を見据えた上で、プロダクトのリリース前に知財を取得。プロダクトの発表プレスリリースにも「特許取得済」
──GBの知財チームと行った知財活動についてお伺いさせてください。具体的にどのような取り組みから着手されたのでしょうか。
GB・渡邉:私たち知財チームは、GBの事業支援専門チームであるValue Up Teamと連携しながら支援を開始しました。まず行ったのは、Value Up TeamとともにHQさんの事業状況を確認し、知財活動の目的や目標を一緒に策定することです。
特許は直接的なROIが見えづらいため、目的が曖昧なまま進めると「目新しい機能だからとりあえず出願する」
その上で、先ほど話に挙がった潜在競合がどのような特許を持っているのか徹底的に調査。実際、彼らが福利厚生の領域に染み出してきそうな兆候が見えたため、HQさんの差別化要因や強みとなる機能をどう特許化できるか検討し、出願を進めていきました。
──HQには多くのサービス・機能がある中で、特許の優先順位はどのように付けていかれたのでしょうか。
GB・渡邉:HQさんでは各サービスのバリュープロポジションが明確に定まっていたので、その独自性の核となる機能群を1つ1つ出願していきました。特に、HQさんのコンパウンド開発を支える「共通機能モジュール」
HQ・佐生:共通機能モジュールは、当社のカフェテリアHQ、リモートHQ、食事補助HQなどさまざまなプロダクトに共通して必要な機能をモジュール化したアセットです。顧客企業の従業員データに関する機能や、利用したポイント履歴を残す機能など、複数のプロダクトを支える基盤となります。
今後も当社ではコンパウンド戦略のもと複数プロダクトをリリースしていくことから、このビジネスモデルを支えるコアとなる共通機能モジュールを特許化していく戦略を進めていきました。
──「複数プロダクトに共通する機能をモジュール化する」
HQ・佐生:コンパウンド開発は創業当初からの戦略ですが、実は最初から「モジュール化して資産を蓄積していく」
──開発戦略の独自性を知財で守ることで、結果的にMoatの構築につながると見込まれたわけですね。特許化を進める上で苦労した点はありましたか。
HQ・佐生:1番のハードルは、特許を共通的かつ抽象的に表現することでした。特定のプロダクトの特定の機能として出願しておらず、さまざまなプロダクトの基盤として申請しているので抽象化する必要があったのですが、そのプロセスが大変だったと思います。
ただ逆に言えば、新しい機能も抽象的に考え始めると、それがそのまま特許になりやすいという気づきもありました。GB知財チームの方々には特許申請用のドキュメント作成をサポートいただいていたんですが、GBの皆さんが的確にドキュメントに落とし込んでくださるので、まだ完成していない新機能であってもHQ側がアイデアを共有するだけで特許申請の準備が進められたことは大きかったです。共通基盤を抽象化して開発するというHQのスタイルと知財の相性の良さもあり、スムーズに進められたと思っています。
──1年で10件の特許出願はスタートアップとしてはかなりの多さですが、HQが知財活動を活発に進められている要因はどこにあるのでしょうか。
GB・渡邉:スタートアップのよくあるケースとして、「とりあえず大事そうだから」
重要なのは「何のためにこの特許を使うのか」
またHQさんでは「知財定例」
中でも、食事補助HQのカードに関する特許は目覚ましいスピードで出願を進められていて、本当に驚きました。まだブルー・オーシャンだったため、HQさんが先駆者として独自の技術的特徴を出しやすく、広い特許が取れるタイミングで取り組めたのも良かったです。
HQ・円城寺:他社がまだ取得していない状態だからこそ、一刻も早く特許で押さえなければという意識がありましたね。
前職も含めて知財活動を行ってきてやはり重要だと感じるのは、自分たちの競争優位性がどこにあるかを見極めることです。他社さんに真似されると嫌なところを、先に自分たちが特許で押さえておくという、事業戦略に紐づく観点が大事だと思います。それも足元の1年ではなく、3〜5年を考えたときに何が根幹となるのかを定義することが必要ですね。
──知財活動による成果も伺わせてください。出願した特許が事業にポジティブな影響を与えていると感じる場面はありますか。
HQ・円城寺:いま福利厚生領域は法改正の影響もあり、競合も多く参入してきている状況です。その中で、私たちの特許が確実に盾となって機能してくれている実感があります。他社さんも私たちと類似のビジネス構想を持っているはずですが、おそらく私たちの特許をチェックして参入を諦めたり、機能を変更したりしているのではないかと感じられる場面もありました。
営業やPRの現場でも、「この機能や仕組みは特許で守られているため他社にはありません」
HQ・佐生:エンジニアの観点からもポジティブな影響がありました。特にHQの初期から携わっているエンジニアにとって、モジュール化した共通機能は自分たちが時間をかけて作り込んだ「秘伝のタレ」
単なるモノづくりにとどまらず、自分たちのアイデアが資産となり、HQの事業を守る強固なMoatになっている実感を持てることは、エンジニアにとって大きな誇りとモチベーションになっています。
──知財によるMoat構築も進む中、HQは今後どのような事業展開を見据えているのでしょうか。
HQ・佐生:私たちが目指しているのは、単なる福利厚生のDXにとどまらない、従業員への「統合体験」
今後も、先日リリースした食事補助HQの機能拡充はもちろん、国から指針が出ている人的資本経営をサポートする機能や、育児サポートに関連するサービスなどを公開していく想定です。いまロードマップにないものであっても、社会の動きに合わせて新しいプロダクトをどんどん出していこうと思っています。
──今後もますますプロダクトを拡充されていくわけですね。最後に、そうした壮大なビジョン実現を目指すHQで働く醍醐味について教えてください。
HQ・佐生:HQという会社の強みは「コンパウンド資産を活かした開発スピード」
また、スタートアップの開発では、よく「0→1」
さらに、私たちの開発スタイルはAIとの親和性も高いです。先ほども申し上げた通り、私たちは機能を抽象化・言語化しているため、AIが読み込みやすい情報の土台も十分に整っています。次のプロダクトの進化をAIと考えていくような、連続性のある開発体験を経験することができるはずです。
HQ・円城寺:事業開発に携わる私も、これだけ早いスピードで社会の変化を捉え、自らの手でアイデアを形にして社会に届ける体験ができることに面白みを感じています。労働人口が減少していく中で、会社にも従業員にもメリットをもたらす福利厚生の仕組みは、今後ますます重要になってくるはずです。その世界観が少しずつ具現化され、社会のインフラへと近づいていく過程を仲間とともに作り上げられるのが、HQで働く醍醐味だと思います。
(※以下の記事では、HQとGBが取り組んだ「営業」
※所属、役職名、数値などは取材時のものです
(編集:GB Brand Communication Team)

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