スタートアップと大企業が共創を考える1日/GBAF2023レポート

年次イベントGBAFの各セッションで語られた内容をダイジェストでまとめました。

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執筆: Universe編集部

2023年12月、「Global Brain Alliance Forum 2023(GBAF 2023)」が開催されました。本イベントはグローバル・ブレイン(GB)が年次で開催している、スタートアップの最先端トレンドを探り、大企業との協業を促進するためのイベントです。

今回も弊社 代表取締役社長の百合本による戦略発表や、多くのゲストスピーカーを迎えたパネルディスカッション、スタートアップ企業によるピッチバトルなどを開催しました。

またイベントの最後にはスタートアップと大企業によるネットワーキングパーティーも実施。互いに情報交換しながら、新たなビジネスの可能性を模索する参加者の姿が多く見られました。本記事では、そんなGBAF 2023の様子をダイジェストでお届けします。

投資環境の見通しとGBの新戦略

はじめに、弊社代表の百合本が「グローバル投資環境の新潮流」と題したプレゼンテーションを実施。アメリカやヨーロッパ、日本のスタートアップ市場の概況をデータで紹介しました。

欧米の投資やIPO環境が厳しい状況にある一方、日本のスタートアップ投資は欧米ほどの落ち込みは見られず、IPO市場も安定していると説明。2022〜2023年においてはアメリカのトップTierVCよりもGB投資先のIPOが多くなっているという事実を引用しながら、日本のスタートアップ環境の落ち着きを示しました。

なお、欧米を中心とした市場の冷え込みは市場調整の影響を受けて、2025年以降に安定するという見通しを発表。日本においても2025年後半から2026年にかけて、さらにスタートアップ市場が回復してくるのではないかという見解を述べました。

百合本は現在のスタートアップ市場について、「かつてのリーマンショック時と似ている」と説明。企業の倒産が相次いで競争環境が有利になっていることや、レイオフが盛んに行われた影響で優れた人材を獲得しやすくなっていることから、卓越したスタートアップにとってはむしろチャンスであると強調。今後スタートアップには、市場が回復すると見込まれる2025年までにこの好機を逃さずに活かしていくことが求められると締めくくりました。

GBAFの午後の部では、百合本がGBの新戦略を発表。まずは2023年の投資やExitしたスタートアップの実績、新たに設けたキャピタリストチームなど1年の活動を振り返って、海外のトップTierVCと並ぶパフォーマンスを出せる組織になってきていることを強調しました。その後、2024年以降も高い成果を出すために予定している施策も披露。この詳細についてはこちらの記事の中でご紹介しています。

経験者が語る、アフリカへのビジネス進出

百合本が明かしたGB新戦略内でも注力地域として位置付けられたアフリカ。その魅力を伝える本セッションは、「アフリカ市場のポテンシャルと日系企業のアフリカ進出」と題して2部構成で展開されました。

前半では、弊社にてアフリカ地域への投資を担う反田が登壇し、現在のアフリカ市場のポテンシャルについて解説。スタートアップ投資については、過熱気味だった市場が安定しはじめ、地に足のついた経営を行うスタートアップを見出しやすくなっていると強調しました。

後半のセッションでは、アフリカへのビジネス進出に知見があるゲストスピーカーを迎えたパネルディスカッションが行われました。

ゲストとして登壇したのはEY新日本有限責任監査法人 民野 元哉氏、独立行政法人 国際協力機構 JICA 不破 直伸氏、ホンダトレーディング 横谷 裕苗氏の3名。

事業会社がアフリカ進出を成功させるためのポイントや、アフリカ内の国ごとの違い、投資領域の特徴などが議論されました。さらに、アフリカでビジネスを展開する際に知っておくべきリスクや、ゲスト自身が直面したリアルな苦労などについても明かされ、アフリカ進出を考える上での現実的な示唆に富んだセッションとなりました。

教育、AI、LLM…期待のシードスタートアップが登壇

GBは2022年からアクセラレータプログラム「XLIMIT(クロスリミット)」を展開しています。GBAF 2023では「XLIMIT Showcase」と銘打ち、XLIMITの2nd Batchに採択されたシードスタートアップが事業についてのプレゼンテーションを行いました。

登壇したのは教育系サービスからメタバース、AIやLLMを用いたプロダクトなど、領域や顧客ターゲットもさまざまなスタートアップ5社。会場では、ローンチ間もない目新しいサービスを紹介するスタートアップたちの発表を、興味深く聞くオーディエンスの姿が多く見られました。

スタートアップにVCのハンズオン支援は必要か

GBは投資したスタートアップへのハンズオン支援に力を注いでいます。今回のGBAFでは、そのハンズオン支援の中核を担う弊社のValueUpTeamの活動に焦点を当てる、初のセッションが開催されました。

登壇したのは、ハンズオン支援を受けたスタートアップのCEOである、ファインディ 山田 裕一朗氏、リセ 藤田 美樹氏、モノグサ 竹内 孝太朗氏の3名。ValueUpTeamを率いる弊社 慎がモデレーターとなり、支援を受けての率直な感想や、具体的な支援内容とその成果をお話しいただきました。

普段はなかなか公にされないスタートアップ側からのハンズオン支援の体験談を通じて、弊社が投資後のスタートアップににどう関わっているのかが、具体的に明かされる場となりました。

Climate Techのいまと、日本がこれからできること

気候変動の課題を解決するClimate Techはますますニーズが高まると見られており、弊社も注力して投資している領域です。そんな世界中から注目を集めるClimate Techについて知り、企業が脱炭素にどのように向き合っていくべきかを考えていくのが、本セッション「ClimateTech最新動向と世界で勝ち抜くための脱炭素戦略」です。

登壇したのは、ドイツのClimate Tech企業であるPIONIX GmbHのCEO Marco Möller氏、GBの欧州拠点で投資活動を行う小尾、Climate Tech専門のキャピタリストである村田の3名。

PIONIXはさまざまな規格があるEV向け充電システムの互換性の問題を解消するスタートアップです。セッションではClimate Techプレイヤーとしての見地から、欧州におけるClimate Techの現状や、日本がカーボンニュートラルを進めるためのポイント、欧州の先行事例から学べることなどを具体的に語っていただきました。

最後にMarco氏は世界でカーボンニュートラルを推進するためには、グローバルな人材による大規模なコラボレーションが必要であると強調。会場にいる大企業の方に向けて「ともに連携しクリーンテクノロジーの波に乗っていきましょう」と呼びかけました。

GBAF恒例のピッチバトル、2023年を制したのは?

GBAFの恒例イベントである「Startup Pitch Battle」。直近約1年の間に弊社が投資決定した、いま注目のスタートアップ企業7社に登壇いただきました。

※こちらの詳細は別記事で改めてお伝えいたします。

40社以上のスタートアップと出会えるネットワーキング

メインセッションが終了した後は、次世代を牽引する40社以上のスタートアップがブースを出展するネットワーキングパーティを開催。AI、Climate Tech、ロボティクス、フィンテック、HRテック、ヘルスケアなど、さまざまな領域の企業が一堂に会する場となりました。

会場ではスタートアップと大企業が盛んにコミュニケーションをし、和やかな雰囲気の中で事業機会を探る様子が多く見られました。GBAF 2023およびネットワーキングパーティの場が、1つでも多くの共創を生むきっかけの場となっていれば幸いです。