世界の有力VCも注目する、Web3系「美容プラットフォーム」の成長戦略【GB Tech Trend #113】

気になる美容品に投票すると、その行動がブロックチェーン上に記録されてさまざまな特典を受けられる「Kiki World」。Web3によって、あらゆる業界のブランド体験が変わりつつあります。

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700万ドルの調達を発表した「Kiki World」(Image Credit: Kiki World)

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

クラウドファンディングの登場以来、商品化前のアイデアでファンを集め、一定の売り上げ目処を事前に立てる戦略が一般化しました。今回紹介する「Kiki World」も同様のアプローチですが、一味違うのはブロックチェーン技術を採用している点です。解説していきます。

Kiki Worldは、美容品ブランドの新商品企画に投票できるボーティングプラットフォームです。ユーザーは気になる美容商品企画に投票することで、Kiki Worldオリジナルのポイント(トークン)を獲得し、実際に商品化された後に特別価格で購入できたり、ブランドの招待制イベントへ呼ばれたりするメンバーになれます。投票が締め切られた後に試供品が郵送されるので、ユーザーがいち早くレビュー動画をソーシャル上にアップできるのもKiki Worldの特徴です。

配布されるポイントは「Programmable Points」と呼ばれ、どの時期に、どの商品企画に対して投票をしたポイントなのかがブロックチェーンのスマートコントラクト上に記録されます。これにより、ブランド側は投票行動を行なったロイヤリティユーザーに対して、スマートコントラクト上で事前に決められた報酬を自動配布できます(たとえば3回以上自社ブランドに投票を行った人へ毎月報酬を贈るような設定など)。

イーサリアムを使うため、ブランド側は自社プラットフォーム上でユーザー管理システムを運用する必要がなくなります。管理維持コストの軽減につながるので、従来のプラットフォーム事業と比較してランニングコストの面でメリットがあると言えるでしょう。このようにKiki Worldはブランドと美容好きユーザーの行動をうまく捉え、ブロックチェーンを用いる形でWin-Winの関係値を築こうとしています。今回、同社は700万ドルの資金調達を発表しました。Andreessen Horowitz crypto fundからも出資を受けています。

Kiki Worldと共通した取り組みをしているのが、以前紹介したレストランの会員権サービスを発行する「Blackbird Labs」です。Blackbird Labsも、どの顧客がロイヤリティ高く、どのくらいの頻度で通っているのかわからないといったレストラン(店舗側)が抱える課題解決のために、ブロックチェーンを使った会員権サービスを提供しています。ユーザー側は会員権を持っているレストランに行くとパーソナライズされた待遇を受けられ、レストラン側はどの顧客層に人気なのか多くのデータが受け取れる、という仕組みです。

Kiki Worldも投票してくれたユーザーからのフィードバックをいち早くブランド側に提供できます。それだけでなく、ユーザー別のロイヤリティ度合いがブロックチェーン技術を使って記録されるので、コミュニティ形成も円滑に行えます。

こうしたクラウド投票のアプローチは以前から評価されています。例として挙げられるのが、Fordが買収した地域路線バス「Chariot」です。同社は一般バス路線の走らない住宅街など、なかなか手の届かないエリアに小さなバス(ほぼバンに等しい)が走る交通網を敷きました。どのエリアに路線を走らせるかはWaitingリストを用いて需要を確認する仕組みになっており、さながらルートに“投票”するようなサービスでした。

残念ながら、ChariotはFordに買収されたのちに廃業となってしまいました。しかし、昨今のWeb3やブロックチェーンを活用したコミュニティ市場への注目を追い風に、改めてChariotが実践していたクラウド投票が再評価される可能性はありそうです。Kiki Worldのように美容業界向けに仕掛けることも十分にありえますし、Chariotのような過去事例に遡って、改めてブロックチェーンの価値を付加させて開拓できる市場もあるかもしれません。

4月9日〜4月22日の主要ニュース

1億5,000万ドルの調達を発表した「Ramp」(Image Credit:Ramp)

Rampが1億5000万ドル調達、企業評価額76億ドル超えのフィンテック企業へ

企業カードと財務管理プラットフォームを提供し、企業の支出管理と財務効率の改善を支援する「Ramp」は、企業評価額76億5,000万ドルのシリーズDラウンドで1億5,000万ドルを調達した。Khosla VenturesとFounders Fundが共同でリードを務め、Sequoia Capital、Greylock、8VCのほか、Thrive Capital、General Catalyst、Sands Capital、D1 Capital、Lux Capital、Iconiq Capital、Definition Capital、Contrary Capitalも本ラウンドに参加した。— 参考記事

Langdock、シードラウンドで300万ドル調達 。LLM向けのチャット・インターフェース開発に資金注入

LLM向けのチャット・インターフェースを開発するベルリンのスタートアップ「Langdock」が、シードラウンドで300万ドルの調達を実施した。General CatalystとLa Famigliaが共同リードを務め、Y Combinatorも出資をした。— 参考記事

Usual Labsが700万ドルの資金調達。米ドルとペグのステーブルコイン開発に取り組む

米ドルとペグ(価格を連動させる)したステーブルコインを開発するパリのスタートアップ「Usual Labs」は、IOSG VenturesとKraken Venturesが共同でリードするラウンドで、700万ドルを調達した。GSR、Mantle、StarkWare、Flowdesk、Avid3、Bing Ventures、Breed、Hypersphere、Kima Ventures、LBank、Psalion、Public Works、X Venturesも出資した。— 参考記事

AI SquaredがシリーズAラウンドで1,380万ドルを調達。AI統合を容易にするローコード・プラットフォーム

企業が既存のアプリケーションにAIを簡単に統合できるようにするローコード・プラットフォーム「AI Squared」は、Ansa CapitalがリードするシリーズAラウンドで1,380万ドルを調達したことを発表した。以前の投資家であるNEAとRidgelineも本ラウンドに参加した。— 参考記事

AIPERIAが800万ドルの資金調達。AIを活用した食品在庫管理で食品廃棄の問題に挑む

AIを使ってスーパーマーケットやレストランなどの食品在庫を分析・管理し、過剰在庫や腐敗の削減を支援する「AIPERIA」は、ETF PartnersとLBBW VCが共同リードを務めたシリーズAラウンドで800万ドルを調達した。EarlyBird Venture Capitalも出資した。— 参考記事

ゼロ知識証明のNEBRAがシードラウンドで450万ドルを調達

ゼロ知識証明の検証を最適化するシステムを開発する「NEBRA」は、Nascent VenturesとBankless Venturesが共同リードするプレシード/シードラウンドで450万ドルを調達した。— 参考記事

ヨーロッパ拠点のゲームスタジオ、Red Rover Interactiveが1,500万ドルの資金調達

英国とノルウェーを拠点とするビデオゲームスタジオ「Red Rover Interactive」は、KRAFTONがリードするシリーズAラウンドで1,500万ドルを調達したと発表。Tirta VenturesとOverwolfのほか、これまでの投資家であるThe Games Fund、Behold Ventures、GEM Capital、Lifelike Capital、Acequia Capitalも参加した。— 参考記事