GB Tech Trend #100: Web3会員サービス「Blackbird Labs」レストラン顧客のリテンション問題を解決できるか

食事客の様々なデータを取得して、ターゲティングプロモーションを実施できるようになります。

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2,400万ドルの調達を発表した「Blackbird Labs」(Image Credit: Blackbird Labs)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

レストラン向け会員アプリを開発する「Blackbird Labs」は10月4日、シリーズAラウンドでの2,400万ドルの資金調達を発表しました。本ラウンドでは、Andreessen Horowitzがリードを務め、QED、Union Square Ventures、Shine、Variantなどのほか、レストラングループのQuality Branded、Rustic Canyon Group、Soulva、Brooks Reitzらが参加しています。

Blackbird Labsは、小規模レストランが利用できる顧客会員アプリを提供しています。ユーザーは専用NFCリーダーにタッチすることで各店舗の会員権を獲得でき、店舗に通うほどランクアップしたり、メニュー外の商品やダイレクトメッセージ・コンシェルジュなどの特典を受けたりすることができます。また、来店ごとに暗号通貨を獲得し、Blackbirdのスマートフォンアプリを通じて、レストランでの食事やドリンクなどの商品購入や、会員特典に利用できます。レストラン側はBlackbird Labsを通じて、食事履歴、誕生日、自宅住所など、食事客の様々なデータを取得して、ターゲティングプロモーションを実施できるようになる、というものです。

TechCrunchの記事でも示されている通り、レストラン事業の成功率は約20%と、とても低い状況にあるようです。一方でコロナ禍で私たちも目にしたように、レストランは生き残りをかけていろいろなアイデアを出しました。Blackbird Labsの創業者は、パンデミック初期にレストランが衣料品ラインの展開やパンケーキミックスの販売など、顧客向けの独自の施策を展開している姿を見て、このWeb3会員サービスのアイデアを閃いたそうです。

さて、Blackbird Labsが解決する問題は、レストラン顧客のリテンション率問題です。米国では日本における食べログのようなサービス「Yelp」が多く使われています。このようなアプリでは、顧客の継続利用を促進するために、割引クーポンを提供することがあります。「Groupon」はまさにこうした小売店のリテンション施策の後押しをするために登場し急成長しました。しかし、クーポンを使ったとしても、大半の顧客は2度目以降の来店をせずに終わってしまい、レストラン側のコストだけがかさんでしまいます。クーポンを利用する客層は、比較的に可処分所得が低く、一度クーポンを使ったお店には以後立ち寄らない人たちが多くいるためです。

リテンション率問題を解決するために注目を集めているのが、Blackbird Labsのような小売店向け会員サービスを提供するスタートアップというわけです。競合には「Select」が挙げられるでしょう。同社は年会費450ドルで提携高級レストランなどの割引を受けられるブラックカードを提供しています。コストコのように年会費を取ることで、安定した収益源を確保できるだけでなく、多少高めの会費設定することで、良質な顧客をプーリング。Selectと提携するレストランは、リピート確率の高い顧客へアクセスできるようになり、Win-Winの関係を築くことができます。

Selectはコミュニティマネージャーを雇うことで各会員に手厚いサービスを提供するだけでなく、提携店舗への送客も行っています。一方、Blackbird Labsでは、顧客獲得とコミュニケーションは各店舗の責任です。この点、Blackbird Labsの暗号通貨を活用したシステムと店舗の自己努力によって、リテンション率の問題がどの程度根本的に解決されるかはまだ明確ではありません。

一般的にNFTなどのブロックチェーン技術を活用した会員権サービスのよさは管理コストにあると言われています。会員証をパブリックチェーンに乗せることで、情報の透明性を担保しつつ、データ管理をチェーンに委ねることができるからです。ウォレットの使いにくさなどがハードルになるかもしれませんが、Blackbird Labsの取り組みがうまくいけば、Web3の技術を駆使した新たな小売マーケティング戦略の成功事例として語られることになるのではないでしょうか。

10月3日〜10月16日の主要ニュース

1,650万ドルの調達を発表した「Carefull」(Image Credit:Carefull)
1,650万ドルの調達を発表した「Carefull」(Image Credit:Carefull)

高齢者向けの金融詐欺対策「Carefull」が1,650万ドル調達

銀行が高齢の顧客を詐欺や詐欺から守るのを支援する「Carefull」は、Fin Capitalがリードし、Bessemer Venture Partners、TTV Capital、Commerce Ventures、Montage Ventures、Alloy Labsらが参加したシリーズAラウンドで1,650万ドルを調達したことを発表。同社は総額1,970万ドルを調達している。— 参考記事

太陽光発電所マッチングの「Perch Energy」、3,000万ドル調達

近隣の太陽光発電所と消費者をマッチングさせることで、消費者や企業がクリーンエネルギーの割引を活用できるようにする「Perch Energy」が、シリーズBラウンドで3,000万ドルを調達した旨を発表した。Nuveenがリードを務めた。— 参考記事

オンラインペットケア「Dutch」が1,800万ドル調達

ペットのケアと処方箋をオンラインで提供する「Dutch」は、Eclipse Venturesがリードを務め、Forerunner VenturesとBling Capitalが参加したシリーズBラウンドで1,800万ドルを調達したと発表。— 参考記事

LLMセキュリティサービス「Lakera」が1,000万ドル調達

データ漏洩といったLLMセキュリティの弱点から企業を守る「Lakera」が、シードラウンドで1,000万ドルを調達した。投資家には、Redalpine、Fly Ventures、Inoviaが含まれる。— 参考記事

ピアツーピアのファッションレンタル「Pickle」が800万ドル調達

自分のクローゼット内の私物を貸し出せる、ピアツーピアのファッションレンタルサービスを運営する「Pickle」は、FirstMark CapitalとCraft Venturesが共同でリードを務め、Burst Capitalも出資したシードラウンドで800万ドルの資金調達を行った。— 参考記事

「Parsec」が400万ドル調達、金融機関にDeFiとNFTデータの洞察を提供

金融機関にDeFiとNFT分析を提供している「Parsec」は、Galaxy Digitalがリードし、Uniswap、Robot Ventures、CMT Digitalも参加した非公開ラウンドで400万ドルの調達を発表した。— 参考記事

投資アプリ「Stash」が4,000万ドル調達

投資家が株式を購入できるアプリを提供する「Stash」は、以前から投資していたT. Rowe Price氏から4,000万ドルを調達したと発表。同社は負債と株式で合計5億5,000万ドルを調達している。— 参考記事