
青柳 直樹
ドクターメイト株式会社
代表取締役社長 / 医師
介護事業所向けに医療ソリューションを提供するドクターメイトがグローバル・ブレインと取り組んだ、AIを取り入れた将来的な機能拡張に向けたPoCの試みをご紹介します。

ドクターメイト株式会社は、介護事業所向けに医療ソリューションを提供するスタートアップです。介護施設で夜間に発生した入居者の病気や事故などに関する医療相談を、ドクターメイトの看護師が電話対応する「夜間オンコール代行™」
そこでドクターメイトでは、同社に出資を行っている国内最大級の独立系VCであるグローバル・ブレイン(GB)
具体的には、夜間オンコール代行™の入電内容と、ドクターメイトの過去データをAIが掛け合わせて読み解き、看護師が即座に最適な対応を提案できるようアシストする機能を開発。これにより、さまざまな経験レベルの看護師であっても一定の質を保ちながら顧客対応することができると実証できました
本記事では、ドクターメイトがなぜ既存サービスでのAI活用を進めようとしたのか、また、PoCを進める中でどんなハードル・気づきがあったのかについて、ドクターメイトの代表取締役社長であり医師の青柳 直樹氏と、開発支援を行ったGBの御手洗 茂、野澤 一貴に話を聞きました。さらに、同社のような暗黙知やデータが豊富なスタートアップでAI開発をする醍醐味についても深掘りしています。
──プロトタイプ開発の取り組みが始まる前の状況について伺わせてください。ドクターメイトでは創業当初から豊富な医療・介護データを蓄積されていたとお聞きしています。
ドクターメイト・青柳:はい。私たちは起業したときから、介護施設に対して医療的な判断やアドバイスをする事業を行っています。行政などによるマクロな実態調査や統計はあるものの、実は、介護施設で実際に発生するリアルな医療課題(臨床データ)
私たちは将来的にここに大きな価値が生まれると考え、創業当初からデータの蓄積に注力してきました。データが溜まっていけば、「どういったケースで、どうアドバイスをすれば良いケアができるか」
──現在、ドクターメイトにはどれくらいのデータが蓄積されているのでしょうか?
ドクターメイト・青柳:現在、夜間オンコール代行™だけでも相談実績は累計15万件以上にのぼっており、ありとあらゆる症例のデータが蓄積されています。
さらに特徴的なのは、コールを受けた際のデータだけでなく、「その判断が正しかったのか」
──それだけ豊富なデータがありながら、それらを活用していくにはどのようなハードルがあったのでしょうか?
ドクターメイト・青柳:意義のあるデータ分析をするためには、データエンジニアリングの知識も必要ですし、データの整備も欠かせません。既存事業を継続しつつデータ分析を徹底しようとすると、リソース的にも重たく時間がかかってしまうため、十分に手が回せていませんでした。
そんな時に生成AIが登場しました。大量のデータを分析できる手段としてAIを活かせるのではないかと思ったのですが、今度は「既存の開発がある中でAI活用の1歩目を踏み出すリソースがない」
──そこでGBと連携したPoCがスタートしたのですね。数ある投資先企業の中から、ドクターメイトさんにAI支援を提案した理由は何だったのでしょうか。
GB・御手洗:ドクターメイトさんの事業を鑑みると、明らかに独自データが溜まっているはずであり、AIでレバレッジを効かせられるポイントがあると考えたからです。
また、データそのもの以上に重要なのが、その「データを生み出している人」
GB・野澤:さらに付け加えると、ドクターメイトさんは夜間オンコール代行™の業務マニュアルのメンテナンスを頻繁に行われていました。どういう症状のときにどう対応するかという暗黙知を「形式知」
──今回のPoCではドクターメイトのサービスのなかでも夜間オンコール代行™に絞って検証を進められましたが、その背景を教えてください。
ドクターメイト・青柳:理由は主に3つあります。
1つ目は、当社の中で最もお客様から評価されている主力事業であり、そこをさらに伸ばしていきたかったということ。
2つ目は、介護施設との契約が増える中で「スケールと質の担保」
そして3つ目は、介護施設のお客様から「医療相談を電話で受ける際には、入居者に関するデータを把握しておいてほしい」
──実際のPoCはどのような体制やプロセスで進められたのでしょうか?
GB・野澤:全体のプロジェクト期間は約半年間でした。最初の1ヶ月は、夜間オンコール代行™のAI化における事業インパクトの算出や、現状の業務フローのヒアリングを行いました。2ヶ月目には、いわゆる「AI看護師」
その後、生成AIがテキスト処理に強みを持つという特性を踏まえ、入居者の症状の把握や入電内容のレポート作成といった領域から活用していくのが適切だと判断。最終的なプロトタイプの開発までGB内のみで行い、青柳さんをはじめとするドクターメイトの皆さんに提示させてもらいました。
ドクターメイト・青柳:このプロトタイプ開発において1番難しかったのは、「すでに動いているオペレーションにどうAIを組み込むか」
GB・御手洗:まさにそこは私たちも気をつけていた点です。AIには「何でもできる」
──プロトタイプができたことで、ドクターメイトの社内にはどのような変化が生まれましたか?
ドクターメイト・青柳:やはり目に見えるものができた影響は大きかったです。それまでは社員各々が持っている「AI」
AIを活用しようという意識が強まったことで、「既存のデータ構造がAIに合っていない」
──社内のエンジニアや看護師の方々の反応はいかがでしたか?
GB・野澤:AIに仕事を奪われるといったネガティブな反応はなく、看護師の皆さんも「面白いね」
ドクターメイト・青柳:今回のPoCは、事業の成長戦略やエクイティストーリーの観点でも大きな意味があります。私たちのサービスは看護師や医師の数が必要なため、しばしば投資家からは「オンラインサービスではあるが労働集約的だ」
しかし、AIを使ってナレッジを型化し、裏側のオペレーションにスケーラビリティを持たせることができれば、一気にマーケットの広がりが生まれます。再現性高く、質の良い顧客対応ができるとアピールできるようになったのは大きいですね。
──エンジニアの方にとっても、ドクターメイトでAI開発に取り組むことには大きな魅力がありそうですね。
GB・野澤:ドクターメイトさんほどデータ量があり、それを形式知にする業務プロセスが回っている環境は稀有です。私自身もエンジニアですが、こうした環境でAI活用を突き進められるのはとても面白いなと感じます。
ドクターメイト・青柳:データを扱う楽しさだけでなく、それを実際のオペレーションの中でダイレクトに実証できることは当社の特徴です。そして何より、今回のPoCを通じて私も含めた経営陣が「AIをやっていくぞ」
とはいえ、過度には期待をせず、すぐに成果が出るものではないと理解した上で、現実的にAIと向き合っていきたいですね。AI活用のリアルを知った経営陣とともに働ける環境をポジティブに捉えてくれるエンジニアの方も多いのではないかと思っています。
──GBとともに進めたPoCを通じて得た気づきや、今後のAI活用の展望を伺わせてください。
ドクターメイト・青柳:AIの得意不得意が分かったことで、逆に「人間の価値」
私たちとしてもAI活用に本気で取り組む意思を固めることができました。これには御手洗さんから「AI活用はトップダウンじゃないと進まないですよ」
GB・御手洗:AI活用は現場から進めようとしても、どうしても技術的・オペレーション的な壁が多く、途中で止まってしまうことが多々あります。だからこそ、中長期的な目線でトライアンドエラーし、判断を下せる経営陣のコミットが不可欠です。私たちは株主として経営陣と直接対話できる立場にありますので、その点でもAI活用のサポートをうまく行えたのではと考えています。
ドクターメイト・青柳:GBさんの支援に関して付け加えると、今回はプロトタイプ開発と並行して、GB知財チームの皆さんから、そこから生まれたアイデアを特許化するという知財活動の支援もいただきました。いわば「攻めと守りの両方の支援」
──ありがとうございます。最後に、AI活用の1歩目を踏み出されたドクターメイトさんとしての今後の事業展開のビジョンをお聞かせください。
ドクターメイト・青柳:今後は夜間オンコール代行™だけでなく、介護施設入居者の日中のケア、特に精神科の相談などにもAIを展開していきたいと考えています。精神科医の療養指導にも暗黙知が多く、ナレッジ化がされていないため、唯一無二のサービスを提供していける可能性があります。
さらに、医療・介護人材が不足する中で「24時間の医療・介護体制の維持」
※所属、役職名、数値などは取材時のものです
(編集:GB Brand Communication Team)
※今回の取り組みは社内検証(PoC)

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