DAIZの事例から読み解くSDGsへの貢献

新型コロナウイルスによるパンデミックを経験した今、私たちはこれまで以上に「食べる」ということを見つめ直す機会を得ました。

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執筆: Universe編集部、共同執筆: 松尾 侑紀、GB SDGsチーム

読者のみなさんは本日6月18日が「持続可能な食文化の日(Sustainable Gastronomy Day)」であることをご存知でしょうか。国連が2016年に定めた国際デーで、世界の食文化を通じて持続的な食生活を守るための活動を啓蒙する日です。国連のサイトにはこのように記載されています。

『Gastronomy(ガストロノミー)』とは、「食の芸術」を意味しており、また特定の地域における料理スタイルを指すこともあります。言い換えればその土地の食べ物や料理とも言えます。食における「持続可能」とは、例えば、農業、漁業、あるいは料理が天然資源を無駄にせず、環境や健康に悪影響を与えずに将来にわたって継続できるという考え方です。つまり「持続可能な食文化」とは、食材がどこから来たのか、どのようにして栽培されたのか、そしてそれがいかなる方法で市場に出回り、最終的に私たちの食卓に届くのかを考えた料理ということになります。 (United Nationsウェブサイト)。

新型コロナウイルスによるパンデミックを経験した今、私たちはこれまで以上に「食べる」ということを見つめ直す機会を得ました。先に掲載したコラム「フードテック台頭の背景とその理由『2つの人口増減』」では、やや大きな視点で人口の増減という大きな潮流を捉え、食に関するテクノロジーが今後いかに必要とされるかを解説しました。それに続いて本稿では、個別の企業がどのように持続可能な社会づくりへ貢献出来るのか紐解いてみます。

温室効果ガスと植物肉の意外な関係

DAIZは発芽大豆を使用した植物肉原料『ミラクルミート』の開発・生産を行う熊本発のスタートアップ企業です。従来の植物肉は(1)味と食感に残る違和感(2)大豆特有の青臭さや油臭さ(3)肉に見劣りする機能性(栄養価)といった課題を抱えていました。DAIZが開発した『ミラクルミート』は原料に丸大豆を使用し、独自技術「落合式ハイプレッシャー法」で発芽させ、実際のお肉のような弾力や食感を再現する加工を行うことで、これらの課題を解決したものです。 これまでに、フレッシュネスバーガーなどのバーガーチェーンや、大手スーパー各社、飲食店などで採用された実績を持ち、味の素やニチレイフーズなどとも資本業務提携を行っています。

では、同社は持続可能な食文化にどのように貢献できているのでしょうか。ひとつのキーワードが「温室効果ガス」です。植物肉の生産がなぜ温室効果ガスに繋がるか、いまいちピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。

地球温暖化はご存知の通り、二酸化炭素やメタン、一酸化炭素・フロンなどの温室効果ガスが原因と言われており、温室効果ガスの最も大きな排出源は電力(火力発電など)と言われています。実はこれと同等に大きな排出源となっているのが、農畜産業なのです。

世界で飼育されている牛は15億頭と試算されており、これらが排出する二酸化炭素や腸内ガス(メタン)は温室効果ガスの大きな要因になっています。人口増によるタンパク源の不足も大きな社会課題ですが、同時に地球温暖化防止の観点でも私たちの食生活の見直しが求められているのです。

当然ながら植物肉は温室効果ガスの排出を抑える効果の高い植物性食品なので、「植物肉」が普及することそのものが持続可能な社会実現に貢献します。実際にDAIZの『ミラクルミート』も、食肉や従来の植物肉と比較して温室効果ガスの排出を抑える効果が期待されています。ENEOSホールディングスと共同で、『ミラクルミート』普及によるCO2排出削減効果の見える化(カーボン・クレジット化)の実証を進めています。

DAIZの『ミラクルミート』は前述の通り、肉の再現における独自技術を開発したことで食にまつわる重要な要素である「おいしさ」を実現したことがやはり大きいと考えています。

さらにもうひとつ、DAIZは果実堂という三井物産、カゴメ、トヨタ自動車などが出資するアグリベンチャーの中で新規事業として生まれた会社です。果実堂は熊本県の水俣が創業の地で、有機栽培のベビリーフを栽培・販売しているのですが、この水俣は「水俣病」で土壌汚染の公害被害にあった土地としてご存知の方が多いと思います。

公害で傷んだ水・土を再生してきた水俣は、持続可能性について長い間向き合ってきた歴史があります。このような土地でスタートアップを起業したDAIZだからこそ取り組める持続可能な社会づくり、貢献へのアイデアがあるのではないかと考えています。

GB Universeではこれまでにもソーシャルスタートアップや、社会的インパクト投資に関して発信してきました。昨今、企業がSDGsを意識した経営を求められている中で、DAIZのように具体的にSDGsに貢献しているスタートアップが数多く存在します。引き続き今回のようなSDGsスタートアップの紹介・発信をしていきます。お楽しみに。