フードテック台頭の背景とその理由「2つの人口増減」
社会全体でエネルギーや資源に関する考え方を転換する時期を迎えているのは間違いありません。

執筆: Universe編集部、共同執筆: 木塚 健太
近年、SDGsなどの啓発で持続可能な社会づくりへ関心が高まっています。日本における大きな指針としては、昨年10月に宣言された2050年に向けた脱炭素社会の実現があり、社会全体でエネルギーや資源に関する考え方を転換する時期を迎えているのは間違いありません。
こういった変革期にコロナ禍の影響もあり、大きく変化したのが私たちと食に関する向き合い方です。身近なところでは非接触を余儀なくされたことからフードデリバリーの躍進がありますが、これもひとつのデジタル化の流れと言えます。例えば予約をして食料を消費するスタイルが定着すれば、データによる管理がしやすくなり、食品のロスが減る効果が見込めるかもしれません。
このような背景から、今世界では食とテクノロジーを組み合わせた「Food Tech(フードテック)
2010年代半ばから動き出したこのトレンドは、個別に進化を続けてきた食品、家電、小売、そのバックエンドにおける各業界の動きが融合しつつあるものです。大きくは「食のパーソナライズ」
労働人口減少で避けられない自動化・省力化
外食産業における人材不足は声高に叫ばれている社会課題ですが、ある労働市場の2030年推計(※1)
※1出典:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」
その上で、コロナ禍の影響もありフードデリバリーやゴーストキッチン、D2Cが世界的に急拡大しました。消費者の行動や習慣は変容しており、今後も成長すると考えられています。
構造としてはラストワンマイルを配達するデリバリープラットフォームが定着し、そこを活用した事業主体であるデリバリー専門の飲食店が出現しています。そしてこれをキッチンのインフラで支えるのがゴーストキッチンです。国内のデリバリープラットフォームはLINE子会社となった出前館とウーバーイーツの2強体制で、ここにローカルに注目したシン(Chompy)
店舗を持たないフードデリバリー専業の事業者が食事を作るためのキッチンを貸し出す業態のゴーストキッチンですが、海外の先行事例としてはインドのRebel Foodsや2016年にUber創業者のTravis Kalanick氏が設立したCloud Kitchens、韓国のWecookなどがあり、拠点数も拡大しています。一方国内はまだ各社シード段階で、成長はこれからといった状況です。
食べる場所、作る場所の変化もあれば、食品そのものの生産工程や届け方についても変わりつつあります。D2Cの流れは食品に限ったものではありませんが、GBが出資する完全栄養の主食「ベースフード」
アプローチもさまざまで、消費者の嗜好をデータ化して定期購買を促すサブスクモデル(例:おやつのサブスク)
世界人口増で足りなくなる動物性たんぱく
矢野経済研究所が昨年5月に発表した代替肉(植物由来肉・培養肉)
米国などでは特化型VCだけでなくトップ・ティアVCも含めて各VCが投資を牽引し、2015年以降継続して海外食品大手企業のCVCが設立され、存在感を発揮しているのが現状です。投資金額、Deal数共に引き続き増加傾向で、ここ5年(2016年〜2020年)
これらの理由は明確で、この先、世界的な人口増加に対して動物性たんぱく質の供給が不足する未来が予想されているからです。また生産だけでなく、畜産は実は二酸化炭素の排出元としても環境にインパクトを与えています。人口が増えたことに対して畜産を単純に増産できない状況にあるのです。従来の代替タンパク(主に植物肉)
特に代替タンパク分野は成長が著しく、ここ数年でそうした商品を提供するスタートアップも資金調達を進めてきました。Perfect dayがここ2年で3億ドルを調達、Impossible Foodsが昨年に約7億ドルを調達(これまでの累計では16億ドル)
一方国内は2020年になり特化型VCやアクセラレーター、フードテックスタートアップ向けのシェアオフィスが開設されるなど、投資やコミュニティづくりに活発な動きが確認できるようになりました。プレーヤーとしてもGBの出資先であるDAIZをはじめ、昆虫食のGryllus、培養肉のインテグリカルチャー、ゲノム編集肉のリージョナルフィッシュなど、バラエティも増えています。
今回はフードテック領域に関するトピックスを大きく二つ、解説してみました。日本における労働人口の減少と世界的な人口の増加。この二つの人口の動きが、大きく私たちの食生活に影響を与えることになりそうです。
今回言及しなかったパーソナライズ(個人の嗜好における対応)