スタートアップが今、組織を強くするべき理由

このタイミングに準備ができるスタートアップが数年後に強く、大きく成長すると見ています。「新しい世界」が花開くタイミングがやってくると考えているからです。

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執筆:百合本 安彦

グローバル・ブレインの百合本です。

COVID-19によって世界のスタートアップ投資環境はより選択と集中の傾向が強まりました。

また感染症拡大に留まらず、米中間、中国とインド、台湾など、グローバルで衝突が発生しています。結果、ワクチンができても、アフターコロナでは混沌とした時期が続く可能性があります。元々、経済は減速傾向でした。リーマン・ショックが発生した時は中国のインフラ投資という要因があったため、その後の観測からV字回復に繋がるわけですが、今回は時間をかけて回復していくというのが私たちの見方です。

特にこの大きな環境変化にコロナ禍が重なり、大企業のデジタル化推進が大きく叫ばれているわけですが、これは構造自体の変化ですから既存事業にも影響が出ます。

ここで勝敗を決するポイントがテクノロジーです。大企業には自前でこれの新規開発を進めるのか、それともオープンイノベーションや買収といった手法でスタートアップのサービスや技術を受け入れるのか、という中長期の選択を迫られるわけです。私たちはここにCVCとしての 新たな役割、時代がやってくるとも考えています。

これまでのスマートフォンを中心とした各国のモバイル・インターネットのデジタルシフトではエンターテインメントやシェア、フィンテックなどの分野が立ち上がってきましたが、これからはそこに加え、全産業におけるデジタル・トランスフォーメーションが発生し、ライフサイエンスなどの領域やディープテックに代表される、複雑な社会課題を解決するためのインパクト投資といった活動が活性化すると考えています。

ここでグローバルの投資状況をファクトベースで見てみます。欧米では投資件数こそ一時的に落ち込みましたが、全体として金額は減っていおらずいい案件に金額が集中している傾向がわかります。私たちもダウンラウンドが多くなると予想していましたが、実はそこまで多くありません。つまり、良いスタートアップは引き続き健康的な調達に成功しているのです。

また、中国に目を向けてみます。テンセント(騰訊)とシャオミ(小米)の企業投資が非常に特徴的で、例えばテンセントでは昨年50件に対して980億円近くを投資していたのに対し、現時点で同等件数に対して1400億円の投資を実行しています。これに加え、米国は明確にNASDAQから中国企業を排除する動きに出ています。結果、7月に開始した中国版NASDAQと言われる海証券取引所「科創板(STAR)」に注目が集まり、上場が予定されているアント・グループ(螞蟻集団)は2兆円とも3兆円規模になるとも言われています。

ここまで駆け足でスタートアップを取り巻く環境、グローバル・ブレインとしての視点をまとめてみました。

さて、この状況でスタートアップを経営するみなさんはどのように動くべきでしょうか?また、企業に務める優秀な方々は次の10年をどう見るべきでしょうか。

私たちは今、このタイミングに準備ができるスタートアップが数年後に強く、大きく成長すると見ています。これは緩やかに状況が回復し、数年後にここまでお話した「新しい世界」が花開くタイミングがやってくると考えているからです。

スタートアップにとっての準備はいくつもの視点があります。が、やはり大きく力を決定付けるもの、それはチームです。よい人を採用し、強い組織を作る。数々の経営者、スタートアップのみなさんと一緒に事業を作ってきた経験からこのルールだけは間違いないと考えます。

11月に開催するイベントは元々、オフラインでの開催を考えていました。しかし、予断を許さないこの状況で、新しい手法としてのオンライン採用をみなさんと一緒に手にすることができれば、それもまた力になります。

是非この機会を次のステップにできれば幸いです。多くのみなさまにご参加いただけることを期待しております。