エンジニアスキルの可視化に挑戦、「Findy」に投資する理由
Findyは、エンジニアのスキルをスコア化する技術によってエンジニア組織のパフォーマンス可視化します。
執筆: Universe編集部、共同執筆: 石榑 智晃
先日、グローバル・ブレインは新たな投資としてHR Tech領域のファインディへの出資を公表いたしました。同社が提供するサービス「Findy」は、エンジニアのスキルをスコア化する技術によってエンジニア組織のパフォーマンス可視化し、それを元にエンジニアの転職やフリーランスのマッチング事業を手掛けています。
2019年5月にシリーズAで出資(その後シリーズBでも追加出資)させて頂き、1年で事業は約2倍に拡大するスピードで成長。現在は約3万人のエンジニアユーザーと約300社のスタートアップやメガベンチャー、DXを推進している大企業など幅広いにサービス利用して頂いています。本稿では私たちが彼らに注目する理由、幅広いHR Tech領域でどのようなポイントがあるかを紐解いてみたいと思います。
HR Tech領域で注目を集める「可視化」技術
CrunchBaseに記載されている2010年当時のスタートアップ投資額(グローバル)を眺めると四半期ベースで3億5000万ドルほどだったものが、10年経過した今、ざっくり100億ドルと大きくジャンプアップしていることがわかります。
参考情報:Human Resources Startups (CrunchBase)
一方、この分野は非常にカオスで分類も複雑なのですが、ひとつの視点として「ペインの在り処」があります。こちらはPwCが昨年、600社ほどのHR部門リーダーに調査をした結果を公表しているものなのですが、この中に「向こう1,2年でどのHRテクノロジーに注目(投資)するか」というものがありました。結果は次のようなものです。
- タレント獲得ツール:49%
- 従業員体験:48%
- スキルマッピング・キャリアパス:46%
- インテリジェント・リクルーティング:45%
- プロセス自動化:45%
参考情報:PwC’s HR Technology Survey 2020
獲得や離職率を下げるための施策に次いで大きく注目を集めているのがスキルマッピングの分野です。いわゆる従業員の可視化を目的とした領域で、今回投資したこれまでのタレント獲得サービスに加えて新しくサービスをリリースしたのもこの領域になります。
特にエンジニアのスキルを可視化するようなツールとして、グローバルのプレーヤーとしてはHackerRankやTriplebyteなどがあり、2015年創業のGitPrimeはNASDAQに上場しているテクノロジー系のスキルプラットフォーム「Pluralsight」は昨年に買収されています。
コロナ禍で変わる国内のエンジニア・エコシステム
では、エンジニアのスキルを可視化することで何が起こるのでしょうか。
実はこれだけテクノロジーが進んだ現在でも、HR領域においてはスキルやパフォーマンスが定性的に扱われることが多く、それがHR領域の進化を遅らせていたと考えています。
特に期待したいのが、エンジニアのエコシステム変革へのチャレンジです。
特にアフターコロナにおいては比較的にリモートワークが多かったエンジニアのリモートワーク化がさらに進んでいます。エンジニア組織におけるパフォーマンスマネジメントはこれまで非常に定性的なマネジメントを行なっていました。
さらにコロナ禍によって一気に加速したリモートワーク環境は、その課題を顕在化させることになりました。それもあって開発を急いだのが、今年5月に公開したエンジニア組織のパフォーマンスを可視化する「Findyteams」です。現在非常に引き合いが多いのですが限定的にベータ版として提供しており、年内の本格リリースに向けて開発を急いでいます。
このFindyteamsにより組織パフォーマンスの可視化を進め、これまでも取り組んできたタレント獲得でのスキル可視化と組み合わせる事により、エンジニアのエコシステムを大きくアップデートすることにチャレンジしています。
前述のように、グローバルでも同様な取り組みをしているスタートアップはでてきていますが、日本では目立った競合がいません。HR市場は国によって規制やカルチャーなどから市場性が異なりますが、日本においてはファインディが新たな市場を作るチャンスがあると思っています。また日本ではオフショワ開発などで連携が深い東南アジアにおいてもエンジニアのHR市場は未成熟で大きな進出チャンスがあると考えています。
経営豊富なアントレプレナー
創業者の山田さんは大企業や戦略コンサルティングなどのキャリアを経て、前職では私たちの支援先だったレアジョブで人事やアライアンスなどを担当する執行役員を経験するなど、スタートアップやHRに関する事業経験を積んだ人物でした。
ファインディが大事にしていることに「エンジニアファースト」があります。HR事業は採用側である企業にマネタイズすることが多く、事業がどうしても採用企業側を向いて作られることが多くなります。
しかし時には採用企業側とエンジニア側で利害が一致しない時もあります。この時、エンジニア側に寄り添いつつ、かつ、事業を成長させることができるバランスを求めることこそ、業界を変えるために必要なチャレンジではないでしょうか。
誤解されやすいのですが「ファインディは人材紹介会社ではなく、HR Techの会社です」と説明することがよくあります。
今はエンジニアのスキル可視化の技術を使った採用支援を主力の事業としておりますが、前述のようにこの事業はFindyが目指す世界観の一部でしかありません。Findyteamsのリリースによって目指す世界観を世の中によりハッキリと示せるようになってきました。
冒頭の調査にもありましたが、社会はより一層、エンジニアスキルやパフォーマンスの可視化の技術の進化を求めることになると予想されます。
ファインディほどこのテーマに全力を注いでいる企業はなく、そして、すでに定量化したスキルをベースに採用のマッチングをしているデータが大量に溜まっているのです。このデータを先行して保有できることが可視化技術の磨き込みに関しても先行者優位を大いに活かせるポイントだと考えています。
私たちがかつて支援していた、そして山田さんが在籍していたレアジョブが上場し、その後、自らも起業という道を選ばれてグローバル・ブレインとして支援することになったわけですが、日本のスタートアップ・エコシステムの成長を考える上でも、このような事例の積み上げは非常に重要だと考えています。