データで商業用不動産市場をデジタル化「estie」に投資する理由

オフィス賃貸業に必要な情報を提供するestie。私たちが彼らに注目する理由についてお伝えします。

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執筆: Universe編集部、共同執筆:梶井健、松尾侑紀

グローバル・ブレイン(以下GB)は新たな投資先として、オフィス賃貸業に必要な情報を提供する不動産データ分析基盤『estie pro(エスティ・プロ)』を運営するestie への投資を公表しました。

『estie pro』は50以上の不動産デベロッパーや管理会社、仲介会社などから構築された情報を日々集約し、全国8万棟・40万フロアの建物情報や日次で500万坪にもおよぶ募集情報、24万件の非公開賃料情報、都心20万件の入居企業情報などからなる網羅的なデータベースを提供しています。

独自開発のAIアルゴリズムによる推定成約賃料「e-賃料」は不動産事業者の意思決定をサポートしており、2020年のサービスリニューアル以降、東急などの不動産デベロッパーからアセットマネジメント会社など、幅広い顧客に活用されています。

2018年12月に創業し、2019年に東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)よりシードラウンドの資金調達を実施、2020年にはグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)とUTECよりプレシリーズAラウンドの資金調達を実施しています。2021年9月のイベント「ICC Kyotoスタートアップ・カタパルト」では優勝するなど投資家からも注目される一社です。

そして2022年、既存株主のGCPおよびUTECに加え、私たちGBよりシリーズAラウンド(約10億円)の資金調達を実施しました。

データでまだまだ変わる商業用不動産市場

東京の商業用不動産市場は80兆円と世界最大規模を誇り、国別の商業用不動産市場規模もアメリカ、中国に続く第3位となっています。一方、不動産市場における基礎データのアクセススコアは先進国最低水準となっています。

また、昨今の新型コロナ感染症の影響により在宅勤務と出社を混合する企業の増加やオフィスの撤退もあって都心の空室率は上昇を続けており、ビル運営に関わる各社は空室を改善する必要に迫られているのです。

こういった状況を見越したかのように、estieは2018年の末に創業します。

創業者で代表取締役CEOの平井瑛さんは2014年新卒で三菱地所に入社し、海外における投資戦略の策定や米国物件の投資に従事した後、2018年より東京物件の賃貸営業や施設企画開発に従事した人物です。

estie 代表取締役CEO 平井瑛氏
estie 代表取締役CEO 平井瑛氏

平井さんは三菱地所時代に海外市場の不動産投資業務に携わった際、東京にいながら現地物件の詳細情報を手に入れられたため、スムーズに業務を進められました。一方、国内市場で同様の業務を行おうとすると、東京にいるにもかかわらずデータが整っていないため、思ったように仕事が進まない経験をされたそうです。

情報整備ができれば物件オーナーは最適な価格で貸し出すことで逸失利益を防げますし、借りる側も相場に則った適正価格で借りられます。さらに仲介するエージェントはより早く成約に導けるわけです。

業界経験とテクノロジーへの理解

チームにも魅力があります。CTOである岩成達哉さんや、三菱地所でM&Aなどを担当されていた取締役の束原悠吾さんなど、彼らには深い業界知見やテクノロジーへの理解があります。

不動産という重厚長大なセクターにおいて、幅広いステークホルダーと話を前に進められる推進力や日本の不動産市場を変えたいという情熱、そしてそれを実現できるテクノロジーの高さは、日本の不動産業界を大きく変えるために必要な要素です。

前述の通り、日本は世界と比較しても商業用不動産のデータ化が進んでいません。この超巨大市場のプラットフォームになれば、市場自体の拡張性が高いため、今後、バーティカルな機能をいくつも提供することが可能になります。特にこれまでアナログな情報に基づき行われていた「賃料策定」業務におけるDXの推進や、紙やPDFで管理していた物件情報収集の業務プロセス改善は大きな可能性があります。

B2B Proptech(不動産テクノロジー)は日本ではまだまだ市場として小さいですが、 CoStar など海外事例や日本不動産における DX 意識の高まりを考えると、今後、大きく成長する可能性を秘めており、その中において、estieはこのイノベーションを大きく推進する一社になってくれると期待しています。

estieのサイトでも、代表取締役CEOの平井さんとGBのGeneral Partnerである梶井との対談を記事にしていただけましたので、併せてこちらもお読みいただけると幸いです!
https://inside.estie.co.jp/entry/seriesa_gbkajii