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わたしが経営陣になった理由——スタートアップへの転身ストーリー

創業者・代表者「以外」のメンバーがどうして経営陣になったのか、お聞きしてみました。

執筆: Universe編集部

スタートアップの創業ストーリーはなぜこの事業を立ち上げなければならないのか、というミッションの根幹を表現する手段としてもよく使われています。その一方、創業者以外の経営陣についてフォーカスが当てられる機会は少ないのではないでしょうか? そこで今回、創業者・代表者「以外」のメンバーがどうして経営陣になったのか、何を考えてスタートアップに飛び込んだのか、お聞きしてみました。

大手からの転身

ユーフォリアで執行役員を務める小西徹(写真左)さんは、現在、同社のテクノロジー部門にて、新規プロジェクトの推進を管掌されています。前職の日本サッカー協会時代、同社の共同代表である橋口寛さんと宮田誠さんに出会い、ビジョンに惹かれて一緒に働きたいと思うようになったそうです。

「日本サッカー協会よりも以前に日本HPというテクノロジーの会社にいたこともあり、『テクノロジー x スポーツ界』という両方の経験も生かせると思い、2020年2月にジョインしました(執行役員就任は2021年9月)。スポーツ界、サッカー界がもっとよくなるためには、どこか一つの仕組みや組織だけが変わればいいのではなく、大きな視点から目線を揃えて複数の組織が力を合わせないとできないことがあります。そのために違う景色が見たかったし、振れ幅の大きい場所でチャレンジしたかったのでスタートアップに飛び込みました」(小西さん)。

大きな企業・組織からスタートアップに参加することへの不安については「変化の中心になる可能性があり、ダイナミックなことが経験できるメリットがそれを上回る」と小西さん。元々の仕事でも俯瞰的に組織や業界について考えていた経験もあり、執行役員に就任してからはさらに組織全体のことを考えるようになって視野が広がったとお話されていました。

「スポーツ業界で事業を成功させるのは日本ではなかなか難しいことですが、大きなチャレンジなので誠実にいろいろな人と仕事して実績を積んでいきたいです」(小西さん)。

考えていなかったスタートアップへの転身

小西さんと同じく大手からの転身組で、エンジニアとしての経験を語ってくれたのがRevCommの執行役員 CTOを務める平村健勝(写真中央)さんです。平村さんは2018年6月からRevCommにてCTOを務めており、入社前は外資系の大手コンサルティング会社でデータサイエンス部門のマネージャーを務められていました。

RevCommは代表を務める會田武史さんが2017年7月に設立したスタートアップで、IP電話と録音・文字起こし・音声解析がひとつになったツール「MiiTel(ミーテル)」を開発・提供しています。コールセンターや営業の現場で受け入れられ、感染症拡大の対応に追われる全ての都保健所に導入されるなど、その活躍の場を広げつつある話題のサービスです。

ただ、平村さんは当初、スタートアップへの転身はあまり考えていなかったそうです。

「コンサルタントとして一通りの経験を積めたかなと感じ、新しい挑戦を探していました。スタートアップへの参画は全く検討していませんでしたが、コンサルタント時代も通信業界を担当していたこと、システム開発に加えてAIや機械学習の技術をはじめとする、これまでのスキルや経験を活かせそうな場だと感じました。最先端のテクノロジーとデータを活用して社会問題を解決したいという私自身の想いが、RevCommのコーポレートミッションである『コミュニケーションを再発明し人が人を想う社会を創る』と合致したので、入社に至りました」(平村さん)。

社員数十万人を抱えるグローバルの大手コンサル会社から、社員一桁台のスタートアップへの転職はそう容易な意思決定ではなかったようです。しかし、この迷いを断ち切って背中を押してくれたのは他ならない、ユーザーの声でした。

「当時ベータ版を利用してくださっていたユーザー様へのヒアリングの結果、多くの方から早くリリースしてほしいという期待の声をいただき、市場でのニーズが高いプロダクトということがわかったんです。それで頭の中に描いていた今後のロードマップの実現可能性の高いアイデアだということが明確になり、入社へ踏み切るきっかけになりました」(平村さん)。

現在は、CTOとして半分の時間を主に通信領域を中心とした独創的な新機能の開発や性能改良、海外展開するためのプロダクトの研究開発、残りの約50%の時間を技術戦略や組織づくりを始めとした経営に充てているという平村さん。後悔はありませんでしたか?という問いに次のようなコメントをくれました。

「RevCommでは様々なバックグラウンドのプロフェッショナルが在籍しています。その中には、コンサル、商社、通信キャリア、SIer、研究機関など出身も様々で、外資系、日本企業、スタートアップなどカルチャーも様々です。

しかし、各業界のベストプラクティスを寄せ集め、お互いがお互いのことをよく知ることで、全てのメンバーが居心地の良い環境で高い専門性を持って各ミッションを推進できる働きやすい組織を実現できていると考えています。

後悔していることとしては、あまりないですが、想像よりも早いスピードで事業が成長していることもあって、ビジネス面やテクノロジー面での新しい挑戦が毎日のように求められていることでしょうか(笑)」。

より大きな挑戦

大手を経験してスタートアップに転身した小西さんと平村さんと少し異なるストーリーを持っているのがファーメンステーションで取締役COOを務める北畠勝太(写真右)さんです。同社は独自の発酵技術を活用した未利用資源の再生・循環事業を提案するスタートアップで、北畠さんはこの事業開発や組織作りなど、COOとして会社の基礎になる業務を担当されています。

北畠さんは以前、事業責任者としてメガベンチャーに在籍をしていましたが、「(既存の大きな基盤がある中で)下駄をはいて仕事をすることはチャレンジしていると言えるのか」と考えるようになったのが転身のきっかけだそうです。

「仮に失敗してもどうにでも生きていけると思っていたので、リスクは特にないと考えていました。唯一は、年収が一時的に下がることは必然なので、どのような環境になったとしても自分の子供には変わらない機会の提供をしたいとは思っていました。

ファーメンステーションに参画するメリットとしては、サステナビリティに真正面から先駆者としてチャレンジできる機会、製造業・地域との連携(岩手県奥州市にラボがあります)など自身として初めて経験するチャレンジ、代表の酒井含め自身とは異なるバックグランドの多様かつユニークな仲間と働けることなど多数ありました」(北畠さん)。

今回お話を伺ったどの方も、大手企業や他業界からの転身組。それだけに「スタートアップだからこそできるチャレンジ」をポイントにされていました。他の多くのスタートアップの経営陣を見ても同じようにチャレンジ精神があり、人間としての魅力もあふれる方ばかりなので、またどこかでCEOを支える経営陣の皆さんをご紹介できればと思います。