【マインドのDNA】子供たちが飢えることのない世界にしたい/株式会社YUIME 上野 耕平
一次産業のインフラとしての人材支援サービスを軸に事業を展開する、YUIME株式会社。本記事では、同社を率いる上野氏のパーソナルな一面や夢を深堀りし、その素顔に迫ります。

執筆:Universe編集部
「マインドのDNA」では、いま注目のスタートアップ起業家をピックアップし、現在の価値観やマインドをさまざまな角度から深掘りしていきます。
今回登場いただいたのは、YUIME株式会社 代表取締役 上野 耕平氏です。
上野 耕平氏
米国Saint Martin’s University中退。個人事業主を経て、2000年に株式会社アットラインを共同創業。大手飲料メーカー向け物流派遣事業を展開し、売上高30億円規模まで成長を牽引。共同創業者に事業譲渡後、2012年に株式会社エイブリッジ(現YUIME株式会社)を設立。沖縄県南大東島での製糖事業(サトウキビ)における人材支援事業を皮切りに繁忙期の農家向けに人材支援事業を全国規模で展開。
──なぜ起業という選択を?
高校卒業後、アメリカの大学へ進学するために渡米をしました。語学力を身に付けるために、語学学校から現地の高校3年生へ編入し、その後大学へ入学。しかし当時の日本はバブル崩壊の真っ只中であり、家庭の事情もあって、悩んだ末に日本に戻って起業することを決意しました。
起業するにあたって「何をやるか」を考えていた際、大学在学時にスターバックスのマーケティング責任者による講演を聞き、そのビジネスに非常に感銘を受けたことを思い出しまして。当時シアトルスタイルのカフェは未上陸だったので、日本でも通用するかもしれないと起業を決断しました。これが私の起業家人生のスタートです。このような流れで飲食事業に携わった後、IT事業や人材派遣事業の起業を経て、現在に至ります。
──失敗・挫折にはどう向き合っている?
どんな局面においても「休むことなく次の打ち手を考え、とにかく運動量を上げてもがき続ける」ことを心がけています。
新しい世界に踏み込むときに困難があるのは当然です。問題は、その困難の壁がどれくらい高いのかということ。スタート地点ではその高さは見えません。壁はぶち当たってみて初めて気づくものですから、何事もとりあえず始めてみる、挑戦してみるしかないと思っています。
社員のメンバーにも「答えが出るまで頭で考えていたのでは行動できなくなってしまう。とりあえず動いてみると、想像もしなかったヒントに出会う。そのヒントが結果につながるものだ」と伝えるようにしています。
──最もゆずれないものは?
精神的に自由であること。
思い込みや固定観念にとらわれず、常に広い視野を持ってマインドをフラットにし、物事に取り組んで行きたいと常日頃から意識しています。
──チームをひとことで表すと?
「多様性」です。
当社は外国人スタッフも多い組織のため、自分と価値観の違う仲間をどれだけ受け入れ、活躍してもらえるかが重要だと考えています。
足りない箇所を埋めるという組織の作り方ではなく、足りないところを補い、それぞれ凸凹の個性を組み合わせることで、凹凸のないきれいな形を作っていく。そんな組織づくりを目指しています。
また、多様な価値観を認め合う風土を大切にし、皆が同じ思考や捉え方に陥らない環境づくりも心がけています。

──心身ともに疲れたときのリフレッシュ方法は?
身体の疲労は「睡眠」でリフレッシュしています。
仕事で辛く、苦しく思い悩んだ際は、とにかくその壁を超えられるように、さらに仕事に没頭してしまいます。仕事の悩みは仕事でしか解消できないと思っているので、いままで以上に時間と労力を費やし、その山を超える努力をしているという感じですね。
また、地方の生産者さんとお酒を飲みながら語り合ったり、自然と触れ合ったりすることで、気が付かないうちにストレスが解消できていると感じることもあります。自分が知らない世界を見たり聞いたりすることで、心がリフレッシュされているんだと思います。
──自分を突き動かすエネルギーは?
一次産業の産業構造をアップデートすることです。
日本の農業が抱える人材不足への危機感はもちろん、新しく農業に参入する人々が豊かな生活を送り、仕事として定着できるような「産業」にしていきたいという思いも抱いています。
沖縄の離島では、農業が衰退すると人口減少に直結し、土地が荒れ放題になってしまうという現状があります。都市部以外の地域で産業として成立しているのは、ほとんどが広義での地場産業です。その地域の産業を守るということは、地場の豊かさ、ひいては国の豊かさに直結することにつながると言えます。
また、日本の「食」は世界に誇れるものばかりですので、それを世界に伝えていきたいとも考えています。生産者の方々がこだわりを持って丁寧に作り上げた「日本食材」と「日本の農業」を世界へ届けていくのも私たちの使命です。
──CEOに必要な資質とは?
スタートアップにおいては、折れない心と胆力です。
CEOとして必要な資質は、細かな分析と入念な準備に加えて、すべてリスク込みで実行する決断ができる気力だと考えています。どんな状況であっても最後に勝負ができるかという気持ちが大事ですね。
──最後に、いまの夢を教えてください
次の世代の子供たちが飢えることのない世界を担保したい。「食べ物」だけは豊富にある環境づくりに貢献したい。これが夢です。
日本一裕福な街と言われている港区でさえも、フードバンク(食品製造工程で発生する規格外品などを引き取り、必要とする人や団体へ無料で提供する活動)に列ができ、シングルマザーの子供が1日1食しか食べられないという話が聞こえてきます。世の中が豊かになればなるほど格差は大きくなっていく傾向がみられますが、食べ物だけはすべての人に行き渡る世の中であってほしいと願っています。
日本の食料生産量を下げない努力をしていくこと。農業という業界に1人でも多くの人に参画してもらい、生産者として輩出していくこと。これこそがYUIMEの使命だと考え、一次産業の産業構造をアップデートさせていきます。
これからの未来に向け、日本の美味しい食べ物を絶やさないように尽力していきます。
YUIME株式会社


一次産業従事者の高齢化や人手不足という社会課題を解決するために、特定技能外国人を中心とした労働力支援「YUIWORK」、日本人コア人材の採用支援サービス「YUIMARU Japan」、課題解決型メディア「YUIME Japan」、人材教育や栽培データ、営農ノウハウが蓄積可能な自社試験農場「YUIME FARM」などを運営している。