ARTICLE

エンジニア採用プロセスにおける「外せないポイント」——エンジニア採用勉強会レポート(2)

採用をうまく進めるためには「何が」難しいのかを正しく理解して、適切な施策を実行することが重要です。

執筆: Universe編集部、登壇・編集協力: 山田 裕一朗

スタートアップや大企業においてエンジニアのニーズが高まり続ける昨今、採用に悩まれている企業も多いと思います。そこで今回、エンジニアの採用で数百社を支援されており、採用後のパフォーマンス向上のためのサービスも提供されている、ファインディ株式会社の山田裕一朗CEOに、スタートアップについて非常に重要なエンジニアの採用や組織マネジメントについて伺いました。 ※グローバル・ブレインの社内勉強会にてお話いただいた内容をもとに再構成してお届けします

ファインディ株式会社 代表取締役CEO 山田裕一朗氏
同志社大学経済学部卒業後、三菱重工、ボストン コンサルティング グループを経て2010年、創業期のレアジョブ入社。レアジョブでは執行役員として人事、マーケティング、ブラジル事業、三井物産との資本業務提携等を担当。その後、ファインディ株式会社を創業。エンジニア採用、フリーランスエンジニアのマッチング、エンジニア組織マネジメントなどのサービスを手がける。

エンジニアの採用にはどこも悩まれてると思いますが、うまく進めるためには「何が」難しいのかを正しく理解して、適切な施策を実行することが重要です。そのためまずは、どこでつまづいているのかを理解することから始めます。

シリーズAでの正社員採用は難しい、DX文脈で大企業も参戦してきているなど、フェーズごとの課題や採用トレンドを理解しておくのは前提として、次に大事になってくるのは要件定義です。

誰を採用すべきかがクリアになっていない企業は意外とあります。例えば「フルスタックの人材を採用したい」という声をいただきますが、「フルスタック」という表現はアバウトすぎますし、「PCのキッティングなどもさせられるのでは」と、ネガティブに響きかねません。このような事態を避けるためにも採用ターゲットを明確にし、マッチングの精度を高める必要があります。

また技術選定においてはトレンドを加味し、特にシリーズAでは採用する人材のことも踏まえて選定していくべきです。そこを考えておかないと、例えば国内ではまだまだ経験者が少ない言語を自社の開発言語にした場合に採用に苦戦する、組織規模拡大の壁になるといったことが起こりかねません。

このように、求人票でどれだけJD(ジョブ・ディスクリプション)を定義できるかは非常に重要です。

年収面もそうです。年収レンジが500万円で刻まれている求人を多く出している会社は、ほぼ採用がうまくいきません。逆にうまくいってる会社を見ると、200〜300万円レンジで刻まれています。考えてみれば当たり前ですが、必須スキルや歓迎スキルは200〜300万円で変わってくるはずで、こういう細かい微調整ができている会社は非常に強いです。

さて、要件定義が固まったら次は認知です。オウンドメディアやSNSなどを使って認知を広げるのは、採用コストも下がりますし理想的ではあるんですが、それだけでは効果が出にくいので、リファラルや採用媒体、エージェントなどを利用した地道な活動も重要です。

イベントをやりたいという声もよく聞きます。ただ、採用につなげるのであれば毎月のペースで2年間は続けないと難しいですし、それでようやく1〜2名採用できるといったところです。イベントはある日突然効いてくるものなので、継続できる体力や気力を加味して考える必要があります

そして運用フェーズですが、ここで効果的なのは、エージェントのファーストインプレッションを取りに行くことです。相手も人なので、コミュニケーションを積極的に取ってくれる経営者のことは無碍にできません。優先的に扱ってくれるとまでは言いませんが、記憶してもらうことで自社の紹介につながってくるのでお勧めです。

最後に、採用がうまくいっている企業が特に注力しているポイントを2つご紹介します。1つは報酬・条件面、もう1つは採用のCXです。

報酬・条件面はやはり非常に大事で、半リモートやフルリモートを許容していたり、市場価格に合わせて給与設計している会社は強いです。弊社でも転職サービスの運営をしているため、市場価値を踏まえて報酬を設定して採用し、最も効率的な組織で働いてもらうことを心がけています。

採用CXでいうと、カジュアル面談が上手な会社は成果が出やすいです。CTOやEMがカジュアル面談を実施するなど、ビジネスサイドでなく、エンジニア主導で口説いていけるかがポイントになってきます。

アンケートから見えるエンジニアの心理

Findyに登録しているエンジニアにアンケートを取ったところ、転職の決め手として「年収などの待遇面」を上げる人が最も多い結果となりました。転職で年収が上がるエンジニアも多いことを鑑みると、現職で適切な評価運用がされていない可能性も高く、転職しないと年収が上がらないという背景がありそうです。

エンジニアの年収は高いとはいえ、弊社実施のアンケートで2020年の平均値で614万円、中央値で550万円と手が届かないほど急上昇している状況ではありません。トップクラスにあるメガベンチャー相手との勝負は難しいですが、そういうメガベンチャーとスタートアップを比較検討するハイスキル人材は少ないですし、最近のスタートアップであれば十分に戦えます。ある程度の年収を維持しつつ、自社の魅力を伝えていくことが大事だと思います。

ただ、ビジネスサイドの平均年収はそれよりも低いことも多いので、エンジニアとビジネスサイドで年収の差は出ることを前提に、社内で合意形成しておくのも重要です。

転職先への期待を聞くと8割の方が年収アップを希望しており、その水準は20〜30%以上と考える人が過半数を占めます。やはり転職をきっかけに年収アップ、キャリアアップを考える人は多いですし、同時に技術力を上げていきたい人も多い印象です。

働き方に関してですが、エンジニアの仕事は週5出社だと効率は落ちるので、リモートワークはもはや必須と考えたほうが良いです。とはいえ完全に出社したくない人ばかりではなく、最低週1程度なら許容する人が大半でした。実際、雑談によって改善提案などにつながることもあるので、週1〜2程度の出社はあった方がいい気はします。

ちなみに、Googleがリモートワークを続ける社員の給与を25%減にするという話がありますが、東京と地方の給与差が一定程度であることを考えると、地方のハイスキル人材をフルリモートで雇用するというのも面白いかもしれません。

企業フェーズごとのオファー年収を見ると、そこまで大きな差は見られないものの、大企業やメガベンチャーの給与条件はやや高い傾向にあります。弊社サービス内でのデータなので一概には言えませんが、市場感に合わせて採用していくケースは増えている印象です。