アパレル工場の生産性を上げた、スタートアップの巧みな視点【GB Tech Trend #117】

Zyodが着目したのが、インドに点在する中小規模のアパレル製造工場の稼働率です。稼働率を効率的に上げるために同社がどのようなことを実施したのかご紹介します。

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1,800万ドルの資金調達を実施した「Zyod」(Image Credit: Zyod)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

ファッションブランドの製造過程には、いまだDXの余地が大きく残されています。今回紹介するインド拠点のスタートアップ「Zyod」は、アパレルブランドの製造支援を行っています。今回、1,800万ドルの資金調達が発表されました。この資金を元手に、世界40か国以上へサービス拡大するとのことです。

Zyodが着目したのが、インドに点在する中小規模のアパレル製造工場の稼働率です。この記事によると、その数値は33%以下で、つまり1/3ほどしか工場のリソースを使い切れていないとのことです。低稼働率の原因には、顧客数の不足はもちろん挙げられるでしょうが、非効率な生産体制も大きな課題となっています。

そこでZyodは、工場の稼働率を効率的に上げるためのDXを実施しました。独自の管理システムを開発し、「どのように作るか、いつ作るか、何を作るか」など、作業工程の効率化をZyod側から支援できる体制を構築。さらに、世界中のブランドから案件を集め、提携先の工場に実務を依頼することで、盤石な生産体制を構築しました。資金調達前は小スロット対応のD2Cブランドを顧客としていましたが、今後は大手ブランドとの提携も視野に入れています。

Zyodの巧みな点は、DXを通じた3つの段階的な「バンドル化(取りまとめ)」を行い、収益性を高めている点です。

まず、インド国内工場の生産体制を、独自のシステム開発により一気通貫型に取りまとめました。大きなイノベーションというよりは、地道なオペレーション改善が求められる現場に目を向けるところから始めた具合です。次に、同じオペレーションフォーマットを採用しながら工場数を拡大し、インド国中に生産網を張り巡らせ、工場ネットワークを取りまとめました。最後に、より多くの顧客企業からの注文を取りまとめ、大量生産にも対応するようになっています。

このように現場オペレーションやリソース管理から、工場ネットワークのバンドル化に至るまで手を伸ばし、稼働率を圧倒的に上げることで収益性も向上させているのがZyodです。

このモデルは他市場でも似たような事例があります。一例に挙げられるのが、世界中のフリーランスエンジニアをバンドル化して、大手企業のアプリ開発受託を効率化させる「Gigster」です。プロジェクト管理にAIを用いて、フリーランスだけで組まれた開発チームのスケジューリングから、開発工程までの効率化を実施しています。GigsterもZyodも実働のリソースは外部に任せており、いわゆる仲人役のような立場を貫いているのが特徴です。

6月11日〜6月28日の主要ニュース

3.72億ドルの調達を発表した「Formation Bio」(Image Credit:Formation Bio)

Sam Altmanも支援する製薬企業「Formation Bio」が3億ドル超の大型調達

Open AIのSam Altman氏が支援する、製薬会社と連携してAIプラットフォームを活用し、より効率的な医薬品開発を行う企業「Formation Bio」は、シリーズDラウンドで3億7200万ドルを調達した。Andreessen Horowitzがリードを務め、Sanofi、Sequoia Capital、Thrive Capital、Emerson Collective、Lachy Groom、SV Angel Growth、FPV Venturesらもラウンドに参加した。 — 参考記事

気象分析スタートアップ「Climate X」が1,800万ドル調達

衛星データ、気象モデル、機械学習を組み合わせ、気候事象の影響を分析する「Climate X」は、GVがリードをするシリーズAラウンドで1,800万ドルを調達した・CommerzVentures、A/O、Blue Wire Capital、PT1、Unconventional Ventures、Western Technology Investmentのほか、以前の投資家であるPale Blue Dotもラウンドに参加した。— 参考記事

NATO Innovation Fundらが出資、「Isar Aerospace」が6,970万ドルを調達

小型・中型衛星を軌道に打ち上げるためのロケットを設計・製造する、ミュンヘン拠点の「Isar Aerospace」が、シリーズCラウンドで6970万ドルの資金調達を行った。投資家には、NATO Innovation Fund、G3T、10x Group、Besant Capital、Finadvice Med Holdings、LP&Eのほか、Lakestar、Earlybird、Airbus Ventures、Bayern Kapital、UVC Partnersが名を連ねた。同社は総額4億2700万ドル以上を調達している。— 参考記事

会計士支援プラットフォーム「Materia」630万ドルの資金調達

会計に関する質問に対する正確な回答の提供、文書整理、コラボレーションを促進することで、会計士の生産性を向上させる「Materia」は、Spark Capitalがリードし、Haystack、Thomson Reuters Ventures、Exponential Founders Capital、A12 Incubatorらが出資するラウンドで630万ドルの資金調達を実施した。— 参考記事

生成AIプラットフォーム「Backstroke」200万ドルを調達

B2Cブランドや小売業者向けに設計された生成AIメッセージング・プラットフォームを提供する「Backstroke」が、High AlphaとGround Game Venturesが共同でリードを務めたシードラウンドで200万ドルを調達した。— 参考記事

バーチャルペットアプリPenguを開発する「Slay」500万ドルを調達

デジタルペンギンを育てたり、ミニゲームで遊んだり、共同子育てを通じて交流したりするバーチャルペットアプリ「Pengu」を開発する、ベルリン拠点の「Slay」は、シードラウンドで500万ドルの資金調達を実施した。Accelがリードを務め、Laton VCやScooter Braunなどのエンジェルも追加出資した。— 参考記事