持続可能な社会を作るスタートアップたち(2)パッケージを効率化するshizai

ごみ・環境問題について「包装」の観点から取り組む事例を取り上げます。

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Image Credit : shizaiウェブサイトより

執筆: Universe編集部

脱炭素やダイバーシティなど、誰もが安心して暮らせる社会づくりへの取り組みはスタートアップに対しても求められるようになってきています。この連載では、ESGへの取り組みを具体的なケースとともにお伝えします。初回は取り組みの前提となる背景について整理しましたが、今回は環境問題について取り組む事例を取り上げます。

私たちが日々触れるごみ・環境問題を象徴する存在と言えば包装ではないでしょうか。2020年7月からごみ袋が有料化したことで、買い物のたびに環境問題について考えるきっかけが生まれています。実際、消費者庁の調査「消費者白書(2022年版)」によれば、10代から20代を対象にした環境問題や社会課題解決への取り組みとして9割近くが「エコバッグを使用する」と回答しています

この包装・梱包をテーマにしたスタートアップの草分け的な存在が「Lumi」です。Y Combinatorの2015年採択企業で、ブランド向けパッケージ製作プラットフォームを立ち上げました。2022年8月時点で、彼らは世界3,800ものパッケージ制作サプライヤーと連携し、700以上のブランドとの間に立って製品パッケージの制作を支援しています。2018年にはSpark Capitalがリードするラウンドで900万ドルを調達し、2021年12月に顧客体験支援のNarvarが買収(金額非公開)しました。

パッケージは当然ながら製品の副次的要素であり、使う際には「捨てられる」運命にあります。Lumiは持続可能性への取り組みを「Design、Distribution、Materials、Production、Recovery」の5カテゴリ・20項目に分類し、記載しています。

そしてこの領域で国内にてスタートアップしているのが「shizai」です。

Image Credit : Lumiのサステナビリティへの取り組みをまとめたページ
Image Credit : Lumiのサステナビリティへの取り組みをまとめたページ

モデルとしてはLumiのようなプラットフォームタイプのプレーヤーで、パッケージを製造する印刷工場や一次製造メーカーとブランドとの間に入り、サプライチェーンを効率化することで、かかるコストを平均20%軽減させるとしています。リリースから1年が経過し、サプライヤーのネットワークは500拠点以上、取引事業者は300社を超えているそうです。

同社代表取締役の鈴木暢之氏にパッケージが与える環境への影響を尋ねたところ、国連が2018年に公表している調査報告をもとに、次のように解説してくれました。

「世界で生産されたプラスチックのほとんどは、埋立地やその他自然に廃棄されています。また、現在のペースでは、2050年までに120億トンものプラスチックごみが世界に捨てられることになります。

プラスチックは化石燃料から作られており、現状のペースで生産が拡大し続けると2050年には世界の石油消費量の20%をプラスチック業界が占めると予想されています。加えて2015年の調査ですが、そのプラスチックのうち1/3以上がパッケージのために製造されており、プラスチックごみの47%がパッケージによるものというデータもあるんです」。

パッケージを再生可能な資材で制作しようというアプローチは「noissue」というニュージーランド発のスタートアップが取り組んでおり、昨年にはシリーズAラウンドで1,000万ドルの資金調達に成功するなど、一定の評価を獲得しています。

shizaiも同様に環境への取り組みを実施しています。

例えばパッケージ素材に使う印刷のインキを植物由来のものにすることで二酸化炭素の排出量を抑えたり、パッケージサイズを最適化することで資材の量を減らすといったオプションの提案です。

こういった持続可能な社会に向けての取り組みをスタートアップとしてどのように開示していくのかも気になるところです。

「現時点では素材の変更や省資源化、認証された製造法、NPO連携等の取り組みを実施しています。具体的にはプラカップを紙カップへ変更したり、認証された製造法を示すFSCマークを取得可能な製法でのパッケージ提供、といった具合です。

確かに長期的には脱プラ等のソリューションが必要ですが、コストや利便性の面で需要サイドの変容も重要です。環境課題への意識は高まっているものの、既存アイテムと比較して環境負荷の低い素材はコスト高になるシーンも多いのが実情です。

まだまだ立ち上がったばかりのスタートアップなので、こういった取り組みへの情報発信にまで手が回らないというのが本音ではありますが、啓発にとどまらず、極力具体的な事例をもって情報提供していきたいですし、shizaiと取引する企業の環境課題への取り組み姿勢とともに発信できればと考えています」