Securitize上場の舞台裏──グローバル・ブレインが振り返る、これまでの軌跡と「Go Global」への決意

日本時間の2026年7月2日にニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場を果たした、現実資産のトークン化プラットフォームを提供するSecuritize。同社が創業して間もない2018年から伴走してきたグローバル・ブレイン代表取締役社長の百合本と、担当キャピタリストの一宮に、最初の出会いから上場に至るまでの軌跡について話を聞きました。

Securitize上場の舞台裏──グローバル・ブレインが振り返る、これまでの軌跡と「Go Global」への決意のカバー画像

【Summary】

  • スタートアップが異国の市場を開拓するには、現地企業の巻き込みが不可欠。
  • 時には現地で実績のある企業を傘下に収めるなど、大胆な戦略も有効となる。
  • 経営方針を明かしあえるほどに信頼を築けるVCと歩むことが重要。

現実資産のトークン化プラットフォームを提供する米国のスタートアップ、Securitize(セキュリタイズ)。同社は日本時間の2026年7月2日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場を果たしました。

The Securitize team rings the @NYSE Closing Bell.

That's how you Tokenize the World.

国内最大級の独立系VCであるグローバル・ブレイン(GB)では、同社が創業して間もない2018年から継続的な出資を実行。GBが運営していたジョイントベンチャー(JV)を同社に事業統合し、日本市場進出を後押しするなど、資金援助にとどまらない支援で同社に伴走してきました。

Securitizeはいかにして上場を達成したのか。そこにGBはどのように関わってきたのか。2018年の初回投資から8年間にわたりSecuritizeへ伴走してきたGB代表取締役社長の百合本 安彦と、GBの米国拠点(サンフランシスコ)から現地で同社を直接支援してきたキャピタリストの一宮 翔平にこれまでの軌跡を振り返ってもらいました。

百合本 安彦、Securitize CEOのカルロス・ドミンゴ氏、一宮 翔平
左から、百合本 安彦、Securitize CEOのカルロス・ドミンゴ氏、一宮 翔平(NYSEにて)

「人格者」なCEOとのニューヨークでの出会い

──SecuritizeのNYSEへの上場、おめでとうございます。まずは、同社との最初の出会いについて教えてください。

一宮:Securitizeとの出会いは2018年にさかのぼります。ニューヨークのカンファレンスにて、知人経由でSecuritizeのCEOであるカルロス・ドミンゴ氏をご紹介いただきました。当時のSecuritizeは2017年に米国で創業したばかりでしたが、すでに一定の利用実績が出始めていたことが印象的で、そのビジョンにも魅力を感じました。

当時は、暗号資産そのものの投機的な側面ばかりが注目を集めていた状況です。その中にあってカルロス氏は違う未来を見ており、法令遵守をした上で、あらゆる資産を取引するインフラがブロックチェーン技術によって変化していくビジョンを描いていたんですよね。

いまもまだブロックチェーン市場は発展途上と考えていますが、当時はさらに黎明期でした。そのような市場環境でも、ビジョンへ共感してくれるお客様やパートナーを早期に集めており、エグゼキューション能力の高さを感じたことを覚えています。

百合本:私も初めてSecuritizeの構想を伺った際、高いポテンシャルを感じました。またカルロス氏は非常に人格者で、成長意欲もすごく高い方です。事業内容はもちろんですが、CEOであるカルロス氏の魅力にも惹かれ、GBとしてバックアップすることを決めました。その後、2018年11月にGB6号ファンドを通じて出資を実行します。このラウンドは、Blockchain Capital、Coinbase Venturesなど、Web3領域を世界的に牽引する名だたる海外トップTier投資家との共同出資でした。

日本のCVCとの連携によるSecuritizeの成長

──出資後のSecuritizeとGBの関わり方について教えてください。

百合本:私たちは特にSecuritizeの日本市場進出に対して深く支援してきました。Securitizeの技術力やエグゼキューション力は圧倒的でしたが、彼らが単独で日本に進出して人材を採用したり、行政手続きを行ったりするのは至難の業です。日本の商習慣の複雑さも大きなハードルになります。

そこでGBでは、私たちの強みの1つである国内大企業との強固なネットワークや、事業開発のノウハウをもとにSecuritizeを支援していくことにしました。

──具体的にはどのようなアプローチを取られたのですか。

百合本:まずは国内大企業とGBが共同で設立した各CVCとの連携です。2019年には三井不動産と設立した31VENTURESファンドと、KDDIと設立したKOIF3号ファンドから出資を実施。さらに、2020年にはソニーフィナンシャルベンチャーズと設立したSFV・GBファンドからも追加で出資を行いました。Securitizeにとって日本市場は大きなマーケットでしたから、日本の大企業とのパートナーシップ強化は私たちが特に価値を発揮できる場と考え、積極的に支援した形です。

百合本とカルロス氏
百合本とカルロス氏(左:2019年、右:2026年)

一宮:日本の大企業との連携においては、法規制や商習慣の違いなどから苦労した面も少なくありませんでした。しかし、Securitizeは着実に大企業を中心とした国内のマーケット開拓を進め、いまではKDDIソニー銀行、三井住友信託銀行などとの取り組みが外から見える形になってきています。

百合本:いまでこそ輝かしい成長を遂げているSecuritizeも、当然ずっと順風満帆ではありませんでした。そんなとき、GBの米国拠点で担当キャピタリストとして丁寧にサポートをし続けてくれたのが一宮さんです。彼はどんなときも諦めないんです。投資先企業が大変な状態になっても密にコミュニケーションをとって、起業家をサポートできる。彼はGBの中でも担当した投資先企業のExit率が高いキャピタリストなんですが、そうした起業家とのコミュニケーションの綿密さが実績にも表れていると思います。

日本市場進出を加速させた、GB独自の支援

百合本:もう1つ、Securitizeの支援に関しては独自の取り組みをしています。実はSecuritizeへの投資とほぼ同時期に、私たちは日本でブロックチェーンの社会実装を進めるエコシステムづくりを並行して行っていました。その中で2018年の秋に、オンライン決済ソリューションのパイオニア企業であるOmise(現OPN Holdings株式会社)の創業者の長谷川 潤氏とともに、JVとして設立したのが株式会社BUIDL(ビドル)です。

当時、日本でもブロックチェーンへの関心は急速に高まっていましたが、大企業の方々からは「実際のビジネスのどこに適用すればいいのか」「誰と連携して進めればいいのか分からない」というご相談を多く受けていました。優れた技術と、実際のマーケットニーズの間に大きなギャップがあったわけです。その隔たりを埋め、日本企業がブロックチェーンのメリットを享受できるエコシステムを作るために立ち上げたのがBUIDLでした。

一宮:BUIDLは国内外の企業のブロックチェーン事業参入を支援する目的で立ち上がった企業です。実際に、BUIDLは設立からわずか1年で、東京海上日動や関西電力などの大企業とともに、15件ものコンサルティングや実証実験などのプロジェクトを開始し、業界を牽引する存在に成長していました。そしてこのBUIDLは、Securitizeと資本業務提携を行い、同社の傘下に入ることになります。

──なぜSecuritizeはBUIDLとの統合を選んだのでしょうか?

一宮 :当時のカルロス氏は「日本は世界3位(2018年当時)の経済大国であり、ブロックチェーン技術に対するアーリーアダプターでもある。さらにデジタル証券の規制環境も整いつつある」と、日本への本格展開を特に重視していました。Securitizeとしても、また彼らを支えるGBとしても世界の金融ハブの1つである日本は重要な市場だったというのが大きな理由です。

百合本 :先ほどもお話しした通り、海外のスタートアップが単独で日本市場を開拓するのは容易ではありません。すでに国内のブロックチェーン領域で大企業との顧客基盤を築き、プレゼンスを発揮していたBUIDLがSecuritizeのパートナーとして適切なのではと判断しました。

──VCが自社で立ち上げたJVを投資先企業の傘下に入れるというのは、あまり見られない取り組みですね。

百合本:はい、画期的な支援方法だったと思います。

BUIDLはGBの事業でしたから、当然誰彼構わず売却することはできません。同時に、ファンドの投資家(LP)の皆様に対する受託者責任を果たすべく、厳格なガバナンス手続きと利益相反管理を徹底し、本統合が投資家利益に資することを確認した上での決定でもありました。

こうした重大な意思決定に踏み切れたのは、やはりカルロス氏との強い信頼関係があったからこそです。BUIDLがSecuritizeの日本販売代理店になるというライトな連携の仕方も考えられたのですが、そうではなく、統合という1番深い連携のあり方を選択できたのも強い信頼関係を結べていたからこそです。

この統合にあたり、カルロス氏とは互いの経営方針などを密に話し合いましたが、お互いの意見がまるで阿吽の呼吸のように合致しました。それもあって、こうした大きな意思決定であっても統合自体は比較的スムーズに進みましたね。

その後、Securitizeの日本における経理担当や営業担当、エンジニアなどの採用活動はGBが支援しました。採用以外にも、CVCやメガバンクとの連携でも伴走支援してきたことをよく覚えています。

一宮:統合が行われたのち、BUIDLは2020年4月に社名を「Securitize Japan株式会社」へと変更しました。Securitizeにとって日本市場がいかに重要であるかというコミットメントが明確になり、日本でのマーケット開拓を一気に加速していくことになります。統合の効果は予想以上でしたね。

長谷川 潤氏、カルロス・ドミンゴ氏、百合本 安彦
左から、長谷川 潤氏、カルロス・ドミンゴ氏、百合本 安彦(GBAF2019にて)

カルロス氏と喜びを分かち合った日

──Securitizeに伴走する中で特に印象的だったことや、喜びを感じたエピソードがあれば教えてください。

百合本:よく覚えているのは、2019年にカルロス氏がGBの年次カンファレンスである「Global Brain Alliance Forum(GBAF)に登壇し、BUIDLとの統合を発表したときのことです。当時のSecuritizeはまだ大きく成長する前の段階で、来場者である大企業の方々に向けた最初のお披露目という感じでした。まさにGB・BUIDLとSecuritizeがこれからともに頑張っていくことを公にした象徴的な出来事だったと思っています。カルロス氏も日本語でスピーチをしてくださったので、いかに日本市場に本気で臨もうとしているかが来場者にもよく伝わったはずです。

一宮:私が特に印象的だったのは、2024年に資産運用会社大手のBlackRockとSecuritizeの連携が実現したときです。この提携により、BlackRockはSecuritizeのプラットフォームを利用したトークン化専用ファンドを設立しました。これはつまり、伝統的金融機関がSecuritizeのプラットフォームに対して次世代の金融インフラとしての可能性が十分あると認め、現実資産のトークン化を一気に押し進めたことを意味します。Securitizeがインフレクション・ポイント(成長の転換点)を迎えたことを受け、カルロス氏とともに喜びを分かち合いました

百合本:ちなみにそのトークン化専用ファンドの名前は「BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund」で、略称は「BUIDL」です。ブロックチェーンの大きな転換点となったファンドにBUIDLの名前が息づいているのは、とても感慨深いものがあります。

一宮:現地時間の7月6日にNYSEへの上場記念セレモニーに参加させていただきましたが、非常に感動的でしたね。スタートアップが世界規模の壁を打ち破り、歴史に名を刻むプロセスに立ち会えたことは、担当キャピタリストとして最大の喜びだと感じます。

百合本 安彦、カルロス・ドミンゴ氏、一宮 翔平
左から、百合本 安彦、カルロス・ドミンゴ氏、一宮 翔平

「Go Global」を推し進める理由

──最後に、Securitizeの上場を踏まえて、GBの今後の展望をお聞かせください。

一宮:SecuritizeのNYSEへの上場という、これ以上ない形でのExitに立ち会えたことを心から誇りに思います。これからもキャピタリストとして、Securitizeのような会社、カルロス氏のような起業家に伴走できればと考えています。

百合本:私たちは単にリスクマネーを提供するだけの存在ではありません。日本と世界のスタートアップエコシステムをつなぐ架け橋となることを目指しています。

今回のSecuritizeのように、海外の成長企業が日本に進出する際に徹底的に支援すること。また、日本のスタートアップと海外の成長企業を出会わせ、お互いの強みを生かしながらグローバルに展開していくこと。こうした「Go Global(グローバルに活躍するスタートアップの創出)の取り組みをますます強化していく予定です。

そのための重要な基盤となるのが、今年3月に発表した世界最大級のアクセラレーター「Techstars」との戦略的提携です。

このパートナーシップにより、Techstarsのポートフォリオ企業で、特に日本進出を考えるスタートアップはGBの大企業ネットワークや事業開発支援を活用することができます。また、日本の起業家には、Techstarsが保有する高成長なグローバルスタートアップへの独自アクセスを提供していく予定です。

GBがここまで日本と世界をつなぐことに注力するのは、海外進出に苦戦する日本のスタートアップや日本進出に苦戦する海外のスタートアップを数多く見てきたからです。日本と世界のスタートアップエコシステムをつなぐ架け橋になることにはもちろん大変さもありますが、それでグローバルに活躍するスタートアップを1社でも多く創出することができるのであれば「お安い御用」だと思っています。

これからもGBでは「グローバルに活躍するスタートアップの創出」という目標を掲げ、世界を変える起業家たちに伴走しながら、チーム一丸となって励んでまいります。

※所属、役職名、数値などは記事掲載時のものです。
(編集:GB Brand Communication Team)

コラボレーター

百合本 安彦のプロフィール画像

百合本 安彦

グローバル・ブレイン株式会社

代表取締役社長

富士銀行(現みずほ銀行)、シティバンク・エヌ・エイ企画担当バイスプレジデントを経てグローバル・ブレイン株式会社を設立し、代表取締役社長に就任、現在に至る。 自ら起業し、ネットバブル、リーマンショックを乗り越え、日本を代表するVCに育ててきた経営者としての経験を活かし、スタートアップ経営者の良きアドバイザーになっている。

一宮 翔平のプロフィール画像

一宮 翔平

グローバル・ブレイン株式会社

Investment Group Partner

2017年にGB参画。サンフランシスコ拠点からグローバルのFin Techおよび暗号資産領域等の投資を担当。