【連載】メタバース・ビジネス / 仮想空間で稼ぐ人と企業たち(Mirrativ、Synamon)
メタバースのビジネスはクリエイターや大企業にも広がり始めています。

執筆: Universe編集部
メタバースにおけるビジネスで最も分かりやすいケース、それがゲームではないだろうか。アプリストア、スマートフォンインフラは誰のものかという独占にまつわる問題で、AppleやGoogleと派手にやり合ったのが人気のメタバース・ゲーム「Fortnite」
売上の多くはスキン——つまり、メタバース内での「個性」
メタバースにおける個性やつながりに対する欲求にはこれだけの市場性があるーー。それを証明したのがFortniteやRobloxだろう。そしてその形はただ、単にアイテムを消費して個性を表現するだけでなく、表現やゲームプレイによって配信者が「稼げる」
これを国内で今、実現しようとしているのがミラティブだ。
拡大するクリエイターエコノミー
ミラティブが提供するスマホゲーム配信「Mirrativ」
ディー・エヌ・エーのプロジェクトとして公開され、その後、2018年の簡易吸収分割の方式で独立。グロービスキャピタルパートナーズ(GCP)
その彼らが先ごろゲームとライブ配信を融合させた「ライブゲーミング」
ではこのライブゲーミングとは何か。これを理解する上で必要なキーワード、それが「クリエイターエコノミー」
ゲームのデジタルアイテムをユーザーが作り、さらにそれを還元させるモデルの草分けとして有名なのがRobloxだ。2013年頃から開始した「Developer Exchange」
また国内でもVR Chatのアバターを制作するクリエイターがPixiv FANBOXなどのマーケットプレイスで販売をするなど、その範囲はゲーム内から外に広がりつつあるし、さらにここ1、2年のNFTに関する盛り上がりを受け、Axie Infinityに代表される「Play to earn」
これまでTwitchなどのゲーム配信で稼げるユーザーは一部のタレントなど一握りだった。クリエイターエコノミーやPlay to earnといった動きはその裾野を大きく広げたことで、このムーブメントを一気に世界的なものにしたと言われている。そして今回のMirrativが力を入れるライブゲーミングもまた、独自のクリエイターエコノミーの世界観で大きく羽ばたこうとしているのだ。
ライブゲーミングに感じる初期スマホゲーム市場の立ち上がり
ライブゲーミングの立ち上がりは黎明期のスマホゲーム市場を彷彿とさせる(プレスリリースより)
「モバゲーがどんと盛り上がった当時はエンジニアが1人に企画が1人のような、小さなチームで月商1億円ぐらいを狙えるという期待値があり、いろんな産業からどんどん人が流れ込んできて、あっという間にゼロから1兆円産業に成長する、そんな地殻変動を間近で見ていた」
一方のライブゲーミングは開発が軽い。エモモバトルドロップは10名足らずの開発チームで仕上げた。このヒットの裏側にあるのが「全員が参加できる仕組み」
まず、エモモバトルドロップでは配信者がつながっているユーザーとチームを組み、バトルロワイヤル方式で生き残りをかけてチーム戦を戦いぬく。これだけでも離れた友人たちとオンラインで遊ぶ楽しさがあるが、ここにライブゲーミングは視聴者を巻き込む仕組みを提供している。これまでもMirrativでは実況中継や「ざつだん」
あるチームが負けそうになった時、それを応援するアイテムをギフトとして送って逆転ができる、そういった「ゲームに埋め込まれた」
ライブゲーミングイメージ(プレスリリースより)
視聴者と配信者が一体となって楽しんだ結果、これらのギフトの売上の一部は配信者の手元に還元(※手数料率は非公開)
ミラティブでは今後、この市場を牽引すべく、協力して開発に挑むエンジニアやクリエイター、開発会社を募るという。
「最終的にはミラティブがAPI、SDKを提供して誰もが参加できるオープンプラットフォームにしたいと考えています。その前段階として現在はいろんなゲームを一緒に作りましょう、ということをやっています。いろんなことを試したいので私たちから開発費をサポートさせてもらい、うまくいったらレベニューシェアするようなモデルを提案させてもらっている。かつてソーシャルゲームも早く参入した人が学びを得て飛び立っていきました。また、既存のゲームをライブゲームっぽくすることも可能です。いくつかのパターンで最終的に『これぞライブゲーム!』
現実世界を拡張する企業たち
イベントやマーケティング、そしてゲームと国内でメタバースビジネスに取り組む事例を取り上げてきた。最後は仮想世界におけるエンタープライズ・ソリューションの話題だ。
元々、メタバースはリアルでは難しい問題、特に遠距離や危険な場所を避けることのできる技術としても発展してきた経緯がある。例えば米ウォルマートでは100万人という規模の社員研修にVRを活用しており、移動コストや時間の効率化に貢献している。
この中にあってやはりNvidiaが昨年から打ち出している「Omniverse」
同時にこれらの処理にはものすごい力の演算能力が必要になる。Meta(旧・Facebook)
時空を超えたビジネス
「現在、メタバースに対する関心がマーケティングやブランディング、特に若いZ世代やミレニアル世代の方々へのひとつのチャンネルとして興味を持つ企業さまが増えてきていて、お問い合わせが増えている状況です。ただ、やはり何から手をつけたらよいか分からないということで、空間構築から企画までお手伝いしている感じですね」
例えば感染症拡大によって非接触を余儀なくされた大型展示会では、その会場をバーチャルに移動させる動きが目立つ。国内で2020年に開催された最先端映像の見本市「INTER BEE IGNITION」
SYNAMON、三井住友海上と「VR事故車損害調査研修」
ウォルマートのケースで出てきたような企業研修も事例が積み上がっている。同社が三井住友海上と共同開発している「VR事故車損害調査研修」
このように、イベントや研修などを中心にエンタープライズにおけるメタバース活用が広がっているのだが、ここでポイントになるのが「仮想空間における操作や体験」
Synamonではこれまでこういったビジネス向けのソリューションとして共通基盤となる「NEUTRANS」
こうした経験は開発費に跳ね返る。特にスクラッチで一から開発する場合、企画から開発まで全てをゼロベースで進行することになる。同社の開発費は平均的に1,000万円以上の予算のものがほとんどというが、中には競合の見積で10倍ほどの差がついた例もあるという話だった。基本的なUIまで全て開発するとコストに反映されるのは当然で、このあたりが同社の競合優位性につながっている。
今回、メタバースの国内におけるビジネス事例を探ってきた。仮想空間ビジネスは、デジタルアイテムを経済に引き込むブロックチェーン技術、特にNFTの登場で加熱気味だ。一方、この市場はここ1、2年で立ち上がったものでないことも明白である。
新しい世代への対応やクリエイター経済、ビジネスにおける効率化など、仮想空間の活用にはどのような背景や課題があり、それをどういったソリューションで解決させようとしているのか、この辺りを整理すると複雑なメタバースが少しずつ見えてくるようになるかもしれない。