幅広い産官学連携と事業化支援、グローバル・ブレインのライフサイエンス投資

COVID-19の発生により、これまでになく関心度が高まったのがライフサイエンスの領域です。

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写真左から、阪川、守口、西山、百合本。

執筆: Universe編集部 共同執筆: ライフサイエンスチーム

COVID-19の発生により、これまでになく関心度が高まったのがライフサイエンスの領域です。グローバル・ブレイン(以下、GB)でも昨年、キリンホールディングス(以下、キリンHD)と共同で50億円のファンド「KIRIN HEALTH INNOVATION FUND」を設立し、サンフランシスコを拠点に、アレルギー治療薬の実用化を目指すSiolta Therapeutics(シオルタ・セラピューティクス)に出資するなど活動を積極化させています。

高度に専門的な知識を要する領域のため、GBでも研究者を中心にライフサイエンスの専門チームを組成してこの挑戦に取り組んでいます。本稿ではそのチームを紹介しつつ、ライフサイエンス領域の課題と可能性を紐解いてみたいと思います。

ライフサイエンスチーム紹介

守口 毅: 薬学大学院卒。事業会社でバイオマーカー探索、オミクス研究など基礎研究に従事。その後外資コンサルにて製薬企業への経営戦略策定支援やM&A支援を経てGB参画。創薬、機器、デジタルヘルス等の技術ベンチャー全般をリード。

阪川 洋一: 獣医学大学院卒。医療機器メーカーの研究開発で非臨床試験や新規探索・開発、コーポレートマネージメント、事業部でプロジェクトマネージメント支援や戦略立案、事業開発に従事した後、GBに参画。

西山 友加里: 事業会社でバイオセンサー開発・バイオマーカー探索等の研究開発業務に従事。戦略コンサルで経営戦略・事業戦略策定支援や実行支援等に従事した後、GBに参画。

2020年はライフサイエンスが躍進した年に

バイオ・創薬は各国が重点投資分野に掲げる社会/経済の発展に向けて重要インフラの一つです。日本でもバイオ戦略、健康・医療戦略などが策定されて医療産業の発展を促進する一方で、ガン、神経疾患などアンメットニーズが大きい領域が依然として存在するために、常に重要な投資領域の一つとなっています。

また、COVID-19が猛威を振る中で診断や治療の重要性が再認識され、ライフサイエンス企業が今まで以上に注目されるようになりました。創薬/医療機器の投資額は前年比150%に近づく(Pitchbook調べ)など2020年はグローバル規模でライフサイエンスがトレンドの一つとなった感があります。

私たちのチームでもこれまでに国内ではUTECとの共同案件である五稜化薬やBugworksなどに出資しており、また、グローバルでも積極的に投資し海外企業を日本に誘致する黒船モデルでの医療の質の底上げも推進しています。

例えばキリンHDとのヘルスサイエンス領域に特化したCVCを設立していますが、このファンドを通じて出資した「Siolta Therapeutics」(Khosla Venturesとのシンジゲート案件)の事例や、AtomicoやIntel Capitalなどが出資するHealxなど大手VCと連携したソーシングや投資実績も積み上がってきています。

このように日本だけでなく世界中のスタートアップの投資・育成を通じて、新しい健康増進や医療の事業立ち上げを実施しています。

成長を阻害する要因

一方、ライフサイエンス企業が研究開発するテーマは時間のかかるものが多く、メディアアプリを作るように短期に製品化できるものではありません。しばらく赤字経営が続くケースも多いため市場に受け入れられにくく、上場後も株価が不安定となり、日本の投資家から敬遠されがち、という側面は確かにありました。

そのため、日本のライフサイエンス企業の上場要件も近年緩和されてきつつありますが、依然として開発フェーズ、提携の有無、黒字化へのプレッシャーは存在し、上場までにしっかりと基盤を固める必要があります。しかし研究開発型ベンチャーに対する国内資金はまだまだ十分ではなく、未上場で十分な資金調達を達成するにはハードルがあります。また人材の流動化もまだまだ限定的です。

このような環境は、優れた技術力を持つ日本のライフサイエンスベンチャーの阻害要因としてやはり大きいと感じています。ちなみにUSなどの海外では赤字上場でも上場後の株価上昇率が高いという傾向がわかっているので、上場を「成長に向けた資金調達の場」と捉えて歓迎している、という違いもあります。

オールGBでの支援体制

世界的なライフサイエンスへの注目が高まる中、日本でもこの領域をより強固なものにしたい。一方でライフサイエンスの企業はやはり研究開発が中心のチームになるため、例えばビジネス側面の成長戦略やガバナンス支援などについては支援が必要な場合があります。

そこでGBとしては資金提供だけなく、人材に関するサポートも強化しています。具体的には戦略コンサル出身者のValue Up Teamによる戦略策定・成長支援やBizDevチームによる海外展開/日本展開、大企業各社とのコネクションによるBD支援、GB-HRでの人材紹介、知財チームによる特許戦略・知財戦略、法務チームによるガバナンス戦略などをメニューとして用意しました。

研究者出身のキャピタリストが架け橋となり、このような支援を必要なタイミングで提供したいと考えております。

また、具体的な名前は開示できませんが、ある投資先の日本進出に向けて大手企業とのパートナーリング活動を徹底支援中です。医療機器、製薬会社、大学/研究機関などと協議しており、日本独特の商習慣や薬事規制を考慮してどうすれば最も最短かつ効果的に日本展開できるかを鋭意サポ―トしております。支援前は日本進出への道筋が見えない中、私たちと連携できたことで、驚くようなスピード感で情報が入ってくるとご評価をいただいています。

バイオ、創薬、機器など『研究者 x コンサル/海外MBA』というバックグラウンドで国際ビジネス感覚のある最強のキャピタリストチームができたと自負しております。また、慶應義塾大学の岡野教授を筆頭に、欧米アジアの専門家/シリアルアントレプレナーなど強力なメンバーをアドバイザーにお願いしています。今後も領域拡大に伴ってアドバイザーを拡充していく予定ですが、GBで完結する話ではありませんので、社外専門家と連携しながら我々も日々学ぶ姿勢を忘れないよう取り組んでまいります。
— 代表 百合本 安彦

ライフサイエンス支援には大学や行政、製薬企業、医療機器メーカーなど幅広い産官学連携が必要です。GBとして手厚い後方支援を準備しつつ、核酸医薬、細胞医療、マイクロバイオームなどのアドバンスドセラピー、デジタルヘルス、創薬バリューチェーンDX、Femtech、SaMD(Service as Medical Device)など潜在市場が大きな領域にも積極的に投資する計画です。

独立系VCの新しい挑戦に注目いただければ幸いです。