グローバル・ブレインがSDGsと社会貢献に取り組むワケ––持続可能な社会と企業成長の両立のために(2/2)

ベンチャーキャピタルがSDGsの達成や社会貢献を目指すとどうなるのでしょうか。先日開催した社内ワークショップの様子を紹介させていただきます。

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ベンチャーキャピタルであるグローバル・ブレイン(以下、GB)がSDGsの達成や社会貢献を目指すとどうなるのでしょうか。その活動の方向性を語るために、先日開催した社内ワークショップの様子を紹介させていただきます。

今回ご講演いただいたのは、若者による社会変革を応援するソーシャルメディア「オルタナS」池田編集長です。池田編集長の講演内容を元に、企業の社会貢献やSDGsの取り組みの潮流・将来について本記事でお伝えします。

ご略歴 池田 真隆氏:株式会社オルタナ取締役 オルタナS編集長。1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省による社会起業家支援事業「TJラボ」の立ち上げに関わる。日本財団学生ボランティアセンター主催PR力コンテスト「v-1」審査委員、社会福祉HERO’S TOKYO 2019最終審査委員など。 担当した編集書籍に日本経済新聞社から初となるSDGsをテーマにした就活本「就活ネクスト未来を変える会社2020年度版」など。

企業がSDGsに取り組むべき理由

そもそもの企業における社会貢献活動は主にCSR(Corporate Social Responsibility / 企業の社会的責任)として位置付けられてきました。最近では国連の提唱するSDGsとも結びつけられているケースも多いですが、その違いは何でしょうか。

まず、企業のCSRの歴史は古く、1920年頃に遡ります。経営管理の哲学を提唱したオリバー・シェルドン氏によりCSRの概念が生まれ、公害や労働など問題を抱えることもある企業が社会とどう向き合うべきなのか、というコンプライアンス遵守、企業活動の「ガバナンス(企業統治)」強化の一環として広がっていきました。これらはネガティブ・インパクトの最小化が目的です。また、社会貢献活動やフィランソロピーなどのポジティブ・インパクトの最大化を目的とした企業活動も行われてきました。

しかし、現在では深刻化する社会課題の解決や企業の社会責任はますます重要になり、金融庁と東証の定める「コーポレート・ガバナンス・コード」に社会・環境問題に関する持続的な活動が盛り込まれるなど、多くの企業が対応が求められるようになっています。

そこで、これからの企業のCSRは、企業価値創造を目的としたサプライチェーンを含むリスクマネジメントや行動規範などのコンプライアンス遵守の拡大や、価値創造型CSRあるいはCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)と呼ばれる経営手法が注目されています。

さて、企業への社会要請から広まったのがCSRであるのに対して、産業革命以降急激に活発化した人間活動によりリスクが増した地球環境の持続可能性のために、国際目標として生まれたのがSDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)です。SDGsは2001年に策定されたMDGs(ミレニアム開発目標)の後継として2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」における2016年から2030年までの国際目標であり、17の目標と169のターゲットで構成されています。

それでは、企業は具体的にどのようにCSRやSDGsに取り掛かればよいでしょうか。近年注目を集めているのは、先ほどの価値創造型CSRに位置付けられている「アウトサイド・イン(社会課題の解決を起点にしたビジネス創出)」と呼ばれるアプローチです。つまり、今までの顧客ニーズからのマーケットインや技術シーズからのプロダクトアウト型の開発ではなく、視座をあげて社会課題やニーズから新規ビジネスを作る、という開発手法です。

では、例えば環境問題に対して企業がアウトサイド・イン・アプローチを取り入れるとどのようになるのでしょうか。

近年、海をはじめとする自然環境にプラスチックが悪影響を及ぼすというニュースをしばしば目にするようになりました。私たちの身近でもゴミ袋の有料化や、ストローが再生利用可能な素材に変化するなど、社会的課題としてプラスチックの利用方法が急速に見直されています。

例えば、この領域でも先導的な活動をしているユニリーバは、2025年までにプラスチックパッケージを100%再利用可能・リサイクル可能・堆肥化可能にすることなどを含んだ「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を宣言しています。

アウトサイド・イン・アプローチを通じて、パッケージ原材料を持続可能なものに切り替えるための新たな素材開発やより環境にやさしい製造工程、販売網が構築されるなど、社会課題解決そのものが新規ビジネスに繋がる可能性があります。

未来のために現在を見直すことで、社会的課題の解決に取り組むとともに新たなビジネスの創造や発展に貢献していく・・・こうした姿勢が「未来の顧客」に対する新しい商品・サービスの提供を可能にし、結果的に企業の持続的な成長に結びつくのではないでしょうか。

最後に、金融の世界でもESG投資の普及が進んでいます。ESG投資とは、財務指標に偏らず、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を考慮した投資活動を指し、投資先である企業に対してより一層社会との対話を求める取り組みです。国内外で浸透に向けた官民の活動が加速しています。

ここまでオルタナS池田編集長のご講演を参考に、SDGsやCSR・企業の社会貢献についてまとめてきました。事業開発に取り組む大企業やスタートアップの皆さんも、未来のために現在を見直すことで、社会的課題の解決に取り組むとともに新たなビジネスの創造や発展に貢献していくことができるかもしれません。こうした姿勢を取り入れることで未来の顧客や将来世代に対する新しい商品・サービスの提供が可能となり、結果的に企業の持続的な成長や社会的インパクトにも結びつくのではないでしょうか。

GBが取り組むSDGs達成と社会貢献の考え方

最後にGBの具体的な活動内容についてご紹介します。

ベンチャーキャピタルであるGBは、起業家支援とイノベーション促進を通して、社会課題の解決と社会の発展に貢献できるよう努めてきました。

例えば、先日ご紹介したソーシャルスタートアップであるヘラルボニーとの協業では、主催イベントでの情報発信、同社の事業拡大に向けた大企業ネットワークのご紹介、GB主催のヘラルボニ―作品展示会開催等を通じて、ご支援に努めてきました。

そしてこの度、新たに「SDGs・社会貢献方針」を策定し、下記3つのテーマに関する活動を通して、SDGsの達成と社会の持続可能な成長に貢献していくことを目指していきます。

  1. 社会福祉・コミュニティ支援:地域や世界が抱える問題を当事者として直視し、社会課題の解決とコミュニティの繁栄に繋がる活動を推進します。
  2. 次世代育成:多様性のある将来を切り開くために、次世代を担う青少年たちのスタートアップマインド育成と成長に貢献する活動を推進します。
  3. 地球環境保全:持続可能な社会実現のため、事業活動と経済活動の両立を目指し、自然環境や生物多様性の保全を支援する活動を推進します。

GBは投資家、金融エコシステムの一部という立場を活かしつつ、SDGsの視点で社会課題の解決・発展に寄与する活動を推進しています。最近では、活動を推進する社内チームも発足させ、より一層効果的に活動できるよう日々取り組んでいます。

今後は、オープンイノベーションを通じたソーシャルスタートアップ支援、次世代育成プロジェクト、環境関連の社内活動、SDGsに関わる情報発信や啓蒙活動を予定しています。こうした様々な活動を通して持続可能な社会と企業の成長の両立を目指し、一歩一歩着実に前進していきたいと思っています。

今後も引き続き、具体的な活動をお伝えしていきますので、ご覧いただければ幸いです。