期待のシードスタートアップが登壇!GBAF 2023「XLIMIT Showcase」レポート
グローバル・ブレインのアクセラレータプログラムに採択された5社がピッチを行いました。

執筆: Universe編集部
2023年12月1日に開催したグローバル・ブレイン(GB)の年次カンファレンス「Global Brain Alliance Forum 2023(GBAF 2023)」では、GBによるアクセラレータプログラム「XLIMIT」に採択された5社によるピッチイベント「XLIMIT Showcase」が行われました。今回はその模様をお届けします。
【grow&partners】「子供を預ける」をとにかく楽しく

grow&partnersは「社会をすべて子供の学びの園庭にする」をミッションに、親子の笑顔を作る体験型保育サービスを提供しているスタートアップです。
子供を持つ保護者の多くは家事や育児に追われ「自由な時間」が不足しています。この問題に対処するため、grow&partnersはLINEを活用して1分で子供の預け先を見つけられるマッチングサービス「あすいく」を立ち上げました。
このサービスを展開するなかで大きな課題が浮かび上がります。それは母親たちが感じる「罪悪感」。7割以上の母親が「美味しいものを食べたい」「髪を切りたい」という個人的な理由で子供を預けることに、罪悪感を抱いているといいます。
そこでgrow&partnersは、子供を預ける行為を徹底的に楽しくする新事業を立ち上げました。JR東日本と提携したプログラム「駅いく」では、子供たちは3時間程度の一時預かりの時間の中で、保育士同伴のもと駅で新幹線や在来線を見学したり、駅員に質問したりまなびや成長につながる、わくわくするような体験ができます。また、月面探査車を子供たちが操作し、サイエンスに触れられるプログラム「月いく」も展開しています。新事業への保護者の満足度は高く「出産後夫婦で初めて2人でランチを楽しめた」という声も寄せられているそうです。
grow&partnersの事業は保護者からのサービス料で収益をあげるビジネスモデルですが、子供を預かっている間の保護者にサービス利用を促すことで、ARPUの上昇も見込んでいます。代表取締役の幸脇氏によると、将来的にはサブスク会員制に移行して収益性を上げていく想定とのことです。
幸脇氏は「“子供を預ける”という行為を楽しいものに変え、子供と親の両方が充実する社会を築きたい。そうした熱意のある企業の方とはぜひお話をできれば」とGBAFの来場者に呼びかけました。
【LX DESIGN】誰もが諦めかけていた学校改革に取り組む

LX DESIGNは、学校教育から1兆円企業を創り、社会を変革することに取り組むスタートアップです。
たとえば、普段通っている学校に世界中の優秀なエンジニアやクリエイターがやってきて授業をしてくれたら、子どもたちに大きな刺激を与えてくれるでしょう。しかし、外部人材による授業を自前だけで行える学校はそんなに多くはありません。学校の先生たちは忙しくて人材を招く余裕がなく、また自らの学びを子どもたちに提供したい人がエントリーできる仕組みもなかったためです。
この課題を解決するため、LX DESIGNは「複業先生®」という学校と外部人材をつなぐマッチングサービスを立ち上げました。現在、複業先生には20か国から1,500名以上の人材が登録されています。サービス内には彼らが行った過去の授業内容やレビュー情報も掲載。LX DESIGNのカスタマーサクセスが授業の質を上げるサポートも行うため、学校側も安心して授業を発注できます。こうした仕組みが好評を呼び、導入実績は300校以上。さらに約3,000校が来期以降の導入を待っているといいます。
しかし代表取締役社長の金谷氏は「これだけではマーケットを取り巻く課題は解決しない」と指摘。そこでLX DESIGNは教員のワークシェアだけでなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも焦点を当て、働き方の改革にも取り組んでいると明かしました。
たとえば教員が属人的に行っていた業務をAIによって自動化する支援を提供。子どもたちの学習履歴や興味関心のデータをもとに、教員が属人的に作成していた学級通信、授業レポート(保護者向け、管理職向けの報告)などをAIで自動生成し、学校教育をデータドリブンに変革していく取り組みを行っています。
代々教員を務める家系に生まれ、自身も教員として勤務した経験を持つという金谷氏。「学校教育に新たな関係人口をもたらし、誰もが諦めかけていた学校現場の課題に取り組んでいきたい」と熱意を込めて語りました。
【Flamers】「メタバースでデート」を当たり前にしたい

近年、新しいコミュニケーションの場として注目を集めている「メタバース」。このメタバースで「デート」が当たり前になる世界を構築しようとするのがFlamersです。
Flamersは映画館や水族館に行ったり、店にご飯を食べに行ったりするデートをすべてメタバースで行える世界を目指しています。このビジョンは、代表取締役の佐藤氏自身がメタバース内で出会った女性とメタバースの中でデートを重ね、最終的には結婚まで至った原体験がもとになっています。
提供しているサービスは、恋愛メタバースアプリの「Memotia」。通常のマッチングアプリは写真を用いてマッチングし、その後カフェなどで実際に会って話すという流れが一般的ですが、Memotiaは顔や体型を明かさず声だけで会話を始められます。そのため自分の顔で選ばれるのが嫌だったり、リアルで人といきなり会うことに抵抗を感じたりする、通常のマッチングアプリが苦手な方々が利用しているそうです。
登録者数のうち5組が婚約まで至った事実も発表されました。そこまでユーザーを惹きつけるのは、宇宙や京都を模したMemotiaのさまざまなワールド。これらのワールドでは平均して3.8時間デートが行われており、中には16時間半もメタバース内でデートを重ねたユーザーもいるとのことです。
ビジネスモデルは従来のマッチングアプリと同様、男性ユーザーから利用料を得る形態をとっていますが、今後は別の課金形態も検討していると語る佐藤氏。通常のマッチングアプリの主な課金タイミングは会員登録時ですが、Memotiaでは自社サービス内でデートが行われるため、ワールドやアバター、ギフトにも課金余地があると述べました。
佐藤氏はMemotiaについて、「マッチングアプリではなく、あくまで“デートのアプリ”にしていきたい」と語り、Flamersがメタバースでデート体験を革新しようとしてることをアピールしました。
【クレイ・テクノロジーズ】「誰にどう売るか」を迅速に企画できる世界へ

クレイ・テクノロジーズは、消費者分析に焦点を当てたスタートアップです。代表取締役 CEOの中田氏は、以前日米のマッキンゼーで消費財の企業向けにマーケティングのサポートを行った経験があり、その時の課題感をもとに「Qlay」を立ち上げました。
Qlayが解決するのは、企業のマーケターが行う定性分析の課題です。これまでの定性分析は、マーケターが商品レビューやSNSのコメントを1つ1つ人力で読み解く必要があるため、非常に手間と時間がかかるものでした。消費者分析の時間のうち、半分以上がこの定性分析に費やされてしまうこともよくあるといいます。
Qlayでは、特定の消費財商品に関連する口コミデータやSNSの投稿を収集し、大規模言語モデルを利用して瞬時に消費者の意見を分析します。
Qlayの強みは、次のアクションにつながりやすい深い洞察を提供できる点にあります。類似ツールは消費者による頻出ワードを理解できるだけですが、Qlayは「なぜその意見が出るのか」まで読み解けると中田氏は強調。従来マーケターが行っていた口コミの考察まで自動化できるので、迅速に次の商品やマーケティングの企画に繋げられることに強みがあります。
またQlayの利用を進めてさらにデータを収集し、クレイ・テクノロジーズ独自の大規模言語モデルに学習させることで、将来的には「どういう商品を、どういう人に、どう売れば刺さるのか」が確度高く予測できるようになるといいます。
中田氏は「消費財の企画系業務の一元管理と全体の最大効率化が、クレイ・テクノロジーズのビジョンだ」と力強く語りました。
【ビットクォーク】製造業の「人員配置」を誰でも簡単に

ビットクォークは、「assimee」というシミュレーションサービスを通じて、倉庫や工場における在庫最適化を実現するスタートアップです。産総研にルーツを持つカーブアウト企業で、メンバーは産総研にて生産現場で活用できるAIの研究を行ってきた研究者が中心となっています。
製造業の工場などでは、入荷や出荷などの状況によって人員数が日々変動します。管理者は過去のデータをもとに経験や直感で人材の配置を行っており、その結果、納期遅れや残業が慢性化。近年は人材不足の影響で生産性の向上が求められていますが、管理者の経験に依存する手法では人員配置の精度が低く、再現性も乏しい点が課題です。
ビットクォークの提供する「assimee」を使用すると、誰でも簡単に現場の知識がなくても人員の適切な配置が行えます。assimeeはノーコードを基準にした使いやすいUI/UX、シミュレーションパラメータのAIによる自動設定が特徴。またSaaS形式で提供されているため、どこからでも利用できます。
代表取締役CEOの小森氏は、assimeeのデモ動画を映しながら、直感的な操作でモデルを構築できると紹介。ビジネスモデルは年間の定額課金で、大企業を主要なターゲットとし、全社横断的なDXを推進する部署などにアプローチしていく予定だと明かしました。
物流業界の人員配置や在庫最適化に留まらず、幅広い産業や課題への展開も計画中とのこと。特に、工場や倉庫が抱えるリードタイムや生産設備のレイアウトに関する課題にも「デジタルツイン」などの技術でアプローチすると語りました。今後もビットクオークは「失敗が許されない設備投資の現場に、失敗できる実験環境を提供する」ことを目指し、イノベーションを進めていく考えです。