次世代を担う起業家が登壇!GBAF 2022「XLIMIT Showcase」レポート

グローバル・ブレインのアクセラレータプログラムに採択された6社がピッチを行ないました。

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執筆: Universe編集部

12月2日に開催したグローバル・ブレイン(以下、GB)の年次カンファレンス「Global Brain Alliance Forum 2022(GBAF 2022)」の序盤では、GBが2022年に立ち上げたアクセラレータプログラム「XLIMIT」に採択された6社によるピッチイベント「XLIMIT Showcase」が行なわれました。今回はその模様をお届けします。

【Alivas】8,000万人が抱える“不治の病”に挑む

株式会社Alivas 代表取締役 田島知幸氏
株式会社Alivas 代表取締役 田島知幸氏

糖尿病や高血圧、慢性便秘症などのいわゆる「慢性疾患」を抱える患者は多く、国内では約8,000万人にものぼると言われています。

通常、慢性疾患の患者には飲み薬が処方されますが、基本的には薬で治ることはありません。そのため一度慢性疾患を患うと、長年にわたって薬を飲み続けなければならないのです。複数の慢性疾患を抱えてしまうと、その薬の種類は数十にもおよびます。

こうした服用の大変さから、処方された薬を飲みきれない患者も存在します。ある調査によると、慢性疾患の患者に処方されている薬は3~7割程度しか服用されていないとも言われています。

この問題に挑んでいるのが、慢性疾患の原因となる交感神経に直接刺激を与えられるカテーテルを開発するAlivasです。このカテーテルを利用した治療法には、薬とは異なり効果が持続するという特徴があります。

こうしたカテーテルは、高血圧や糖尿病、COPD(たばこの煙などが原因で呼吸がしにくくなる病気)向けのものはすでに開発されていますが、慢性便秘症に対してはプレイヤーが存在しません。Alivasはそのホワイトスペースを狙って慢性便秘症向けのカテーテル開発を進めています。

Alivasの強みは、製品の質の良さです。動物実験などの結果からも既存メーカーの類似品と比べてもより有効で、より安全であると実証されています。

今後、同社は医療機関とも連携して臨床試験を重ねていく予定で、慢性便秘症以外の慢性疾患に対する治療機器の開発も目指していくとしています。

【AnyReach】あらゆるECからギフトを贈れる世界を実現

AnyReach株式会社 代表取締役 中島功之祐氏
AnyReach株式会社 代表取締役 中島功之祐氏

SNSでのつながりが増え、職場の同僚とはリモートで働くことが一般化した現代では、住所を聞かずにプレゼントを贈れるeギフトの需要は高まっています。

AnyReachが提供するのは、このeギフトの仕組みをあらゆるECサイトに導入できるサービス「AnyGift」です。AnyGiftが使われたECサイトでプレゼントを購入すると発行されるURLを、LINEやSlackなどで相手に送付すれば、受け取った人は自分の住所や名前を登録するだけで手続きが完了します。

AnyGiftはシンプルなAPI・モジュールで機能を提供しており、さまざまな種類のECサイトに対応可能です。また、プレゼントを受け取る側が受け取り日時を自由に指定したり、好きなサイズやカラーを選んだりできる機能も用意しています。

AnyGiftを導入したECサイトでは、プレゼント目的での購入が増えた結果、新規売上が105%増加したという事例もあるなど、成果も出始めています。ギフトを受け取った相手をブランドのファンに転換させる仕組みもプロダクトの中に備えており、次の顧客を作るためのマーケティング施策としても活用されているといいます。

現在、AnyGiftは食品やスイーツ、コスメなどのECサイトを中心にサービスを展開していますが、より幅広いジャンルのECサイトへの導入を目指していく予定です。

【Suishow】ほかに類を見ない「NFT×メタバース」企業

Suishow株式会社 共同創業者 / COO 甲斐貴大氏
Suishow株式会社 共同創業者 / COO 甲斐貴大氏

ここ数年注目されているNFTですが、その活用法はいまだに限定的で、Twitterのプロフィールに設定したり、SNSに投稿したりする程度の使われ方にとどまっています。

SuishowはNFTとメタバースを組み合わせ、新たな価値を生むことを目指すスタートアップです。お気に入りのNFTを壁に飾ったり、アバターに服として着用させたりできるメタバースプラットフォーム「Zoa.space」を開発し、NFTを存分に楽しめる世界を生み出しています。

Zoa.spaceはまだテストバージョンですが、すでに国内の著名なNFTクリエイターたちとパートナーシップを締結しており、Zoa.spaceで開催したNFTファン向けのイベントには約1,000人が集まるなど、注目度が高まっています(正式リリースは2023年3月を予定)。

同社はメタバース単体での開発実績も豊富で、豊田通商をはじめ、大手企業のメタバース空間を手がけてきました。メタバースとNFT両方のノウハウを持っているのが大きな強みで、こうした二刀流の企業は国内ではほぼ存在していないと、同社の共同創業者 / COOである甲斐氏は話します。

今後同社は、メタバースとNFTに、さらにアーティストを組み合わせる事業を展開していくとのこと。アーティストやアイドル、企業のIPを単にNFT化するのではなく、NFTを持った人への特典としてメタバースを活用する企画も進行中といいます。

甲斐氏は、NFTやメタバースの現状について「まだまだ実験段階」であり、今後もさまざまなパートナーシップを通じて、NFTとメタバースの可能性を試していきたいと語りました。

【Bunzz】「Web3版のGitHub」を目指すスタートアップ

Bunzz Pte. Ltd. Co-Founder CEO 圷健太氏
Bunzz Pte. Ltd. Co-Founder CEO 圷健太氏

Web3サービスの注目度は日々高まりを見せており、その需要は増してきています。しかし、それに伴ってネックになるのがWeb3サービスを開発する難易度の高さです。

そもそもWeb3サービスは「DApp」と呼ばれるアプリケーションから成り立っています。このDAppを構成するのは3つの技術です。1つが「スマートコントラクト」で、これはWeb3特有のプログラミング言語です。2つ目が「バックエンド」、3つめが「フロントエンド」で、HTMLやJavaScript、CSSなど、Web2サービスでも親しまれてきた言語が含まれます。このうち、スマートコントラクトは難易度が高く、開発できるエンジニアの数も限られているといいます。

同社はこのスマートコントラクト開発を容易にする、DApp開発インフラ「Bunzz」を展開しています。利用頻度の高いスマートコントラクトをモジュール化して、セキュリティの高い状態でエンジニアに提供。このモジュールを使えば1からコードを書く必要はなく、GUIによりすぐにスマートコントラクトを用意することができます。

Bunzzはリリースから9カ月で、すでに7,000名以上のWeb3エンジニアが利用しています。また、このBunzzからデプロイされたDApp数は2,500を超えており、すでにアジア圏では最大規模のトラクションをもつWeb3開発インフラとなっているといいます。

現在、Bunzz内で提供しているモジュールは同社が内製したもののみですが、今後は外部のWeb3デベロッパーもモジュール作成に参加できるようにするとのこと。作成したモジュールがほかの開発者に使われると、その利用頻度に応じてBunzzトークンが発行されるトークンエコノミクスの仕組みを実装し、モジュールを指数関数的に増やしていく予定です。

BunzzのCo-Founder CEOである圷氏いわく、目指すは「Web3版のGitHub」。Web3エンジニアにとって必要不可欠なインフラになるよう、今後もサービスを強化していくと語りました。

【LOCK ON】暗号資産のトレードを、誰でも簡単に

株式会社LOCK ON Co-Founder 窪田昌弘氏
株式会社LOCK ON Co-Founder 窪田昌弘氏

暗号資産の取引は、これまで以上に複雑さを増してきています。現在、トークンは1万8千種類以上あると言われており、日々さまざまな複雑化されたプロトコルも誕生。暗号資産のトレーダーは、それらをリサーチするだけでも大きなコストを感じています。

さらに、暗号資産取引所「FTX」が経営破綻した影響もあり、暗号資産の市場は暴騰と急落をくりかえす、不安定なものとして知られています。

こうした問題に対し、「暗号資産における自動取引の実現」という面から挑んでいるのが、LOCK ONです。同社は、ブロックチェーン上にある約6億のウォレットアドレス(取引口座)をすべて分析し、継続的に利益を出し続ける口座を特定。それらをインデックスのようにテーマごとにパッケージ化します。トレーダーはその中の特定のインデックスを選択すると、そこで行われている取引を自動で実行することができます。

同社のこうしたサービスは「ソーシャルトレード」、あるいは「コピートレード」といわれています。この市場ではイスラエルのeToroという企業が先行していますが、eToroとLOCK ONは複数の面で異なっていると、LOCK ONのCo-Founderである窪田氏は説明しました。

「最大の違いは、eToroを使うためにはトレーダーが同サービスに登録しなければならないのに対し、LOCK ONではその必要がないということ。LOCK ONはブロックチェーン上の口座を独自に分析した結果を提供しているので、トレーダーがなにか能動的に行動を起こす必要はありません。

また、LOCK ONは約6億という膨大な分析母数にもとづいていてインデックスを作成しているため、利率もeToroのそれに比べるとよくなる傾向にあります。

取引の再現性にも違いがあります。eToroは自社の取引所でのみ取引の再現ができますが、LOCK ONはチェーンに存在するすべての流動性に対してアプローチが可能です。また対応している通貨数も、eToroが78銘柄であるのに対し、LOCK ONは18,000の銘柄で取引ができます」

窪田氏は最後に「まるで投資信託を使うかのように、誰でも簡単に暗号資産をトレードできる世界を目指す」と同社のビジョンを強調しました。

【Onebox】「顧客対応」をDXし、日本の生産性を向上

Onebox株式会社 代表取締役 奥村恒太氏
Onebox株式会社 代表取締役 奥村恒太氏

さまざまテクノロジーの発達やリモートワークの普及などにより、企業におけるコミュニケーションのあり方は大きく変化しました。

たとえば、BtoB企業の営業やカスタマーサポートなどの部署は、顧客にはメールや電話で連絡をし、社内とはチャットを使ってやりとりをしながら、CRMツールにも起票する…という業務フローが一般化しています。

こうしたコミュニケーションコストの高い状況は、単に煩雑であるだけでなく、顧客対応のミスやそれに伴う売上機会の損失なども引き起こしかねません。

ここに課題を見出し、業務DXを推し進めようとしているのがOneboxです。同社は社内と社外のやりとりを効率化するプラットフォーム「yaritori」を提供しています。

yaritoriでは、顧客からきたメールへの対応状況を複数人で確認できるため、二重対応の心配がなくなります。さらに、メール対応をする人のアサインや、どのような内容で返信すべきかなどの相談もyaritori内で完結。返信文もテンプレートを使ってワンクリックで作成できるため、業務フローの効率化にもつなげることができます。

実際にyaritoriによって生産性が上がった事例も出ています。京都のフィルム加工メーカーでは、9名の営業チームが行っていた顧客対応の時間を月88時間削減できたといいます。

yaritoriは製造業に限らず、物流業界やIT業界などでも導入が進んでおり、現在160社が活用しています。月次の解約率も1.02%と、toCサービス並みの粘着性があるのも同サービスの特徴です。

今後同社は、yaritoriとその他ツールの連携を進め、企業と顧客をつなぐ「顧客対応プラットフォーム」へ発展させていくことを目指すとのこと。加えて、yaritoriに蓄積されるデータをもとにBtoB領域をドメインとした関連プロダクトの開発も進めていくとしています。