世界中を取り巻くTOPリスクに対する新戦略 / GBAF 2021レポート

全体戦略とセッションステージで語られたハイライトをまとめました。

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執筆: Universe編集部

12月10日に開催したグローバル・ブレイン(以下、GB)の年次カンファレンス「Global Brain Alliance Forum 2021(GBAF 2021)」は、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みて、本年も完全オンラインで実施いたしました。

私たちをとりまく環境は昨年にも増して厳しくなっています。感染症と地球温暖化というTOPリスク、米中関係の変化による影響、社会全体で取り組む必要のあるDX。これらの問題にどのように対峙し、大きな機会に繋げていくべきか。この厳しい環境の中、グローバルTOP VCを目指すGBの新たな戦略と、それぞれの問題を深掘りしたセッションをお届けしました。

本稿では、各セッションのハイライトをまとめます。

2023年に向けて運用総額3,000億円、社員数200名を目指す

グローバル・ブレインの新戦略——百合本 安彦
グローバル・ブレインの新戦略——百合本 安彦

まず弊社 代表取締役社長の百合本よりGBの新戦略についてご説明いたしました。2021年のハイライトとして、新規投資件数120件、投資金額は200億円と、コロナ禍にありながら過去最大の数字となりました。AUM(累計総資産)は29.3%の成長を続けており、1,706億円に到達。2021年にはGB8号ファンドおよび追加投資専用ファンドとしてGB6&7Fファンドを新たに設立しました。来年2022年には運用総額が2,000億円を超える見込みで、2023年には3,000億円を目標としています。

2021年のExit実績をみると海外の件数が増加しており、IPOが 4社、M&A が9社で、キャピタルゲインは110億円を超えました。投資後の評価額で見ると、1,000億円以上となったのは、Exit済企業が8社、ポートフォリオ企業が2社の計10社となっています。

社員数は92名に増加。DeepTechに強い人材も多く、6ヶ国にわたる多様なメンバーでチームを構成しています。年明けには100名を超える見込みで、2023年に200名規模を目指して採用を強化していく予定です。

また、グローバルTOP VCとのベンチマーク比較を用いて、GBはUS、Europeにおける著名VCの中で、投資件数、社員数は既にTop水準に達していることをお伝えしました。

2022年 GBの新戦略について
2022年 GBの新戦略について

2023年の目標である「グローバルトップVCへの仲間入り」達成に向けて、2022年は非常に重要な年です。「Global市場への本格展開」「次世代型CVCの確立」「重点投資領域の拡張(DeepTech)」「投資後の支援強化」「地方創生の加速」という新たな5つの戦略について、それぞれ説明を行いました。

世界的に感染症領域への投資が増加、今後の課題・解決策に迫る

新感染症への備え——守口 毅
新感染症への備え——守口 毅

世界中が新型コロナウイルス感染症と戦う今、改めて感染症について考えます。感染症とは、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫などによって引き起こされる疾患ですが、年間250万人以上が三大感染症(AIDS、結核、マラリア)により死亡しているのが現状です。感染症はグローバルの死因として4番目に多く、また今後10年で最も影響が大きいグローバルリスクともいわれています。

新型コロナウイルスによって亡くなった方は500万人を超えましたが、その裏で新たな脅威となっているのが新興感染症です。これにより合計1,000万人以上の方が亡くなっています。新興感染症の一つである「薬剤耐性菌感染症(AMR)」は既存の抗生物質が効かない細菌で、既に日本国内でも報告がされています。特にアメリカでは年間300万人が感染し、5万人が亡くなっている状況です。

これを受け、感染症スタートアップへの投資は年々増加。その額は2021年で3,000億円を超え、治療以外の予防・診断における領域の投資も増加しています。今回のGBAFでは、AMRに関するキーオピニオンリーダーであるBugworks Research Co-founder and CEOのDr. Anand Anandkumar氏にお話を伺い、感染症の現状と課題感、そして今後の対応策についてご説明をいただきました。

Dr. Anand Anandkumar氏からは最新の研究成果のお話も
Dr. Anand Anandkumar氏からは最新の研究成果のお話も

脱炭素社会を目指す流れが加速—今後の投資戦略と海外事例

脱炭素社会を目指すClimate tech領域の投資戦略——木村 理一郎
脱炭素社会を目指すClimate tech領域の投資戦略——木村 理一郎

世界的に脱炭素社会を目指す流れが加速する中で、Climate tech領域に対するグローバルの投資資金は、過去最大の5兆4,000億円に到達しています。そのうち北米が全体の約半分を占め、アメリカ内では東西海岸、特にカリフォルニア州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州が大きな割合を占めています。Exitマーケットも堅調に推移しており、2021年は2020年のほぼ2倍のExitバリューを見込んでいます。これらの動向を踏まえ、GBではNYに拠点をおくことで、拡大している東海岸のエコシステムにおける関係構築を強化してきました。今後も産業ごとのユニークなソリューションはもちろん、サーキュラーエコノミーなど産業を超えて展開可能な技術やサービスにも注目して投資していきます。

そして今回、Climate tech領域に深い知見のあるClean Energy Ventures Co-founder & Managing DirectorのDaniel Goldman氏、またSOSV Managing General Partner & FounderのSean O‘Sullivan氏をお招きし、各社注目のトピックを紹介頂きながら抜本的な解決への道筋を探りました。

Climate tech領域に造詣の深いVC2社より、世界各国のトレンドや成功事例をご説明いただきました
Climate tech領域に造詣の深いVC2社より、世界各国のトレンドや成功事例をご説明いただきました

中国スタートアップの最前線—日本の大企業・CVC協業・投資はどうあるべきか

変化する中国の投資最前線―世界的な有望市場の“いま”——He Jie
変化する中国の投資最前線―世界的な有望市場の“いま”——He Jie

2021年の中国投資市場は2020年・2019年と比較して、大幅に成長している状況です。直近3四半期のVC/PEを対象とする統計データを見ると、中国市場における投資総額はすでに1兆人民元(約18.7兆円)を上回り、前年同期比で70%も増えていることが分かっています。うち、外資系資本をメインとするUSドルファンドも前年同期比で倍以上増加しています。注目領域としては、SaaS、人工知能、高性能計算を主とするITサービス、バイオ医薬、半導体関連業界が上位3位を占めています。

Exit側もトレンドに変化がありました。新設された証券取引所・科創板では、2021年に上場した企業が既に126社にのぼっており、新規上場企業数は過去最大となりました。実際中国は今どのような状況にあるのか、GBは中国拠点を置くことで、現地の情報を的確かつ迅速に収集できる体制を整えています。

本セッションでは、清華大学フィンテック研究院の副学院長、薛 正華(せつ せいか)氏と、Samsung Ventures中国のManaging Director、Jingyi (Vanessa) Wang氏をお迎えし、中国スタートアップの最前線、および日本の大企業・CVC協業・投資はどうあるべきかについてお話を伺いました。

薛 正華氏、Jingyi (Vanessa) Wang氏より、日本はどのように中国市場で価値を出せるかについても言及されました
薛 正華氏、Jingyi (Vanessa) Wang氏より、日本はどのように中国市場で価値を出せるかについても言及されました

世界的に増加するCVC設立、大企業側が心がけるべきスタートアップとの関わり方とは

大企業とスタートアップとの協業事例:KDDI株式会社 川村 光右氏
大企業とスタートアップとの協業事例:KDDI株式会社 川村 光右氏
大企業とスタートアップとの協業事例:三井不動産株式会社 上窪 洋平氏
大企業とスタートアップとの協業事例:三井不動産株式会社 上窪 洋平氏

大企業とスタートアップとの協業事例セッションは、具体的な事例を通して当該協業の成功要因を洗い出す、例年恒例のプログラムです。本年はKDDI株式会社と三井不動産株式会社より、スタートアップとの関わりにおいてどのようなことに気を付けているのか、実践されている取り組みなど詳細にご説明くださいました。特に大企業がスタートアップと共創する際に重要である、社内各事業部との連携や協力体制の築き方、支援事例についてもご紹介いただきました。

今後の日本における成長戦略の方向性やDX推進の鍵とは

グローバル目線で見る日本のDX-真の変革推進に必要なもの——梶井 健
グローバル目線で見る日本のDX-真の変革推進に必要なもの——梶井 健

日本はデジタル競争力、全労働人口におけるデジタル人材の割合などにおいて、必ずしも高いとはいえないのが現状です。しかしGBでは、今後の成長のポテンシャルは極めて高いと分析しています。まず初めにGeneral Partnerである梶井より「企業・コーポレート側」「大手IT/SI市場の構造」「スタートアップのエコシステム」における3つの側面から、どのような変化が起きているのかをお伝えしました。

Startup Pitch Battle 2021

Startup Pitch Battle 2021 表彰式(DAIZ株式会社とエディットフォース株式会社は遠隔参加)
Startup Pitch Battle 2021 表彰式(DAIZ株式会社とエディットフォース株式会社は遠隔参加)

GBAFのメインイベントである、弊社投資先によるStartup Pitch Battleでは、昨年末からの約1年に投資決定をしたスタートアップ企業のうち、今注目の領域における10社に登壇頂きました。

登壇企業(登壇順)

オーディエンスの投票によって決まるAUDIENCE AWARDは株式会社TOUCH TO GO、プレゼンが最も上手かった企業に送られるGBAF AWARDは株式会社スマートバンク、そして審査員が選ぶPITCH PANEL AWARDは株式会社UPSIDERに送られました。

なおピッチバトルに関しては、改めて詳細をお伝えいたします。