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英語力に3ヶ月で効果、AI英会話の「スピークバディ」ら受賞、GBAF 2020で披露されたスタートアップ7社ご紹介

グローバル・ブレインが昨年末からの約1年間に投資を決定したスタートアップ企業のうち、今注目の領域の7社を選定した。

執筆: Universe編集部

12月4日にグローバル・ブレイン(GB)が開催する年次イベント「Global Brain Alliance Forum(GBAF)」の2020年の回が開催され、イベント終盤のイベント「Startup Pitch Battle」では、GBが昨年末からの約1年間に投資を決定したスタートアップ企業のうち、今注目の領域の7社を選定した。

MCは、Corporate Management Groupディレクターの石井輝亜が務め、「Startup Pitch Battle」には、GBAF賞・審査員賞・オーディエンス賞の3つの賞が用意された。

審査員賞の審査を行ったのは次の方々だ。

  • 起業家・エンジェル投資家 有安 伸宏 様
  • ヘイ株式会社 代表取締役社長 佐藤 裕介 様
  • 日活株式会社 社外取締役 杉山 全功 様

GBAF賞: スピークバディ CEO 立石 剛史 氏

英語でのオンライン会議が増えるなど英語はますます必要になっているが、日本人の英語力は依然としてアジアで最下位の状態。立石氏自身も英語は苦手だったが、就職時に外資系企業に内定したことをきっかけに猛勉強、各種英会話スクールに通って約4,000時間をかけ、苦労した末、TOEICでほぼ満点を達成した。

英語を習得するためにはいくつかの方法があるが、仕事があると語学留学は難しい、対面型のマンツーマン英会話だと料金が高い、オンライン英会話だと授業のたびに講師が変わってしまう、などの問題がある。バーなどで外国人の友達を作る、というのもなかなか難しい。そこで開発されたのがAI英会話の「SpeakBUDDY」だ。

SpeakBUDDYは、いつでもどこでも使えて月額1,950円。AIがユーザに合ったカリキュラムを作成するため効率的な学習ができる。4つのAI——会話AI(フリートーク)、音声認識、自然言語処理(英作文添削)、機械学習(各機能の精度向上)——を使っており、ユーザはAIと実際の会話が楽しめ、さらにAIにより現在の英会話レベルの判断をすることも可能だ。

言語習得のための科学に基づいてサービスが設計されているため、CEFR-J(日本の英語教育に適用した言語参照枠)を基にした10段階評価で、SpeakBUDDYを3ヶ月間使ったユーザは1.2レベルが上がる事象が報告された。SpeakBUDDYでは最新の言語習得理論に基づき、コミュニケーションを通じて学び、タスクをこなして定着させる方法でユーザに言語マスターを促す。

2016年9月にローンチしたSpeakBUDDYは、サービス開始から3年9ヶ月が経過した2020年6月現在、有料ユーザが2万5,000人を突破。国内アプリストアの教育・トップセールスで常に上位につけている。アプリをローカライズすることで、英語習得に熱心な中国やアジア諸国へ進出するための準備も着々と進めているという。

毎年1月〜4月の一年の始まりの時期、「今年こそ英会話をマスターしたい」という新年の抱負から SpeakBUDDY のサインアップに至るケースが多いとのことで、来年年明けのマーケティング準備を始めているという。また、コンピュータサイエンスに強いメンバーを社内に擁しており、音声認識を自前技術で実装するなど内部の技術力が高い点について自負している、と立石氏は語った。

審査員賞: RevComm 代表取締役 會田 武史 氏

電話営業における顧客〜担当者のやりとりは、当事者間同士のブラックボックス化されてしまっているのが現状だ。上長や同僚は当事者間で何がどのように話されているかわからないし、また、同じ電話営業でも担当者によってどうしてもパフォーマンスにばらつきが出てしまう。さらにその会話内容が成約にうまく合致しているのか外れているのかを客観的に判断することは難しい。

RevCommが開発した「MiiTel」は、俗人的になりがちな電話営業をAIを使って可視化し、より生産性の高い電話営業の実現を支援するサービスだ。システムは顧客管理ツールと連携した IP 電話で構成されており、担当者はPCから03または0120で始まる電話番号で発着信が可能。顧客との会話は録音・解析され、話している時間・聞いている時間・沈黙の時間・相手の話に被せて自分が話た時間・会話の回数・話速が可視化される。

MiiTel(ミーテル)サービス説明動画

話した内容については全文が文字起こしされ、それが要約され他の担当者と共有しやすいように可視化される。従来の方法は、担当者が自ら会話内容を要約してシステムに入力する必要があったが、この点が自動化されることによりインプット工数が劇的に短縮される。要約される情報量は、会話前後のコンテキストによって増えるため、情報共有を通じた生産性や成約率の向上にも寄与する。

MiiTelのダッシュボード上ではどんな商談内容だったかも可視化されるため、担当者ごとの傾向、例えば、ある担当者は話し相手の顧客に被せて話がち、というようなことがわかる。担当者自らがそれを振り返り、「今までより0.5秒遅れて話してみる」といったセルフコーチングの機能を提供することもできる。

MiiTel は開始から2年で400社以上(IDでは12,000 以上)に導入、これまでに2,500万件以上のコールを処理した。今後は、担当者が顧客に話す内容の一部を自動的に音声出力する「自動スクリプトモード」、アポ取りを自動化する「自動アポモード」のほか、セールス以外にもミーティングや経営判断、人材採用のリモート面談ツールへの導入など当社独自の音声解析やAIの技術を活用したサービスの多様化を図る。

オーディエンス賞: any 代表取締役 吉田 和史 氏

114分—これは会社で働く人が1日に情報を探している平均の時間だ。勤務時間を8時間として、実に4分の1を情報を探し出すのに費やしていることになる。anyの提供するQastは、社内版の“知恵袋”機能「Q&A」と社内版の“Wikipedia”機能「メモ」によって、情報を探し出す時間を社員1人あたり30分削減、また、重複して対応する時間を60分削減する。

Q&A に質問を投稿すると、その内容は社内メールやチャットツールにメッセージとして送信され、その質問に回答ができる社員からメッセージが返信される。質問を投稿することでスコアがたまり、このスコアを人事評価に活用したり、貢献度の見える化に応用したりすることができるという。

メモには、社内での成功・失敗事例、アナウンス、議事録などを掲載できる。メモに登録された情報は、タグやキーワードで検索できる対象となるほか、添付ファイルの内容も検索対象になるので、情報の検索効率が格段に改善される。SlackやTeamsと連携すると、チャット上でのやりとりをメモ上にワンクリックで貯められるので、流れ去っていくフロー型の情報ツールの欠点も補える。

やりとりをメモ上にワンクリックで貯められるので、流れ去っていくフロー型の情報ツールの欠点も補える。

サービス開始から2年半で2,000社超が導入しており、最近では特に社員500人以上の大手企業の導入が拡大しているという。部署や拠点間を跨いだナレッジの蓄積・活用手段として注目を集めており、従来のポータルサイトやイントラネットのリプレイスソリューションとして採用されることが多いようだ。

将来は、ファイル共有サービスやメールサービスとの連携も行い、社内のあらゆる情報リソースをよりシンプルに検索できるようにしたい考えだ。anyではカスタマーサクセスに注力し、新たな企業ユーザがQastを導入する際は2名ほどの担当をつけ、タグの付け方、フォルダの作り方など、情報の整理方法を提案していることが、大企業ユーザが導入を決めるカギになっているとのことだった。

SWAT Mobility 日本法人代表 末廣 将志 氏

SWAT Mobilityは、デマンドレスポンス型ダイナミックルーティングアルゴリズムで、移動課題を解決しようとするスタートアップだ。2016年にシンガポールで創業、今年2月に日本市場へ進出した。郊外での高齢者の交通代替手段、都心における慢性的な交通渋滞、ラストワンマイルの移動手段などを、N:N(乗客複数 vs. 運転者・車複数)の最適なルート計算でソリューション提供する。

サービスは、乗客用アプリ・ドライバー用アプリ・管理者用アプリの3つで構成。乗客は乗りたい場所、降りたい場所、予約ボタンを押せば車を呼ぶことができ、ドライバーはアプリに表示された地図上の指示に従って目的地に最適なルートで乗客を送り届けることができる。管理者アプリでは、サービスオーナーとして、各車の現在地や稼働状況などをリアルタイムで把握することができる。

SWAT Mobilityでは主に、企業向けや公共交通機関向けに世界7カ国でサービスを提供している。日本では、ケーブルテレビ大手ジュピターテレコムの営業員・保守員のオンデマンド送迎に利用されている。ジュピターテレコムではこれまで、社用車を使って営業員・保守員が顧客訪問していたが、事故の多発やそれに伴う保険料の上昇、出先での駐車場確保の時間などに悩んでいた。

7月から実施されたこの実証実験では、営業員や保守員が予約してから10分くらいで現場に到着することが確認され、3ヶ月間で約8,000回の乗車が認められた。車の効率的な運用が可能になることから、ジュピターテレコムが持つ社用車4台を1台に減らしても運用が可能であることがわかった。ジュピターテレコムはSWAT Mobilityの仕組みを全国4,500台ある社用車の約半数に導入する予定。

また、新潟市下町(しもまち)では、SWAT Mobility が新潟交通や日本ユニシスと協業で、オンデマンドバスの運用実験を行っている。地方都市や郊外では人口減少に伴い路線バス利用者が減っているが、単純にバス路線を廃止したのではユーザビリティが下がってしまう。サービスの品質を維持したまま、サステナブルな移動手段を提供する仕組みとして注目を集めているという。

その他タイやフィリピンなどの東南アジアでは、トヨタと協業で医療従事者向けの感染予防策を施した通勤用の送迎サービスを提供。出退勤時間が不規則で、一般通勤客との接触を極力減らす必要がある医療従事者向けに、医療施設と自宅を直接繋ぐ仕組みを提供した。

ROXX 代表取締役 中嶋 汰朗 氏

採用候補者の適性を面接だけで見抜くのは難しい。事実、企業と人のミスマッチから、10人採用しても2人は1年以内に離職し、採用後3年以内に離職した人のうち37%は半年以内に離職している。小規模なスタートアップにとって、ミスマッチがもたらすダメージは特に大きい。ROXXの「backcheck」を使えば、仕事を共にしないとわからない採用候補者のことを採用前に知ることができる。

backcheckは採用候補者本人の許可をもらった上で、その人のかつての同僚・上司・部下などの第三者(推薦者)から、人物像や職場での仕事ぶりをヒアリングすることができるリファレンスチェックサービス。採用する企業からの依頼をもとに、推薦者にオンラインでのチェックを依頼、回答された内容を分析レポートしてまとめて届けてくれる。アルゴリズムでの性格診断や社会人としてのわきまえなども網羅する。

寄せられる回答は採用候補者には開示されないことが明示されているため、推薦者は忌憚のない意見をコメントすることができる。実際にヒアリングして得られた回答のうち81%にはネガティブな評価も含まれており、採用候補者の得意なこと、不得意なことを踏まえて多面的な評価に役立っている。チェックを依頼できれば94%が回答してくれ、依頼から3日間で企業にレポートが届く。

推薦者をかたって不正に評価が回答されるケースも50人に1人くらいの確率で生じることも確認しており、ROXXでは独自の不正検知機能を開発し導入。また、採用候補者が積極的な転職活動を行なっている際に備え、推薦者に複数企業からオンラインでのチェックを依頼された際に、回答を使いまわせる機能も追加した。

昨年10月にローンチしたbackccheckだが、今月で取り扱ったリファレンス件数が8,000件を突破。審査員からは「便利なサービスなので、もっと急速なグロースが望めるのでは?」との指摘があったが、中嶋氏は「backcheck でどんな情報が得られるかのイメージをマーケティングだけで伝えるのが難しい」とし認知度向上が課題であるとした。

投資家が起業家を、反対に起業家が投資家を事前にリファレンスチェックできるサービスも計画している。

Anyflow 代表取締役 CEO 坂本 蓮 氏

企業では、従来オンプレミスで利用されてきた各種システムが、クラウドベースのSaaSへと置き換わる流れが顕著だ。現在、企業一社あたりのSaaS平均導入数は7個とされ、10個以上のSaaSを導入している企業は全体の24%を占める。SaaS市場は年間13%のペースで成長を続け、2024年には1兆円規模に達するとみられる非常に有望な分野と言える。

しかし、SaaSの導入が増えた結果、問題も生じる。MAツールで得られたリード情報をCRM(顧客管理ツール)に同期したり、以前なら社内システム間で接続できたデータ連携がSaaS単位でデータが分断された結果、連携を諦めたり手で重複して入力したりするケースが発生してしまう。

SaaS間のデータ連携にはエンジニアが必要になるが、これだけのために専任のエンジニアを社内に置いている企業は稀で、エンジニアは他の業務を抱えていることから、SaaS間データ連携の開発に時間を割くことが難しい。なぜならSaaSの使い方を学び、データ連携のコーディングを行い、実装しテストした上で必要に応じてメンテナンスを続けていく必要があるからだ。

AnyflowはSaaS同士のシステム間連携を直感的に行えるiPaaS(integration Platform as a Service)で、プログラムを書くことなく実装ができる、いわゆる「ノーコード」ソリューションだ。あらゆるSaaSを統合し、自動化し、生産性を上げることを念頭に置いており、エンジニアに手間を負わせることなく、ビジネス部門手動でSaaSの連携を進めることが可能になる。

今年2月に正式ローンチ後、順調にユーザを拡大。代表の坂本氏によれば、ビジネスの日常に組み込まれることでLTVが高くなり、チャーンレートが低くなるという。企業がどういったSaaSを、どういったワークフローで、どういった業務プロセスに利用しているかの情報が蓄積されるため、将来は、企業にベストプラクティスに基づいた自動化を提供できるプラットフォームを目指すとした。

QunaSys 代表 楊 天任 氏

QunaSysは、量子コンピュータのためのアルゴリズムやソフトウェアを開発しているスタートアップだ。Google が昨年2019年10月に実証を発表した量子超越(Quantum Supremacy)は、世界最速のスパコンでさえとても長い時間の約1万年はかかる何らかのある計算問題を、量子コンピュータでは3分20秒という圧倒的に高速で計算できたとして注目を集めた。

現在紹介されている量子コンピューティングハードウェア技術の多くは、産業面への応用の道はまだ程遠いものの、ライト兄弟の飛行機の初飛行がその後のドーバー海峡の商用飛行に、そして、現在の飛行技術の開発につながったように、量子コンピューティングもここからどう使えるかという議論につながっていくだろうと、楊氏は語った。

量子コンピュータの応用が期待されるのは特に量子化学シミュレーション分野だ。高エネルギー密度の二次電池開発、太陽光を使って酸素や水素を合成する人工光合成、高効率な肥料合成を実現するアンモニア合成触媒、CO2CO2の高効率な分離回収方法など、量子コンピューティングの計算力を使った量子化学シュミレーションにより、新素材の開発や反応機構の解明の発見を効率化する動きへの貢献が期待される。

Qunasysではこれまでにさまざまな量子コンピュータのための様々なアルゴリズムを開発しており、そのアルゴリズムを化学メーカーが活用できるようソフトウェアとして提供している。クラウドサービス「Qamuy」として日本の主要化学メーカー40社ほどに提供、このアルゴリズムをどうビジネスに使えるかを共同研究している。

化学メーカー以外では製薬分野メーカーでの活用、特に創薬においては治験のプロセスで長い時間を要することから、新薬の毒性試験(安全性確認)において、試験に先立って毒性をあらかじめ予測するよう機能し、治験プロセスを短縮することが量子コンピューティングに期待されているそうだ。