GB Tech Trend #050: 2社の調達に見る、高まるカスタム・パッケージング需要

たとえばAppleは商品の開封体験に非常に気を使っていることで有名です。

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4,560万ドルの調達を発表した「Packhelp」(Image Credit:Packhelp)

執筆: Universe編集部

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

在宅時間が増えるにつれて、Eコマース市場が成長しました。比例して「カスタム・パッケージング」需要も高まっています。

オンラインで購入した商品が届く梱包材のデザイン及び体験のことを「カスタム・パッケージング」と呼びます。たとえばAppleは商品の開封体験に非常に気を使っていることで有名です。こうした体験を中小コマース企業も提供しようという動きが活発なのです。

今回4,560万ドルを調達した「Packhelp」や、1,000万ドルの調達を発表した「noissue」は、まさにカスタム・パッケージング市場でのシェア拡大を目指しているスタートアップです。同市場における先駆的な存在が「Lumi」ですが、彼らが米国の大手D2Cブランド・企業にサービス提供をしている一方、Packhelpは欧州市場狙い、noisseuはカーボン・エミッションに注力していたりと、差別化を図っています。ちなみにグローバル・ブレインもパッケージングをテーマにしたスタートアップ「Shizai」に投資しています

海外の2社は同時期に資金調達を実施しているのですが、カスタム・パッケージ市場が注目され始めた理由は大きく2つ挙げられます。1つはSDGsの流れです。日本でも「SDGs」を聞かない日はないほどありふれた言葉になりました。ブランディングの必須要件として考えなければいけないほど、消費者はエコフレンドリーな商品体験を求めるようになっています。

noissueは昨今の消費者マインドを満足させる、環境に配慮した梱包をEコマース企業に提供しています。環境に悪い素材を使っていると顧客は罪悪感を覚えるようになり、ブランド毀損に繋がりかねません。企業も透明性を持って地球環境に寄与する義務感が発生する時代になりました。nossueが狙った市場需要はこの点です。実際、TechCrunchの記事によれば、北米での顧客数は200%増、8万人以上のカスタマーを抱えているそうです。

もう1つの理由が中小コマース企業の台頭です。北米のShopify、日本ではBASEのように気軽に個人が自分の作品やオンライン商店を立ち上げられるようになり、小ロットでの梱包ニーズが高まっている背景があります。加えてクリエイター・エコノミーも追い風となり、音楽・アート作品の販売をEコマースを通じて届ける需要も高まりました。こうしたクリエイターによる体験においては、雑多ではなくよりデザイン性の高いパッケージングも求められます。

Packhelpの顧客は70%が中小企業であることも踏まえ、需要を汲み取るためにノーコードツールを充実させています。数クリックでオリジナルの梱包デザインを行える手軽さを売りに、最小スロット数30から発注可能な生産体制を提供しています。

各々にサービスの強みが違いますが「パッケージングのSaaS化」に取り組んでいる点は共通しています。各地域に点在する梱包業者の工場と提携して効率的にカスタム・パッケージング体制を確立。オフライン作業にソフトフェアの効率性を取り組んだことで、旧態依然としたパッケージング市場も成長市場へと様変わりしました。

今週(11月23日〜11月29日)の主要ニュース

8.4億ドルを調達したファンタジー・スポーツ「Dream Sports」(Image Credit:Dream Labs)
8.4億ドルを調達したファンタジー・スポーツ「Dream Sports」(Image Credit:Dream Labs)

ファンタジー・スポーツ「Dream Sports」が8.4億ドルの大型調達

インド・ムンバイを拠点とするファンタジー・スポーツ・プラットフォーム「Dream Sports」は、Falcon Edge、DST Global、D1 Capital、Redbird Capital、Tiger Globalがリードとなり、8億4000万ドルの資金を調達した。本ラウンドには、既存の投資家であるTPGとFootpath Venturesも参加している。— 参考記事

電気自動車向け充電ネットワークを提供する「Ionity」が7億ユーロを調達

ドイツ・ミュンヘンを拠点とする電気自動車用の急速充電器ネットワークプロバイダーであり、Daimler AGとVolkswagen Groupをオーナーに持つ「Ionity」は、BlackRock Globalと既存の株主から7億ユーロ(7億8,300万ドル)の投資を受けた。— 参考記事

メタバース志向ゲーム企業「Avocado Guild」が1,800万ドル

シドニーを拠点とするPlay-to-earn型メタバースゲーム企業「Avocado Guild」は、Animoca BrandsとQCP Soteria NodeがリードするシリーズAラウンドで1,800万ドルを調達した。本ラウンドに参加する他の投資家には、Three Arrows Capital、Solana Ventures、Polygon Studios、Hashed、Binance、GoldenTree Asset Managementらがいる。— 参考記事

自動運転車向けソフトウェア企業「Helm.ai」、2,600万ドル調達

自律走行車用のソフトウェアを開発する「Helm.ai」は、シリーズBの資金調達で2,600万ドルを調達した。本ラウンドでは、Amplo、JMPartners、Base Capital Funding、Freeman Groupがリードし、ACVC、One Way Ventures、Binnacle Partners、および個人投資家が参加している。— 参考記事

アフリカ・ケニア拠点のフィンテック企業「Asilimia」200万ドル調達

ケニアのナイロビを拠点とする、金融取引業者に送金手数料のかからないモバイルマネー取引機能を提供する「Asilimia」は、連続起業家のFredrik Jung Abbou氏を含む投資家からプレシードラウンドとして200万ドルを調達した。— 参考記事

AIベースのオンラインセラピー企業「Ieso」は、5,300万ドル調達

イギリスを拠点とするデジタルセラピー企業の「Ieso」は5,300万ドルの調達を行った。同社は数千時間の実生活でのセラピーに基づいて学習したAIが、チャットで直感的な自律型テキストセラピーに注力している。投資ラウンドはMorningsideがリードし、Sony Innovation Fundが加わった。また、IP Group、Molten Ventures、Ananda Impact Venturesといった投資家も参加している。— 参考記事

トラベル・マーケットプレイス「Peek」、8,000万ドル調達

旅行体験マーケットプレイスで、予約用ソフトウェアを旅行会社にも販売している「Peek」は、、シリーズCラウンドとして8,000万ドルを調達した。本ラウンドはWestCapがリードし、Goldman Sachs Asset Managementが参加した。— 参考記事