生成AI時代に「ハード」が強い理由── Yotoが示す新たな勝ち筋【GB Tech Trend #145】
カードを差し込むと物語や音楽、学習コンテンツが流れるポータブルオーディオプレーヤー「Yoto」。スマートフォンを持つ前の「子ども市場」に注目した同サービスの戦略を考察します。

今週の注目テックトレンド
GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。
生成AIの登場により、ウェブサイトやモバイルアプリに至るまで、プロンプトを入力するだけでもある程度のソフトウェアを大量に開発できるようになりました。その結果、開発スピードが圧倒的に短縮され、SaaS市場では競争が激化しています。そこで注目されているのがハードウェアスタートアップの活躍です。
今回紹介する「Yoto」
ラインナップは据え置き型の「Yoto Player」
Yotoではアプリから無料で聴ける「Yoto Radio」
最も手頃な「Yoto Club」
AI時代に再注目されるハードウェア市場
生成AIの普及でソフトウェアサービスの開発ハードルが下がりつつある中、投資家側は徐々に「ハードウェアの参入障壁」
SaaS全盛期においては、ハードウェアは売上の見通しが不確実で、コストドリブンになりがちだとして敬遠されていました。しかし冒頭で紹介した通り、非エンジニアであってもソフトウェア開発に手を伸ばせるようになった昨今では、あらゆるサービスが短期間で代替される可能性も秘めています。
この点、Yotoのようなハードウェア企業は、開発期間を長く要することから競合が登場しても一朝一夕には市場ポジションをひっくり返されにくい構造を持ちます。Yotoのように、ハードウェア+コンテンツ流通を一気通貫に固めた事業モデルであれば、単発のアプリとは異なる継続的な顧客接点を確保でき、なおさら競合優位性を高く保ち続けられる可能性が高くなるというわけです。
実際、業績面では2024年に売上が前年からほぼ倍増の9,480万ポンドに到達しました。約300万人の子どもにリーチし、2025年に初の黒字化を見込むと報じられています。投資家にはポール・マッカートニー氏やChan Zuckerberg Initiativeなど著名どころが名を連ねます。
ポストスマホの文脈で見るYoto
もう1つ、Yotoを考えるうえで必要なのが生成AI時代の「ポスト・スマートフォン」
OpenAIと元Apple CDOであるJony Ive氏との新デバイス構想はまさに象徴的なニュースでした。AppleはAIへの投資額がFAANG銘柄の中では比較的低めであり、iPhoneへの生成AI機能実装などもまだ途上の段階です。ここにスタートアップの参入余地があると判断され、多くのハードウェアスタートアップが参入し始めています。
しかし、スマホ/PCとAIが共存するユースケースは難易度が高く、市場参入のアプローチが課題となっています。実際、HumaneのAI PinはHPへの資産売却とともにサービス終了という結末を迎えてしまいました。Limitlessの記録用ウェアラブルプロダクトのような、補助具としてのアプローチも登場しましたが、ユースケースが限定的であるため一般普及にはなお課題が残ります。
この点、「子ども市場」
初めからスマホを持たない層(子ども)
こうしたハードウェア市場の参入設計と、生成AIを活用したコンテンツのスケール戦略を組み合わせることで、Yotoは生成AI時代のデバイス企業として成功を収めるかもしれません。
8月19日〜9月1日の主要ニュース
ノーコードウェブ構築「Framer」、評価額20億ドルで1億ドル調達
デザイナーや企業がWebサイトを構築・運用できるノーコードツールを提供する「Framer」
同社は昨年末にビジネスプランを導入して以降、新規顧客の大半がこのプランを利用。Miro、Perplexity、Scale AIのほか、Y Combinator直近バッチの40%が採用しているという。月間アクティブユーザーは50万人超で、今年の年次経常収益(ARR)
スリープテック新星「Sleep.ai」、550万ドル調達
睡眠パターンを解析し、関連企業各社に睡眠計測・コーチングのソフトウェアを提供する「Sleep.ai」
同社は8億時間超の独自睡眠データ、250件超の科学研究、90本以上の査読論文と特許群を蓄積。世界中の商用パートナー経由でAI睡眠ソリューションをスケールさせている。
推計では睡眠不足による経済損失は4,110億ドルに達し、米国では閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)
90秒で処方箋、視力検査キオスク「Eyebot」が2,000万ドル調達
医師の常駐を必要とせず90秒で処方箋まで生成できる視力検査キオスクを展開する「Eyebot」
キオスクはモール、大学、小売店、薬局、スーパー、学校、空港に設置され、無料の90秒検査を提供。各テストは有資格の眼科医がレビューして処方を承認する仕組みで、45,000件超の無料検査を実施済み、年間50万件超の提供ペースを目指すとしている。 — 参考記事
アーティストのライブ配信「BIGC」、シリーズAで1,400万ドル調達
アーティストがライブ配信やチケット・グッズ販売、ファンとの交流をワンストップで展開できるデジタルプラットフォームを運営する「BIGC」
Nextrans、NAU IB、Hana Ventures、IBK(KDB産業銀行)
同社は韓国の主要メディア企業やK-POP・K-アーティストなど130超のチームと連携し、直近ではJ-POPや世界的アーティスト、フェスIPへ拡張。サービス開始から2年で224カ国に展開し、会員数は110万人超に到達。約80%が海外ユーザーで、日本、中国、北米でユーザー数を伸ばしている。 — 参考記事
K-12向け資金調達SaaS「Boost My School」、1,000万ドル調達
K-12の学校向けに、オンラインチャリティーやイベント活動を一元管理できる資金調達プラットフォームを提供する「Boost My School」
同社プラットフォームは、数百校が利用し昨学年度だけで1億ドル超を10万人の寄付者から集めた実績を持つ。顧客満足も高く、継続率98%・NPS85を記録。
BlackbaudのSocial Good Startup Programおよびアクセラレータにも採択されており、学校側は年次寄付、同窓会、オークション、ゴルフ大会、ギビングデーまでワークフローを統合・効率化できる。 — 参考記事
(執筆: Universe編集部)