「ゲームD2C」の時代へ。Appchargeが描く次世代プラットフォーム【GB Tech Trend #128】

ゲーム開発者が直接ゲームアプリを配信したり、バーチャルアイテムを販売できたりする「Appcharge」。売上の30%ほどを手数料として徴収する、従来の大手アプリプラットフォームからの脱却というコンセプトで注目されています。

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2,600万ドルの調達を発表した「Appcharge」(Image Credit: Appcharge)

執筆:Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

「ゲーム×D2C」のサービスが登場

モバイルゲーム業界にD2C(Direct-to-Consumer)の考えを持ち込んだ「Appcharge」が、シリーズAラウンドで2,600万ドルの資金調達を発表しました。現在の企業評価額は1億ドルに達し、ユニコーン企業入りを果たしています。

Appchargeは、ゲーム開発者が自社のウェブストアを開設して、直接ゲームアプリを配信したりバーチャルアイテムを販売できたりするプラットフォームです。「ゲーム版Shopify」とも捉えられるサービスコンセプトで成長を続けています。同社のブログ記事によると、売上高で年間2億ドル、前四半期ベースで3倍の売上成長を遂げていると発表しています。

目指すは、Apple・Googleからの脱却

これまで、モバイルゲームの収益化はAppleやGoogleのアプリストアを経由するのが一般的でした。しかし大手アプリプラットフォームは、売上の30%を手数料として徴収する寡占的アプローチを採用しており、度々批判されてきました。対してAppchargeでは、同社サービスを使うことでゲーム開発者は最大95%ほど収益を確保できるようになります。

Appchargeの特徴は具体的に3つ挙げられます。

  1. ゲームスタジオが独自のストアを立ち上げてゲームアプリを配信できる「ブランドストア構築」
  2. 500を超える支払い方法と80を超える通貨をサポートする「グローバル対応の決済システム」
  3. 既存のアプリに簡単に統合できる「アプリ内決済用SDK」

これらの機能を活用することで、ゲーム開発者はAppleやGoogleといった大手プラットフォームの制約から脱却し、収益性を大幅に向上させることができます。

「プラットフォーム搾取」問題は、Epic GamesやSpotifyが訴訟を起こしたことでも知られるように業界全体で課題視されてきましたが、Appchargeのアプローチはこうした“アプリプラットフォーム税”に対するアンチテーゼとして評価されてきています。

”ゲーム大国”日本でも可能性が?

Appchargeの公式ブログによれば、ゲームアプリの売上上位のパブリッシャーのうち平均72%がウェブストアを運営しているとあります。また、モバイルゲームアプリの中でもソーシャルカジノゲーム・カテゴリーでは、上位20アプリのうちすべてのパブリッシャーが独自のウェブサイトを立ち上げているとも報告しています。

ソーシャルカジノゲームは、ARPU(1ユーザーあたりの平均売上)が比較的高く、課金ユーザーの10%をウェブストア経由に移行するだけで、プラットフォーム税を逃れることができるようになるそうです。Appchargeが顧客に抱える大手ゲームパブリッシャーのPlaytikaの事例でもこの試算が紹介されています。

Playtikaは2023年に、2022年度比5.4%増の6.39億ドルのD2C経由(ウェブストア経由)の売上を計上しており、総収入の24.9%を占めたそうです。加えて、同年に1,700万ドルのコスト削減に成功しました。その理由として、有料アプリ購入に際して発生するプラットフォーム手数料の減少(800万ドルほど)と、アプリ内購入の決済処理手数料が30%から3~4%にまで減少したことが挙げられるとしています。

一方、ソーシャルカジノゲームではなく「カジュアルゲームアプリ」のカテゴリーでは、上位20アプリのうち30%ほどしか独自のウェブサイトを立ち上げていません。この理由についてAppchargeは、カジュアルゲームアプリは一般的にARPUが低く、ウェブストアを公開してもそこへかなりの数のユーザーを送客しない限り、まとまったD2C売上が立たないためであると語っています。そのため、いまだにゲームパブリッシャーがプラットフォームに依存せざるをえない状況が続いているとのことです。

適したゲームカテゴリーはあるにせよ、開発者がプラットフォームに依存せず、自ら顧客基盤を築くことで収益を最大化できる「ゲームD2Cモデル」は日本市場でも大きな可能性を秘めています。日本ではモバイルゲームが非常に人気である一方、AppleやGoogleの手数料問題が他国同様に存在しています。この点を突くような、日本版Appchargeが台頭してもおかしくはないはずでしょう。

11月19日〜12月2日の主要ニュース

2,000万ドルの調達を発表した「Levanta」(Image Credit:Levanta)

クリエイターとAmazonセラーをつなぐプラットフォーム「Levanta」、2,000万ドル調達

Amazonセラーとクリエイター、インフルエンサー、アフィリエイターを結びつけ、商品の販売を促進するアフィリエイト・マーケティング・プラットフォーム「Levanta」が、シリーズAラウンドで2,000万ドルを調達した。

数千のクリエイターとパブリッシャーを抱えるLevantaは、直近30日間の実績に基づくと、年間2億8600万ドルのGMVを生み出すと予測されている。また、すでに米国、英国、カナダ、フランス、ドイツの5大Amazon市場をサポートしており、2025年初頭にはスペインとイタリアでもサービスを開始する予定とのこと。— 参考記事

タンパク質研究の支援AIプラットフォーム「Cradle」、7,300万ドル調達

科学者が様々な用途向けにタンパク質を設計・最適化するのを支援するAI搭載のプラットフォーム「Cradle」は、IVPがリードするシリーズBラウンドで7,300万ドルを調達した。以前からの投資家であるIndex VenturesとKindred Capitalも参加した。 同社は総額1億ドル以上を調達している。

Cradleの利用企業では、実験回数を最大90%削減することができたと報告されている。 顧客企業の一例では、従来は10回もかかるP450酵素の活性をわずか3回の実験で済ませ、実験スピードを約4倍に高めたとしている。

従来のプロジェクトでは、タンパク質を改善する明確な方法がない場合、実験自体がキャンセルされることが多い。 しかし、同社のAIは、予想外の新しい解決策を提供することができ、プロジェクトの成功の可能性を高めることができるという。— 参考記事

AIアバター生成プラットフォーム「Amigo」、630万ドル調達

コーチ、コンサルタント、教育者などの専門家が、AIを活用したデジタルアバターを作成できる「Amigo」は、General CatalystとGSV Venturesが共同リードを務め、Comma CapitalとCohoVCが参加したシードラウンドで630万ドルを調達した。

従来、コーチであれば週に20人、セラピストであれば30人、コンサルタントは3~4人の主要クライアントにサービスを提供するのが限界数。

キャパシティの問題がある一方、コンサルタントであれば1時間あたり1,000ドル以上、一流のエグゼクティブ・コーチは3,000ドルと高額な料金設定になっている。 こうしたキャパシティがもたらす料金の問題も含め包括的に解決するのがAmigoのアバターサービスであるとしている。— 参考記事

フィットネス初心者を取り込むアプリ「Ladder」、1,500万ドル調達

ピラティス、ボディビル、ケトルベル・トレーニングなど様々なトレーニングスタイルを網羅し、専門コーチが作成したワークアウトプランを毎日配信するアプリ「Ladder」が、シリーズBラウンドで1,500万ドルを調達した。Point72 VenturesとADvantage VCが共同リードした。

Ladderのユーザーは1,500万回以上のワークアウトをこなし、Ladderジャーナルに9,000万件のエントリーを記録し、進捗状況を追跡しているという。ユーザーの65%が少なくとも週に1回はジムで同社アプリを利用している。ユーザーのうち50%はフィットネス・アプリを試したことがない、フィットネス初心者が占めているという。— 参考記事

SalesforceやAtlassianが活用するデモ作成プラットフォーム「Arcade」、1,400万ドル調達

チームが迅速かつ簡単に製品デモを提供できるインタラクティブ・デモ・プラットフォーム「Arcade」は、Kleiner Perkinsがリードを務め、Upfront VenturesとFoundation Capitalが参加したラウンドで1,400万ドルを調達した。

Arcadeの顧客には現在、Salesforce、Zapier、Atlassian、New Relic、Superhuman、Cartaなどが名を連ねている。14,000社以上がこのプラットフォームを利用しているという。— 参考記事