LinkedIn超えなるか。「音声」でビジネスマッチングを行う、注目のサービス【GB Tech Trend #126】

競合もひしめくビジネスマッチングの市場に、AI×音声で挑む「Boardy」。音声だからこそ得られるリッチなユーザー情報を活かして成長できるか、注目が集まっています。

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300万ドルの調達を発表した「Boardy」(Image Credit: Boardy)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

次の仕事に繋がりそうな人を紹介するビジネスマッチングサービス「Boardy」が300万ドルの資金調達を実施しました。この領域では、2015年頃に人気を博した「Weave」や、コロナ禍に急成長を見せた「LunchClub」など、4~5年ごとに業界をリードするスタートアップが登場しています。Boardyもその一端を担えるのか、注目が集まっています。

Boardyは、AIを活用してユーザーのニーズに最も合うプロフェッショナルを紹介するマッチングプラットフォームです。Boardyの特徴的なプロセスは、登録後に実施されるAIとの15分間のヒアリング電話です。ユーザーの仕事や関心分野、将来的なキャリアビジョンに関する詳細な情報をもとに、AIが精緻なプロファイリングを行います。このプロファイルに基づいて、AIがBoardyネットワーク内から仕事に繋がりそうな人を選び、おすすめします。

「ビジネスマッチング」自体は珍しくない

ビジネスマッチングサービスは新しいアイデアではありません。2015年頃に「Tinder版LinkedIn」として注目されたWeaveも同様のネットワーキングサービスを提供していました。Weaveのマッチングは恋愛系マッチングアプリと同様のUIを用いて、ユーザーが会いたい相手のタイプをスワイプして探すことができるアプリです。

しかし、サービス規模が大きくなるにつれ質の高いユーザーが集まらず、期待する精度や効果が得られないケースが多数発生しました。また、Weaveは月額15ドルのプレミアムプランを提供していましたが、利用価値に対して価格設定が高いと感じるユーザーが多く、継続率が低下。AIによる「関連性の高いマッチメイキング」を実現できていない状況では、ユーザーが有料会員になる動機を保ち続けられなかったと考えられます。

Weaveの次に登場したのが、先述のLunchClubです。同社はBoardyと同様に、AIを用いたマッチング技術を基にしたプロフェッショナルネットワーキングサービスを展開しています。ユーザーは事前に職務経歴や趣味・関心、キャリアゴールなどをアンケートに記入。それをもとに、AIが最適な候補者を選定し、テレビ電話を通じてマッチングを行います。

LunchClubは順調な成長を見せています。同社に投資したLightspeedの記事によると、コロナ禍のバーチャルマッチング需要に応える形で、2020年3月までの半年間で月間アクティブユーザーが4倍に増加しました。また米国企業は年間400億ドル以上を採用や専門能力開発に、対面式会議やイベントには2,000億ドル以上を費やしていますが、これらの市場は今後数年間で10%以上がオンラインに移行すると予測されています。LunchClubはこの市場を狙っているわけです。

LunchClubの成長を促したのは市場の流れだけではありません。同サービスは仕事以外にも、出生地や出身校など、マッチングした人同士が強い共感性を持つ要素をアルゴリズムで計算してレコメンドしていますが、このマッチング結果に対して約20%のユーザーがフィードバックを行っています。このユーザーからのフィードバックループがレコメンド精度を向上させ、サービスを後押しているといえます。

こうしたプロダクトループを構築するためには、多くのビジネスプロフェッショナルが登録する一定以上のコミュニティが必要です。サービスが立ち上がったばかりのBoardyにとっても、良質なプロフェッショナルを獲得できるかが初めの関門になると言えるでしょう。

競合プレイヤーには「LinkedIn」も

Boardyにとっての壁はLunchClubだけではありません。プロフェッショナルネットワーキング市場の巨人であるLinkedInも見逃せないプレイヤーです。

LinkedInは膨大なユーザーベースと信頼を築いており、また将来的にはAIを活用したより精度の高いプロファイリングとレコメンデーションの機能の提供も予想されています。LinkedInにはユーザーが持つスキルや経験を推薦する「Endorse」機能がすでに導入されていますが、ここにAIによるプロフェッショナルマッチングが本格実装されれば、LunchClubはもちろんBoardyにも手が届かないアドバンテージとなるでしょう。

Boardyの勝機はどこにある?

LinkedInやLunchClubが立ちはだかる市場でBoardyに勝機があるのか疑問に思われるかもしれません。Boardyが持つ彼らとの最大の違いは、電話を通じて人の音声からプロファイリングをしていくという点です。この音声分析の点でBoardyには技術的な優位性があると見込まれています。

音声を通じて、ユーザーの本音や些細ではあるものの重要な情報を拾い上げ、マッチングへと活かす一連のサービス体験は差別化できる大きなポイントです。音声だからこそ取得できるリッチな情報でAIやマッチングの精度を高められれば、同社の成長エンジンにもなるでしょう。まさにそうした点が、今回の資金調達ラウンド後に投資家からも期待されています。

仮にビジネスマッチング市場で広がりを見せられなかったとしても、このAI技術を応用した展開も予想されます。ビジネスマッチングプレイヤーとしてどこまで成長できるのか、あるいはAI音声技術スタートアップとしてどのようなアプローチで活躍していくのか、注目したいところです。

10月22日〜11月4日の主要ニュース

800万ドルの調達を発表した「MealMe」(Image Credit:MealMe)

食品注文のAPIを提供する「MealMe」、シリーズAラウンドで800万ドル調達

北米の100万以上のレストラン、食料品店、小売店からの食品注文を他のアプリやウェブサイトに可能にするAPIを提供する「MealMe」は、Mercury FundがリードしたシリーズAラウンドで800万ドルを調達した。以前の投資家であるPalm Drive CapitalとGaingelsも出資した。

同社のAPIは、米国とカナダの120万以上の食料品店、レストラン、小売店から10億以上の商品の在庫データを提供している。 現在、Fantuan Delivery、Favor Delivery、Tripadvisorなど100以上の顧客にサービスを提供している。— 参考記事

AIデータ収集のためのインセンティブプラットフォーム「Sapien」が1,050万ドル調達

AIインセンティブプラットフォーム「Sapien」は、Variantをリードに、Primitive Ventures、Animoca、Yield Game Guild、HF0も参加したラウンドで1,050万ドルを調達した。

Sapienは、USDCのステーブルコインや報酬ポイントシステムで、増え続けるデータラベリングワーカーにインセンティブを与えている。

データ作業とはAIモデル開発に必要な教師データを収集する作業全般のことで、交通標識のような日常的なアイテムのラベリングから、特定の種類のがん細胞のピンポイント特定まで、何でもあり得る。

同社はCoinbaseのレイヤー2ネットワーク「Base」の元共同開発者であるRowan Stone氏と、Polymathの創設者でありRWA標準ERC1400のクリエイターであるTrevor Koverko氏が設立した。— 参考記事

音楽アーティストのカタログ権利を買い取る「Duetti」、3,400万ドル調達

音楽カタログの著作権/販売権を獲得して、音楽アーティストに楽曲の前払い金を支払うフィンテック企業「Duetti」は、3,400万ドルのラウンドを調達した。 Flexpoint Fordがリードを務め、Nyca PartnersとViola Venturesらがラウンドに参加した。

SadBoyProlific、Savannah Dexterを含む500人以上のアーティストと協力し、通常1万ドルから300万ドルの資金と引き換えに、彼らのトラックやマスターカタログ全体を購入している。— 参考記事