Chromeアプリに300万ユーロ?欧州で独自の進化を遂げる「価格比較サービス」【GB Tech Trend #116】

AmazonやPatagoniaなどのサイトで検索した際、正規ブランド品に代わる、安い中古品の掲載サイトを提案してくれる「Faircado」。欧州の脱炭素への意識向上を追い風にして人気を集めています。

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300万ドルの調達を発表した「Faircado」(Image Credit: Faircado)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

高価なブランド商品を検索する中で、中古品を検討することもあると思います。しかし、正規ブランドサイトの他に、中古サイトをいくつも検索するのは手間ですよね? ということで、これを解消するために登場したのが、今回紹介する「Faircado」です。

Faircadoはドイツを拠点とするスタートアップで、300万ユーロ(約308万ドル)の資金調達を公表しました。同社はChromeの拡張機能アプリを提供しており、インストールすると、AmazonやPatagoniaなどのサイトで検索した際、正規ブランド品に代わる、安い中古品の掲載サイトを提案してくれます。収益源はアフィリエイト広告が主になっているとのことです。競合も立ち上がっており、たとえば「Beni」のような中古品提案エクステンション(拡張機能)が登場しています。

そもそもヨーロッパは新たな商品を製造することを抑え、脱炭素活動に繋げる意識が強くあり、Faircadoのようなサービスは追い風を受けやすい環境にあります。大量生産・大量消費を見直すサービスにも注目が集まっており、たとえばイギリス拠点のZ世代向け古着マーケットプレイス「Depop」は累計で1億ドル以上の調達に成功しています。こうした市場環境に加え、正規ブランドサイトを確認してから中古品選択肢も検討するユーザーフローに着目したのがFaircadoと考えられます。

また、2019年にPaypalが40億ドルで買収したChromeエクステンションサービス「Honey」の存在も、Faircadoの活躍を後押しています。Honeyは、より安い商品サイト提案や、価格履歴を分析した上での最安値タイミングの通知、クーポンを提案してくれるサービスです。買収時には月間ユーザーが1,700万人もいるほどの人気ぶりでした。デスクトップ環境を軸とした展開だけで、これほどのエグジット事例が出たことから、Faircadoも投資家からの信頼を獲得しやすかったと想像できます。

日本において、こうした価格分析系サービスで言うと「価格.com」が有名ですが、いまだに新時代の「価格.com」の立ち位置を取るスタートアップは登場していない印象です。ヨーロッパと日本ユーザーの感覚は大きく異なり、Faricadoのような環境保全を意識したサービスメッセージで市場を大きくとれるとはあまり思えませんが、シンプルに価格比較の提供価値を新しい世代向けにリブランドするサービスが登場してきてもおかしくないでしょう。世界的に見ると、まだまだエクステンション市場や、それに関連する価格分析領域には注目が集まりそうです。

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