世界の有力VCから1.5億ドル調達。後発のSNSがユニコーン評価を受ける理由とは【GB Tech Trend #115】

ブロックチェーン技術を使って、分散型ソーシャルプロトコルを提供する「Farcaster」。出資にはParadigmやa16z cryptoが参加しています。

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1.5億ドルの調達を発表した「Farcaster」(Image Credit: [Farcaster)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

この数年、Web3の考えをSNSに掛け合わせたサービスが多く登場してきました。その中でも、今回紹介する「Farcaster」は、10億ドルのユニコーンステータスの企業評価額で1.5億ドルの資金調達を発表したことから頭ひとつ抜きん出た印象です。出資にはParadigmやa16z cryptoが参加しています。

Farcasterはブロックチェーン技術を使って、分散型ソーシャルプロトコルを提供するスタートアップです。X(旧Twitter)ライクのSNSアプリ「Warpcast」と、ゲームなどのアプリを実装できる機能「Frames」をFarcasterのプロトコル上で展開しています。

Warpcastは年間7ドルから利用できるSNSです。アプリ内通貨を使って他のユーザー投稿に投げ銭できる機能が実装されており、Warpcastを積極的に利用するユーザーのインセンティブになっています。

Warpcastを盛り上げる要素はいくつかありますが、中でも注目されているのが「Frames」との連携です。Framesを使うと、自分のWarpcast内投稿に新たな機能を付け足せるようになります。

たとえばFramesで作られた「Warpshop」は、Farcasterプロトコル上で運営できるネットショップのプラットフォームで、日本でいうBASEのようなサービスとも言えます。WarpshopはCoinbase Commerce APIと連携しているので、クリプトによる決済も可能です。

WarpshopはWarpcastの投稿にも紐づけられます。Xのような見た目のSNSの中に、自分のショップを立ち上げて展開できるようなイメージです。EC以外にもミニゲームやDAO投票、カレンダー予約アプリなどがFramesを使って続々と立ち上げられています。

従来のSNSでは、ゲームやECのような機能はFacebookやXなどの運営会社が実装しなければ実現しませんでした。しかし、WarpcastではFramesを使うことでユーザー自身が実装できるわけです。ユーザーのクリエイティブな表現によって、Warpcastのエコシステムを多様に成長させていけると言えます。

WarpcastのDAUは8万程度と決して多いとは言えません。そんな中でも大型調達を成功できたのは、Farcasterが描く、真に自由なSNSを目指すプロトコル思想が刺さったからだと考えられます。共同創業者がいずれもCoinbase出身であることも高く評価されているはずです。

Framesでミニアプリが大量に登場し、その出口としてWarpcastが使われ、エコシステムが大きくなってユーザー数が増えていく。Farcasterはそうした成長フェーズに入りつつあると想像されます。

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