自分のデータも販売可能に?Web3技術が生んだ「個人情報」の新たな潮流【GB Tech Trend #114】

ユーザーが自分の個人情報等のデータを取り扱えるようにする「CARV」のプロダクト。こうしたサービスの登場により、長らく世界のメガテック企業によって独占されてきた巨大データ市場が開かれるかもしれません。

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1,000万ドルの調達を発表した「CARV」(Image Credit: CARV)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

Web3領域では「SSI」(= 自己主権型アイデンティティ)をテーマにしたスタートアップが成長を続けています。今回紹介する「CARV」は、シリーズAラウンドにて1,000万ドルの資金調達を行ったことを発表しました。同社は、ユーザー自身が自分のオンライン個人情報等のデータを取り扱えるようにするSSIに関するプロダクトを開発しています。

CARVのプロダクトを用いると、AIモデルトレーニングやサービス市場調査などを行いたいブランドや企業は、ブロックチェーン技術を活用してユーザーデータを購入できます。また、そこで発生した報酬はユーザーに分配されます。扱われるデータはユーザーが所有するWeb3ウォレットと接続して運用され、企業との取引内容はすべてオンチェーン上に記録されるので正確な収益分配が可能です。

ユーザーデータの所在や活用方法については、頻繁に議論されてきました。私たちはよく、何か新しいサービスへ登録する際、Facebook、X、AppleやGoogleといった大手プラットフォームサービスと連携して必要情報をプラットフォーム経由で共有し、その登録プロセスを省略します。

しかし、SNSの個人情報流出がしばしば発生したことで、プラットフォーム側へデータ管理を一任するリスクが顕在化しました。また、プラットフォーム側がビックデータ解析や広告を含む自社サービスへ個人情報を使い、その利益を独占している実態も明らかになるにつれて、改めて個人情報のあり方を考えさせられる機会も増えています。SSIの概念は、こうしたプラットフォームとユーザーである私たちの乖離を埋めるようにして市場に登場したのです。

こうした背景からCARVのようなサービスが注目されるようになりました。CARVを使うと、ユーザーは統一された相互運用可能なIDを集約、所有、管理できるようになります。それだけでなく、自分のIDを選択的に共有できるようになり、プライバシー性やデータ安全性を確保できるわけです。この辺りは第三者からもデータを可視化できるブロックチェーン技術ならではの恩恵だと言えます。

CARVの競合には、Snickerdoodle LabsやOamo、Jomoの3社が挙げられます。いずれも、ユーザーが金銭的な割引や報酬と引き換えに、自身のデータ共有を選択できるようにするSSIに基づいたサービスです。こうしたサービスが台頭することで、従来のプラットフォームが独占してきた巨大データ市場が開かれるかもしれません。

4月30日〜5月12日の主要ニュース

52億ドルの評価額で資金調達を実施した「Monzo」(Image Credit:Monzo)

ネオバンク「Monzo」、評価額52億ドルでシリーズIラウンド調達

ロンドン拠点のネオバンクである「Monzo」は、シリーズIラウンドで1億8,780万ドルの資金調達を行い、評価額は52億ドルとなった。投資家には、Hedosophiaのほか、以前の出資者であるCapitalG、GV、HongShan Capital、Passion Capital、Tencentが含まれる。同社は2024年に6億1,000万ドル以上、総額15億ドルを調達している。— 参考記事

OpenAIの競合「Mistral AI」、60億ドルの評価額を目指す

OpenAIに対抗するオープンソースLLMを開発するパリのスタートアップ「Mistral AI」は、半年前にクローズした前回のラウンドのほぼ3倍となる60億ドル評価額で資金調達を目指していると報じられた。— 参考記事

ゼロ知識証明の「Lagrange Labs」が1,320万ドルの資金調達

ブロックチェーン取引用のゼロ知識証明を作成、検証するソフトウェアを開発する「Lagrange Labs」は、Founders Fundがリードするシードラウンドで1,320万ドルを調達。Archetype Ventures、1kx、Maven11、Fenbushi Capital、Volt Capital、CMT Digital、Mantle Ecosystem Fundも出資した。— 参考記事

Andreessen Horowitzがリードする「Yellow」、シードラウンドで500万ドル調達

ゲーム開発者が3Dモデルを作成するプロセスを効率化するために設計されたAIを搭載したツールを開発する「Yellow」は、Andreessen Horowitzからシードラウンドで500万ドルを調達した。— 参考記事

ブラウザベースのゲームプラットフォーム「Jamango」250万ドルを調達

ブラウザベースのインスタントゲームのゲーム作成プラットフォームに取り組む、アイルランド拠点のスタートアップ「Jamango」は、ElkstoneとDelta Partnersが共同でリードするプレシードラウンドで250万ドルを調達した。— 参考記事