Googleとはまったく違う、検索体験ができるブラウザに注目【GB Tech Trend #112】

AIを用いた新たな検索サービス「Arc Browser」。これまでのブラウザとは大きく異なる、斬新なUIをご紹介します。

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5,000万ドルの調達を発表した「Arc Browser」(Image Credit: Arc Browser)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

Google検索に挑むブラウザー開発「Arc Browser(以下、Arc)」は、5.5億ドルの企業評価額で、5,000万ドルの資金調達を実施したと発表しました。累計調達額は1.28億ドルに及びます。

Arcの特徴は3つほどあります。まず、Arcは検索結果画面を表示しません。従来のGoogle検索では無数の検索結果が広告も含めて表示されますが、Arcではキーワード入力後に直接サイト内のコンテンツに移動できます。もしはじめに表示されたサイトが適切でない場合は、5~6個の候補サイトから選んでいく形です。キュレーション機能を軸に置いているUXと言えるでしょう。

最も注目すべき特徴は「Browse for Me」機能です。ユーザーが検索キーワードを入力すると、Arcが関連するコンテンツ(ウェブサイト、写真、動画など)を自動的に収集し、1つのページにまとめて提示してくれます。いわば、リサーチ結果がNotionの1ページにまとめられるようなイメージです。さらにレストラン予約などもArc上で完結できるため、検索体験のラストワンマイルまでカバーするUXになるのではと期待が寄せられています。

詳しい使い方は以下の動画をご覧下さい。

UIは最近のトレンドに倣ってNotionやSlack、Discordライクなものとなっており、検索結果のタブ管理をしやすくなっています。ChatGPTがそうであるように、Arcも自社AIエージェントによる検索という価値を最大限活かすために、タブ管理UIにたどり着いたのかもしれません。

さて、長年Google検索に対抗し得るサービスに調達が集まっていましたが、いまだかつて市場シェアをGoogleから奪うことはできていません。たとえば、ユーザーデータが追跡されることはなく、パーソナライズ検索結果が返ってくる仕組みを採用していた「Neeva」は、月額10ドル前後の有料サブスクから収益化を図ろうとしていた検索スタートアップでした。7,700万ドルもの調達に成功していましたが、消費者向けの検索市場でのユーザー獲得に限界を感じ、エンタープライズ向けの検索AIサービスへとピボット、最終的にはSnowflakeに買収されています。

Arcに関しても、検索結果一覧を表示させない体験を提供することから、Neeva同様にサブスク型の収益モデルになると予想されます。いずれAIによるキュレーション機能のリクエスト数に応じた利用料金体系になることも想像に難くありません。

しかしながら、Neevaが辿ったように、一般消費者の検索市場は体力勝負であり、ユーザー数がすべてとなります。課金タイミングを初期段階から行ってしまうと、獲得競争に負けてしまい、グロースは難しくなってしまうかもしれません。さらに、AIによるウェブサイトコンテンツのダイレクト表示機能は、SEOなどで長年の慣例に倣ってきた業界構造を変えることもあり、反発する人も一定数いることでしょう。こうしたしがらみのなか、AIを用いた新たな検索サービスが難しい戦いを勝ち切れるのか注目が集まります。

3月26日〜4月8日の主要ニュース

750万ドルの調達を発表した「Raiinmaker」(Image Credit:Raiinmaker)

Web3とAIのマーケティングキャンペーン「Raiinmaker」750万ドル調達

Web3とAI技術を活用し、マーケティング・キャンペーンに貢献したユーザーに暗号資産で報酬を提供する企業「Raiinmaker」は、Jump CapitalとCypher Capitalが共同でリードし、Gate.io Labs、MEXC Global、Krypital Group、Alphabit、Launchpool、New Tribe Capitalも参加したラウンドで、750万ドルの資金を調達した。— 参考記事

企業とアンバサダーを繋げるデジタルメディアプラットフォーム「Greenfly」1,400万ドル調達

スポーツとエンターテインメント分野をターゲットに、企業とそのアンバサダー(ソーシャルインフルエンサー、アスリート、有名人など)を結びつけ、写真やビデオを収集・共有するデジタルメディアプラットフォーム「Greenfly」は、ADvantageがリードするラウンドで1,400万ドルを調達した。Ryan Sports Ventures、Mercato Partners、NBAのほか、これまでの投資家であるVerance Capital、Iconica Partners、Alpha Edison、Elysian Parkも参加した。— 参考記事

Web3ベースのソーシャルシミュレーションゲーム「TODAY」500万ドル調達

生成AIのNPC(ノンプレイヤーキャラクター)を特徴とするウェブ3ベースのソーシャルシミュレーションゲームを開発した「TODAY」は、SfermionとBig Brainが共同でリードするシードラウンドで500万ドルを調達した。GSR、Collab+Currency、Lingfeng Innovation Fund、Compute Ventures、Builder Capital、Tommy Tran、Metavest Capital、32 Bit Ventures、Dingaling、Grail、Spirit DAOも本ラウンドに参加した。— 参考記事

AIを活用した食肉業界のサプライチェーン最適化「Völur」290万ドル調達

食肉業界のサプライチェーンを最適化し、市場の需要を予測するためのAIによるインサイトを提供する「Völur」は、290万ドルの調達を発表した。投資家には、Serra Ventures、York IE、SARIAのほか、Idékapital、Fusion Fund、Fortress Fundが名を連ねた。— 参考記事

マルチメディアストーリーを生み出す「Storiaverse」250万ドル調達

作家やアニメーターがマルチメディアストーリーを作成するためのモバイルアプリを開発する「Storiaverse」は、500 Globalがリードしたプレシードラウンドで250万ドルを調達した。— 参考記事