GB Tech Trend #107: 企業に「金融機能を追加」する次世代融資「Kashable」のビジョン

「融資が必ず返済される銀行」を目指しています。

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2,560万ドルの調達を発表した「Kashable」(Image Credit: Kashable)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

企業に伴走する「備え付け銀行サービス」に注目が集まっています。今回、2,560万ドルを調達した「Kashable」は、福利厚生の一環で、従業員のクレジット向上やファイナンシャルサービスを企業に提供するフィンテックスタートアップです。

従業員の給与額に基づいて、返済不履行にならない額の融資を提供したり、クレジット向上を目的としたファイナンシャルプランの提案をしたりしています。TechCrunchの記事によると、Kashableは各従業員の雇用データだけでなく企業の収益安定性も検討した上で、サービスを提供しているとのことです。融資をした場合、給与から天引きされる形で返済されていきます。Kashableと同じ業態のスタートアップが、過去約5年ほどに亘り資金調達をしたニュースを何度か目にしており、その注目度合いは増しているようです。

さて、Kashableのようなフィンテックプレイヤーが目指すのは「融資が必ず返済される銀行」というビジョンです。従来、銀行は返済不履行の可能性があったために利子を設定して、それらを収益源にお金の貸付を行っていました。

一方、Kashableは給与から天引きされるため「必ず返済できる」額とプランを設定した上でしか貸付を発生させません。言い換えれば、不履行になるリスクを自らほぼゼロにし、利子を付ける必要性を根本からなくそうとしています。これは主な収益源を利子からではなく、企業の福利厚生サービスの利用料にしているために実現できているビジョンです(現在のKashableではあくまでも融資なので一定額の利子は未だついている模様)。つまりビジネスモデルキャンバスで言うところの「稼ぎ方」と「提供価値」を変え、「返済を前提とした銀行」のビジネスモデルを変化させたわけです。

こうした銀行のモデルは、お金を貸し出す際に発生する「利子」の概念がなくなり、信用の度合いをわざわざ計る必要が全くない世界の実現を目指します。実際、先述の記事によると、Kashableの利用者は「サブプライム」から、「プライム」へとクレジット評価を高めた人が2/3ほどいるそうです。給与天引きだからこそできる、確実な返済能力を前提とした生活者を増やしているのがKashableです。

市場の展望としては、BNPL(Buy Now Pay Later/後払い)の課題解決に向けて、いずれ同じモデルが採用されるかもしれません。欧米では、toC利用者向けに、買い物や旅行資金を貸し出すために少額を貸し付けるサービスが多く登場する一方、貸付額を返済できない見込みの人を大量に生み出していることが社会課題化しつつあります。こうした市場課題に対処するため、例えばKashableと同様のモデルを、パートタイムのバイトにも提供するサービスが予想されます。

1月16日〜1月29日の主要ニュース

250万ドルの調達を発表した「ViralMoment」(Image Credit:ViralMoment)
250万ドルの調達を発表した「ViralMoment」(Image Credit:ViralMoment)

「ViralMoment」、効果的なソーシャルメディア戦略のためにシードラウンドで250万ドル調達

バイラル動画の構成要素を分析・理解するツールを提供する「ViralMoment」は、Supernode Globalがリードを務めたシードラウンドで250万ドルの資金調達を実施した。WPP、Omnicom、Warner Brothersなどのブランドやマーケティング担当者が効果的なソーシャルメディア戦略を立てるのを支援する。Crush Ventures、Duo Partners、Carnegie Mellon University、Techstarsも出資した。— 参考記事

「Sierra」8,500万ドル調達、Sequoia Capitalリードで評価額10億ドルに

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Gen Z投資アプリ「Alinia Invest」が340万ドル調達

Z世代の女性向け投資アプリの開発に取り組む「Alinia Invest」は、F7 VenturesとGFRが共同リードするシードラウンドで340万ドルの資金調達を実施したと発表。Worklife Ventures、FoundersX Fund、Gaingelsも出資した。— 参考記事

遺失物管理サービス「Boomerang」、490万ドルの資金調達を実施

空港、リゾート、スポーツ会場向けに遺失物管理ソフトを提供する「Boomerang」は、LightShed Venturesがリードし、GGV、GoldHouse、Harlo Capital、Dream Ventures、Lake Nona Fund、SeventySix Capitalらが出資したラウンドで490万ドルを調達した。— 参考記事

「CardioSignal」シリーズAで1,000万ドル調達、心臓モニタリング技術に注力

スマートフォンのセンサーを使って心臓の健康状態をモニターし、潜在的な問題を検出する「CardioSignal」は、DigiTx PartnersがリードするシリーズAラウンドで1,000万ドルの資金調達を実施したと発表。同社は総額1,520万ドルを調達している。— 参考記事

「Heex」650万ドル調達、自律走行車データの処理プラットフォーム強化

自律走行車によって生成される大量のデータの処理と分析を支援するプラットフォーム「Heex」は、Shift Invest、Karista、Techstarsから650万ドルの資金調達をしたシードラウンドをクローズした。同社は総額1,000万ドルを調達している。— 参考記事