GB Tech Trend #102: 親が子供に代わって投資するEarlyBird、人生最初の「口座獲得」を狙う独自戦略とは

家族の思い出と一緒に投資が積み上がるというユニークな設計で長く使ってもらおうとしているのです。

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450万ドルの調達を発表した「EarlyBird」(Image Credit: EarlyBird)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

親から子供へ投資を「贈る」習慣を根付かせようとしている、フィンテック企業「EarlyBird」が450万ドルの資金調達を発表しました。同社の資金調達総額は1,090万ドルに達しています。

EarlyBirdは、親が子供へ投資できるアプリを提供しています。米国ではUGMA(Uniform Gifts to Minors Act:未成年者への贈与に関する法律)が設けられていて、親が未成年の子供のために投資できる権利が認められています。親が代理投資家として有価証券の保管・管理等をするための「カストディアル口座」を作成し、株式や債券、投資信託へ投資できるようになります。子供の年齢が18歳(州によっては21歳)になると投資金は子供のものになります。この仕組みを使っているのがEarlyBirdです。

EarlyBirdの戦略ポジションは「一番最初の口座」になることです。過去10年で、未成年およびティーン層向けのフィンテック市場は様変わりしました。10代のうちから「Step」のようなデジタルバンクサービスを使ってクレジットを貯めたり、「Greenlight」を使って親が管理するデビットカードと預金口座を開いたりと、口座開設や金融カードの利用開始年齢が下がってきています。大学入学後、多くの人が大手銀行で普通口座を開きますが、その前に利用してもらう「最初の口座」の市場ポジションを狙っているスタートアップのひとつがEarlyBird、というわけです。

ただし、彼らのアプローチは独特です。

先述したStepやGreenlightは、子供が実際にお金を使いながら金融リテラシーを育んでいくことから、あくまでも子供が主体のサービス体験になっています。他方、EarlyBirdの場合は、生まれた時から継続的に親が子供へ投資をするため、あくまでもユーザー主体は親です。そのため、他のフィンテックサービスとは違う体験設計になっています。

具体的には、子供との記録映像や写真を親族や友人とシェアすることをモチベーションにした導線設計になっています。例えば入園、卒園などの記念行事があった時、その記念に投資をすると同時に、どのような想いでこの投資をするのかといった思い出を一緒にEarlyBirdにアップできます。家族の思い出と一緒に投資が積み上がるというユニークな設計で長く使ってもらおうとしているのです。

子供の物心がつかないタイミングからその子の人生設計が考えられて投資がされるため、EarlyBirdには利用する家族のことを深く知れるコンテンツが貯まるのも特徴です。かなり早いタイミングから金融接点を持つことで、大人になった後に開設する大手銀行への紹介や、そのほかファイナンシャルアドバイザーサービスへの繋ぎ込みなど、多角的に展開することができます。

10月31日〜11月13日の主要ニュース

1,400万ドルの調達を発表した「Snaptrude」(Image Credit:Snaptrude)
1,400万ドルの調達を発表した「Snaptrude」(Image Credit:Snaptrude)

共同設計ソフト「Snaptrude」シリーズAラウンドで1,400万ドル調達

建築家、設計者、開発者、請負業者が建物の設計を共同で行えるソフトウェア「Snaptrude」は、シリーズAラウンドで1,400万ドルを調達したことを発表。FoundamentalとAccelが共同リードした。同社は総額2,180万ドルを調達している。— 参考記事

AIコーディング支援の「Tabnine」シリーズBラウンドで2,500万ドル調達

生成AIでコードを生み出し、開発者がより速く正確にコードを書けるように支援する「Tabnine」は、Telstra VenturesがリードするシリーズBラウンドで2,500万ドルを調達したと発表。Atlassian Ventures、Elaia、Headline、Hetz Ventures、Khosla Ventures、TPY Capitalらが出資。同社は総額5,500万ドルを調達している。— 参考記事

ピア・サポートのための「Forum」、シードラウンドで530万ドル調達

ピア・サポート・グループ向けのマーケットプレイスを開発する「Forum」は、NextView Ventures、MBX Capital、Cue Ball Capital、City Light Capitalが参加するシードラウンドで530万ドルの資金調達をしたと発表。— 参考記事

銀行向けAIスタッフ「Greenlite」、シードラウンドで480万ドル調達

銀行やフィンテックのコンプライアンスチームにAIスタッフを提供し、大規模言語モデルを使用して潜在的なコンプライアンスリスクを調査する「Greenlite」が、シードラウンドで480万ドルを調達したことを発表。Greylockがリードを務め、Y Combinatorも出資した。— 参考記事

AIビデオエディター「Ozone」、シードラウンドで710万ドル調達

AIを使用してコンテンツクリエイターが反復的な編集作業を効率化できるコラボレーティブ・ビデオエディター「Ozone」が、シードラウンドで710万ドルを調達したことを発表。Y Combinator、NEA、General Catalyst、LGVP、Bluewatch Ventures、Polymath Capital Partners、Pioneer Fund、SOMA Capital、Olive Tree Capitalらが出資した。— 参考記事