GB Tech Trend #099: オンライン医療にも「対話型AI」Cortiの可能性

診察内容のドキュメント化や対話の流れから、どのような意思決定を医者がすれば良いのかを提案してくれます。

GB Tech Trend #099: オンライン医療にも「対話型AI」Cortiの可能性のカバー画像
6,000万ドルの調達発表した「Corti」(Image Credit: Corti)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

オンライン診療向けAIサービスを開発する「Corti」が6,000万ドルの資金調達を発表しました。今回のラウンドはシリーズBで、Prosus VenturesとAtomicoがリードを務め、Eurazeo、EIFO、Chr. Augustinus Fabrikkerが出資しています。

Cortiは「AI Co-pilot」という医療向けAIアシスタントを開発しています。患者と医者がオンライン診察をしている際のサポートをしてくれるもので、例えば診察内容のドキュメント化や対話の流れから、どのような意思決定を医者がすれば良いのかを提案してくれます。

パンデミックの影響で世界的にオンライン診療が一般化してきましたが需要が増えた分、一人の患者に対応できる時間が減ってしまい、この限られた時間の中で最適な診療サービスを提供するためにCortiのAIが利用されている、という背景があるのだそうです。

さて、Cortiのような医療分野でのAIアシスタントの利用は、6〜7年前から模索されてきました。例えば予防医療に特化した「Forward」があります。同社はすでにサービス閉鎖済みですが、2.25億ドルの資金調達を行い、Corti同様のユニークなアプローチを採用していました。

Forwardは「医療版Apple Store」をコンセプトにした月額149ドルの病院でした。当時最新だった医療用IoTを備えた病院を全米主要都市に設置し、患者が自分の身体の状態を調べられるようにしたのです。定期的にForwardに通ってもらうことで、予防のための病院の市場ポジショニングを目指していました。Cortiとの共通点は、病院駐在の医師の診療を受ける際、AIアシスタントが診療室の液晶画面に疾患に対する対処アイデアを表示・提案するフローにありました。このForwardの「予防医療領域」は市場ポジションとして可能性はありましたが、病院建設に多額の先行投資を必要としたのが閉鎖に至った要因ではないかと考えています。

CortiはForwardと異なりAIアシスタントによる成長を成功させました。予防医療の観点から患者に寄り添うAIアシスタントの需要は考えられますし、Forwardのような設備先行投資を伴わない分、彼らが獲得できなかった疾患「前」の市場を獲得できるかもしれません。これまで医者リソースが足りなかった領域に、対話型AIが参入できる可能性が広がっていると感じます。

9月19日〜10月2日の主要ニュース

1,680万ドルの調達を発表した「IYK」(Image Credit:IYK)
1,680万ドルの調達を発表した「IYK」(Image Credit:IYK)

Andreessen Horowitzリード、「IYK」がシードラウンドで1,680万ドル調達

AdidasやJohnnie Walkerのようなブランドがデジタル・コレクタブル商品を現実の商品にリンクするのを支援する「IYK」はシード・ラウンドで1,680万ドルを調達した。Andreessen Horowitzがリードを務め、1kx、Collab Currency、Lattice Capital、Gmoneyらが出資した。— 参考記事

AIを活用する「Neara」3Dモデル分野で成長

AIを使用してエンジニアリング・グレードのシミュレーションや分析のための3Dモデルを作成するシドニー拠点の「Neara」は、シリーズBラウンドで2,400万ドルを調達した。投資家にはProsus Venturesのほか、既存投資家のSkip CapitalとSquare Peg Capitalが含まれる。— 参考記事

「Laverock Therapeutics」が遺伝子サイレンシングに1,650万ドル調達

プログラマブルな先進的ヒト治療アプリケーションを開発するための遺伝子サイレンシング・プラットフォーム「Laverock Therapeutics」が、シードラウンドで1,650万ドルの資金調達を実施した。Calculus Capitalがリードを務め、Eli Lilly and Company、Mercia Ventures、Maven Capital Partners、Eos、UK Innovation & Science Seed Fund、Tekfen Venturesらが出資した。— 参考記事

株式交換の「Collective Liquidity」、1,200万ドルの資金調達を発表

従業員が自社株式を交換できる「Collective Liquidity」は、シリーズAラウンドで1,200万ドルを調達した。同社は自社株を大手ユニコーンのような多様なポートフォリオの株と交換でき、単一企業への過度な集中によるリスクを軽減できるとしている。Aliya Capital Partnersがリードを務めた。— 参考記事

メキシコのネオバンク「Albo」、4,000万ドルの資金調達を発表

200万人以上の顧客を持つメキシコを拠点とするネオバンク「Albo」は、Morpheus Venturesがリードを務め、Nazca VenturesとValar Venturesらが参加したシリーズCラウンドで4,000万ドルを調達した。— 参考記事

「The Grand」、シードラウンドで470万ドル調達、エグゼクティブ向けサービスを拡大

エグゼクティブ・コーチング・プラットフォームを運営する「The Grand」が470万ドルの資金調達を発表した。Seven Seven Sixがリードを務めた。— 参考記事