GB Tech Trend #095: デジタルグッズ版Amazon狙う「Whop」、Peter Thielら1,700万ドル出資

従来ソーシャル上で展開されていた広告やスポンサーコンテンツの市場の逆転を狙っていると考えられます。

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1,700万ドルの調達発表した「Whop」(Image Credit:Whop)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

ChatGPTのプラグインからTradingViewのチャートに至るまで、あらゆるデジタルグッズを販売するオンラインマーケットプレイス「Whop」がシリーズAラウンドでの1,700万ドルの調達を発表しました。投資家にはInsight PartnersやThe Chainsmokers、そしてPeter Thiel氏も名を連ねます。

Whopはインフルエンサーやデジタルブランドがデジタルグッズ(コミュニティへの参加権やオンラインコースなど)を出品できるマーケットプレイスを運営しています。実際、多く目に付くのはDiscordやTelegramコミュニティが展開するデジタルグッズやサービスです。しかし、一見すると同社が参入する領域には競合が多いように思えます。「Patreon」「Gumroad」「Shopify」に至るまで、デジタルグッズを展開できる大手サービスは数多くあります。Whopの狙いはどこにあるのでしょうか。

1つ考えられるのは、従来ソーシャル上で展開されていた広告やスポンサーコンテンツの市場の逆転を狙っているという点です。先に述べた「Patreon」「Gumroad」「Shopify」は、いずれもクリエイターやブランドが自分のデジタルグッズを展開するためのコマース機能付きのサイト作成を展開していますが、マーケットプレイスを運営しているわけではありません。そのため個人や各ブランドが独自にコンテンツ発信などをして、販売サイトへユーザーをたどり着かせる必要がありました。

そこで販売サイトへの流入フローを逆転させようとしているのがWhopです。ユーザーが一元的にデジタルグッズを検索できる場所ができれば、インフルエンサーやブランドは出稿していたデジタル広告費用を、そのままWhopのマーケットプレイス上のリスティング広告や検索結果の優先表示プランに充てる可能性もあります。Amazonが自社マーケットプレイス上で広告出稿するようにした戦略と同じです。まさにWhopはデジタルグッズ版Amazonのポジションを狙っていることが考察されます。

ただし、この戦略を満足させるにはAmazonほどの需要供給を発生させる必要があります。この点は競争市場を毛嫌いするPeter Thiel氏が投資家に入っていることから、何かしらの市場独占的な勝ち筋を見出しているのかもしれません。おそらく、Ethereum決済機能を兼ね備えていたり、クリプト系コミュニティと比較的強い繋がりを持っていたりすることから、OpenSeaにも掲載されない小口のデジタルグッズの大量出品など、次のWeb3トレンド到来時に跳ねる算段があるのかもしれません。

7月25日〜8月7日の主要ニュース

2.8億ドルの調達を発表した「Neuralink」(Image Credit:Neuralink)
2.8億ドルの調達を発表した「Neuralink」(Image Credit:Neuralink)

Neuralink、Founders Fund主導のシリーズDラウンドで2億8,000万ドル調達

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オランダのMeatable、培養豚肉分野で3,500万ドル調達

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雇用主の意思決定を支援するOne Model、4,100万ドル調達

AIを活用したプラットフォームで、採用・雇用・昇進・レイオフなどワークプランニングに関する雇用者の意思決定を支援する「One Model」は、Riverwood Capitalがリードするラウンドにて4,100万ドルの調達を発表した。— 参考記事

産業機械の故障リスクを予測、Tractianが4,500万ドル調達

AIを活用して機械故障を予測する産業アセットのモニタリング企業「Tractian」は、General CatalystとNext47が共同リードするラウンドにて4,500万ドルの資金調達を行なったと発表した。— 参考記事