GB Tech Trend #086: 自動運転時代のオーディオアプリ「Autio」の可能性

車内エンターテイメント領域における音声コンテンツ市場で大きく成長しようとしています。

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590万ドルの調達発表した「Autio」(Image Credit: Autio)

執筆: Universe編集部

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位置情報を利用して、運転中に近くの都市、町の物語をナレーションするロケーションベースのオーディオエンターテイメントアプリ「Autio」が、iHeartMediaがリードするシードラウンドで590万ドルを調達しました。

TechCrunchの記事によると、Autioは現在iOSで利用可能で近日中にAndroid版もリリース予定。2020年8月には「HearHere」として名前でリリースされ、1,500件の位置情報付きストーリーを提供してスタートしました。現在、Autioは全米で1万以上のストーリーを提供し、23万人以上の登録ユーザーを抱えています。また米国の航空会社「JetBlue」とのサービス統合を発表し、米国内の目的地29都市のオーディオコンテンツにアクセスできるようになったとのことです。

さて、Autioは車内エンターテイメント領域における音声コンテンツ市場で大きく成長しようとしています。同社が成長をする上で、次のようなキーワードが重要となりそうです。

  • コンテンツ体験の拡張
  • 自動運転市場

ひとつずつ見ていきましょう。最初の「コンテンツ体験の拡張」とは、適切なタイミングで効果音などを使うことで体験性を高めることです。この領域では、絵本読み聞かせサービス「Novel Effect」が例として挙げられます。

Novel Effectは、オンラインの読み聞かせプラットフォームを提供するスタートアップです。同社のプラットフォームでは、絵本を読み聞かせる際に音声や音楽、効果音などを駆使したリッチな体験を提供しています。同社プラットフォームでは、絵本を読み聞かせる際に、音楽や効果音などのサウンドエフェクトを組み合わせることで、絵本の物語をより臨場感あふれるものにすることができます。Novel Effectでは、子どもたちが自分で読めるようになる前の、親子での絵本の読み聞かせに特化していて、定番の絵本から新しい作品まで、幅広いラインナップの絵本が用意されています。

Novel Effectの事例をAutioに当てはめると、たとえば移動中の車体ロケーションや天候情報などに基づいて、よりユーザーの没入感を上げる効果音を適切なタイミングで与えるような機能が考えられるでしょう。ダイナミックな演出が車内エンタメコンテンツとしてそのサービス価値を高めます。

次に「自動運転」に関して。Autioは現在自動運転のユースケースに絞っているわけではありませんが、将来的に完全自動運転技術が普及すると、サービスの使い方や競合マップも変わってくるかもしれません。例えば自動運転社会におけるVRエンタメサービスを開発する「holoride」が挙げられます。

holorideは、ドイツに本社を置く車内VRスタートアップです。同社は、自動車メーカーと提携し、車内でのエンターテインメント体験を向上させるための技術を提供しています。holorideの技術は、車の動きや進行方向に合わせて、VRコンテンツをリアルタイムで調整することができるという特徴があります。これにより、車内でのVRエンターテインメントがより没入感のあるものになり、酔いやすい人でも快適に楽しむことができるとされています。

2023年現在では、車内エンタメとして受け入れやすいのは、安全の観点からもオーディオと言えるでしょう。ただし、5〜10年のスパンで見ると、視聴コンテンツが大きくこの市場を獲りにくると思われます。この点、VRといった室内コンテンツも競合として名乗りをあげてくるかもしれません。

元々、米国は車社会で日本と比較しても車内コンテンツ系スタートアップが大型調達をしやすい市場環境ではあります。現在市場では2C向けサービスに追い風が吹いていますが、今後もこの成長速度を維持できるのか、市場環境が自動運転技術の登場のようなファンダメンタルな変化がないのかといった視点からも注視されます。

3月21日〜4月3日の主要ニュース

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