GB Tech Trend #082: 匿名のはずのウォレットからSNSアカウントを割り出し?「Addressable」からWeb3マーケの未来を考えてみた

Web3ならではのマーケティングアプローチに注目が集まりそうです。

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750万ドルの調達発表した「Addressable」(Image Credit: Addressable)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

2月2日、Web3マーケティングサービス「Addressable」が750万ドルのシードラウンドを公表しました。暗号資産ウォレットユーザーのSNSアカウントを特定し、企業やコミュニティが直接Twitterなどのソーシャルメディアを通じてマーケティングできるサービスを開発しています。

TechCrunchによると、Addressableが5億件以上のウォレットと1億件以上のソーシャルアカウントを調査し、これらのデータポイントに一致するアルゴリズムを作成した旨の記載があります。ただ、明確にAddressableの独自技術に関してパブリックな確証が得られているとの記載はなく、その裏付けはあくまでも今回のラウンドに出資した投資家の評価で語られています。投資家にはViola Ventures、Fabric Ventures、Mensch Capital Partners、North Island Venturesらが名を連ねています。

さて、Addressableの登場は、かつてのFacebookやInstagram、Twitterに関連したマーケティングサービス登場の最盛期を思い出させます。たとえばInstagramでは、ユーザーが投稿写真につけたロケーション情報(店舗や地名に紐づけられたハッシュタグなど)から、特定エリア周辺の店舗情報をプロモーションするサービス「GroundSignal」が登場しました。「ハイパーローカルマーケティング」と呼ばれる新たなマーケティング領域の誕生です。このトレンドは位置情報共有SNS「Zenly」を買収し、同社のコア機能にロケーションを組み込んでいくことになったSnapchatにも引き継がれています。

ではWeb3を起点とした時、どのような新たなマーケティング領域が誕生するのでしょうか?

今回、Addressableが提供するとしているサービスはシード段階でまだあまり情報も少ないので断定はできないのですが、匿名性の高いウォレットユーザーのSNSアカウントを特定「できた」とする点が特徴であり、やろうとしていることはMailChimpなどのシンプルな情報配信の可能性があります。ただ、購入したNFT資産に関連するゲームやイベント情報を単純にSNSにプロモーションするだけでは、Web3“ならでは”の領域として昇華することは難しいように思われます。

ここからは私見ですが、Web3ならではのマーケティング手法のアイデアとしてひとつ、「リミックス」という考え方をご紹介させてください。

Web3では著作権による利益を放棄し、作品を完全にパブリック・ドメインに置くことを可能にする「CC0」の考え方が率先して取り入れられています。誰かが生み出した作品を自由に使えるように開放し、新たな作品を生み出すためのリミックス活動を促進させる文化が醸成されつつあるのです。

この特定のユーザーに対して、企業が自社ブランドをモチーフにしたデジタル作品のリミックス創作オファーを出す「リミックスオファー」が、新たなマーケティング活動として価値を見出されることも考えられるのです。

実際、NIKEに買収されたバーチャルスニーカースタジオ「RTFKT」が、当時18歳のデジタルアーティスト「FEWOCiOUS」とコラボレーションして制作したNFTスニーカーには300万ドル超の値が付けられました。新進気鋭のアーティストとのコラボレーションによってブランド側の認知度のみならず、制作したアーティスト側にも制作費以上の利益がもたらされました。

企業とクリエイターがまさに「コラボレーションして」マーケティング活動を手がけたケースです。

Web3ではこのように、マーケティング活動で生じたクリエイティブに新たな価値を付与できる可能性が出てきます。この新しい仕組みを取り込むことで企業とクリエイターがブランド価値を相乗的に上げる、そんなWeb3ならではのマーケティングアプローチに注目が集まるのではないかと考えています。

1月23日〜2月6日の主要ニュース

1.1億ドルの調達を発表した「Fever」(Image Credit:Fever])
1.1億ドルの調達を発表した「Fever」(Image Credit:Fever])

ゴールドマンサックスが出資するイベント企業「Fever」1.1億ドル調達

イベントマーケットプレイス「Fever」が、18億ドルの評価額で1億1,000万ドルの資金調達を発表した。これまでにも出資していたゴールドマンサックスリードを務め、Convivialité Ventures、Goodwater Capital、Alignment Growth、Vitruvian Partners、Smash Capitalらがラウンドに参加した。— 参考記事

南米ブラジルの即時配達サービス「JOKR」5,000万ドル調達

ブラジル市場で食料品の即時配達サービスを提供するルクセンブルク拠点のスタートアップ「JOKR」が、13億ドルの評価額で5,000万ドルのシリーズCラウンドを公表した。既存投資家のG Squaredがリードを務め、その他の出資者にはGGV Capital、Tiger Global Management、HV Capitalが含まれている。同社はこれまでに合計4億8,000万ドルを調達している。— 参考記事

カナダ発のマイニングスタートアップ「Pow.re」920万ドル調達

カナダのマイニング企業「Pow.re」が1億5,000万ドルの評価額で920万ドルを調達した。このシリーズAラウンドはHaru Investがリードし、TrinitoとRFD Capitalらが参加した。— 参考記事

シカゴ拠点の配送ネットワーク企業「Tusk Logistics」160万ドル調達

配送ネットワーク「Tusk Logistics」が、Forum Venturesがリードする160万ドルのプレシードラウンドを発表した。同社は荷送人を地域の小包輸送業者ネットワークに加えることで、FEDEXやUPSのような主要配送業者よりも多くの配送オプションを生み出すことを目指す。TitletownTechとFulfillment IQもこのラウンドに参加している。— 参考記事

スタートアップのサービス立ち上げ支援企業「Jeff」9,000万ユーロ調達

スペイン・バレンシアを拠点とする、スタートアップのサービス立ち上げから運営までを支援する「Jeff」が、DX VenturesがリードするシリーズCラウンドで9,000万ユーロを調達したことを発表した。— 参考記事

大麻卸売プラットフォーム「Leaflink」1億ドル調達

大麻卸売プラットフォーム「Leaflink」が、CPMG、L2 Ventures、Nosara Capitalらが共同リードしたシリーズDラウンドで1億ドルを調達したことを明らかにした。— 参考記事