GB Tech Trend #081: ゲームクリエイティブもAIが自動生成「Scenario」は市場を一変させるかも

「AI × Metaverse」「AI × Web3」といったよりエッジの効いたサービスが世の中に展開されそうです。

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600万ドルの調達発表した「Scenario」(Image Credit: Scenario)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

Stable Diffusionのβ版発表から未だ半年足らず。スタートアップ市場において自動生成AI領域は注目の的になっています。そんな中、新たに頭角を現しつつあるのが「Scenario」です。1月19日、Play Venturesをリードにした600万ドルの資金調達を発表しました。出資者の中にはTwitch創業者のJustin Kan氏らも含まれています。

Scenarioはゲームアセットに焦点を当てた自動生成AIです。ユーザーは自身の作品を教師データとしてアップロードし、AIがユーザーの作品世界観やキャラクターの特徴を学習後、似たような作品を出力します。AIに関しての知識不要で活用できるノーコードツールとなっています。

自動生成AIに付きまとう著作権の問題に関してScenarioはアップロードユーザーに一任しており、自作もしくはオープンソース作品のアップロードを奨励しています。これはPinterestなどが著作権をユーザー側の問題として自社を免責する規約と同じ考え方です。

ゲーム市場における自動生成コンテンツ(ジェネレイティブ)と聞くと、NFTを思い浮かべる方も少なくないでしょう。Scenarioを使えば、数千種類のコレクションによって構成されたNFTキャラクターシリーズを、初心者レベルのクリエイターでもリリースできるようになるかもしれません。

また、Scenarioの登場はNFT市場の機運を高めるきっかけをもたらす可能性もあります。たとえば、著名VCのAndreessen Horowitzが出資するフィリピン拠点のスタートアップ「BreederDAO」が実践するNFTファクトリー構想が挙げられます。同社はPlay-to-Earnモデルを採用するNFTゲームプラットフォームが、プレイヤー需要に伴うNFTアセットの供給を着実に行えるような生成システムを開発しています。

近年、Yield Guild GamesのようなNFTゲーム上でお金を稼ぐ「プレイヤーギルド集団」が登場することで、ゲームプラットフォームの経済流動性が高まることが証明されつつあります。しかしながら、NFTを生成する供給体制が伴わない限り、流動性を最大化できない新たな問題が発生しています。こうしたブロックチェーンゲーム資産の供給ソリューションを提供するのがBreederDAOです。

Scenarioのターゲットユーザーはあくまでも一般クリエイターですが、同社が持つゲーム資産の自動生成と、BreederDAOが保有するようなブロックチェーン供給ロジックを組み合わせた新たな自動生成AIが登場すれば、「AI × Metaverse」「AI × Web3」といったよりエッジの効いたサービスが世の中に展開されそうです。

さて、Business Insiderの記事では、昨今のAI市場は3つの領域に分けられると述べられています。それは(1)AI基礎モデル構築(2)他社AIモデルを活用した(主に)C向けソリューション(3)モデル構築からソリューションまでを一気通貫に行う領域の3つです。

(1)は2B向けのサービスとして確立されている一方、(2)は写真アプリを主な市場として活躍するスタートアップが該当します。たとえばPrisma Labsが提供する写真編集アプリ「Lensa AI」が挙げられます。同アプリの人気機能である、写真からアバターを生成する「Magic Avatar」はStable Diffusionをベースに提供されているサービスです。Scenarioは(3)に区分されそうです。

独自のAIモデルを構築する企業は競争優位性も高いですが、もっと敷居の低い参入先としてはPrisma Labsのような自社の既存プロダクトに一般公開されたAIモデルを導入し、新たな価値を生み出す方法が挙げられます。ScenarioのようなAIモデルをどのようにして自社プロダクトに活かすのか。2023年はこのような組み合わせという視点で、これまでになかった商機が広がりそうです。

1月11日〜1月23日の主要ニュース

2,760万ドルの調達を発表した「EarthOptics」(Image Credit:EarthOptics)
2,760万ドルの調達を発表した「EarthOptics」(Image Credit:EarthOptics)

農家・牧場主向けの土地データ企業「EarthOptics」2,760万ドル調達

地上センサー・衛星・土壌サンプル・機械学習モデル・農学の専門知識を用いて、農家や牧場主が土地データに基づく意思決定を行えるよう支援する「EarthOptics」は、2,760万ドルの資金調達ラウンドを発表した。Conti Venturesがリードを務め、他の投資家にはRabo Food & Ag Innovation Fund、CNH Industrial、Louis Dreyfus Company Ventures、CHS and Growmark’s Cooperative Ventures、Leaps by Bayer、 FHB Ventures、S2G Ventures、 iSelect Fund、 Route 66 Ventures、VTC Venturesなどが含まれている。同社は合計3,850万ドルを調達している。— 参考記事

自律走行型電気トラック「Outrider」7,300万ドル調達

倉庫の配送ヤードで使用する自律走行型電気トラックを開発している「Outrider」は、FMCapitalがリードする7,300万ドルのシリーズCラウンドを完了した。ADIA、Nvidia、B37 Ventures、Lineage Ventures、Presidio Ventures、住友商事、ROBO Global Ventures、Koch Disruptive TechnologiesとNEAも出資した。同社はこれまでに総額1億9,100万ドルを調達している。— 参考記事

ウェアラブルヘルスケアサービスを提供する「Cari Health」230万ドル調達

医師がウェアラブル端末で患者をモニタリングするためのアプリケーションを開発している「Cari Health」が、San Diego Angel Conferenceがリードし、NuFund Venture Group、Cove Fund、Chemical Angel Fund、Medical Devices of Tomorrowが参加した230万ドルのシードラウンドを完了した。— 参考記事

医療機関向けサイバーセキュリティサービス「Censinet」900万ドル調達

医療機関のサイバーリスク軽減を支援する「Censinet」は、MemorialCare Innovation Fund、Rex Health Ventures、Ballad Venturesが共同でリードする900万ドルのラウンドを完了した。LRVHealth、HLM Venture Partners、Schooner Capital、Excelerate Health Ventures、Cedars Sinaiらも投資した。同社はこれまでに総額1,930万ドルを調達している。— 参考記事

自閉症の子供ケアプラットフォーム「Genial Care」1,000万ドル調達

ブラジルのサンパウロを拠点とする、自閉症の子どもをケアする人たちに教育とサポートを提供するプラットフォーム「Genial Care」は、General Catalystがリードし、Atlantico、Canary、他個人投資家が参加した1,000万ドルのラウンドを発表した。— 参考記事

ティーン向けSNS「Slay」270万ドル調達

10代の若者向けのソーシャルネットワークを運営する「Slay」は、Accelがリードし、20VCらが出資した270万ドルのプレシードラウンドを発表した。— 参考記事