GB Tech Trend #074: 今度はShopifyブランドを買収、アグリゲーター「Everstores」のメリットとは

日本においても同様のモデルがやってくるかもしれません。

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1,750万ドルの調達を果たした「Everstores」(Image Credit: Everstores)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

創業から約5年で34億ドルという巨額の資金を集めたのが、Amazonアグリゲーションを事業領域とする「Thrasio」です。同社はAmazon上で収益率の良いブランドを買収し、長期的な運営をしていく、その名の通りアグリゲーション事業を行っています。この領域では、競合スタートアップも次々と登場し、2005年創業で10億ドルの調達をした「Berlin Brands Group」、中国では6,000万ドルを調達した「Nebula Brands」などが挙げられます。

Amazonアグリゲーターの領域は注目を集めていますが、先日、プラットフォームをAmazonではなくShopifyにして活躍する「Everstores」が1,750万ドルの資金調達を発表しています。Thrasio同様、Shopify上にあるD2C企業を買収、統合していく事業を手がけています。競合には累計1億3,700万ドルの調達を果たした「OpenStore」が存在します。

TechCrunchによれば、ステルスの段階ですでに3社の買収を完了しており、この買収を通じて1億にも及ぶデータポイントを獲得。現在、500以上のShopifyブランドがEverstoresの買収候補としてサインアップした上で、このデータを参照しているそうです。

さて、そもそもの起点となるThrasioの事業モデルはどんなものなのでしょうか。一言で述べれば「買収型起業」と呼べます。他事業者を買収することで、高い収益性を最短で実現させる事業形態です。これを実現するために、Amazonのサードパーティに目をつけたのがThrasioでした。

Thrasioが重きを置いているのは「3R」という、レビュー(Reviews)・レート(Rating)・ランキング(Ranking)の3つを評価基準とするものです。「そのブランドたらしめる、高い評価内容のこもったレビューが存在するのか」からブランド査定が始まり、次に「そのブランドポジションを支えるための全体評価を持っているのか」を確認、最後には「高いキーワードボリュームでオーガニックな順位付けがされているのか」を見て、認められたものが買収候補として挙がるそうです。

高い評価のブランドを統合して顧客を最大化できれば、Amazonには非常に信頼性の高いロジスティクスのシステムが備わっていて配送などの足回りを共通化できるため、この買収統合モデルが成立する、というわけです。

逆に、今回取り上げているShopify上のブランドはAmazonほどロジスティクスの恩恵を受けていません。そこに目をつけたのがOpenStoreやEverstoresです。

データを参考にShopifyの中で最も効率化できる(もしくはできそうな)ブランドを見つけ、ひとつのEC傘下にすることができれば、ロジスティックス面での統合が可能になります。倉庫の一元化や大量配送が実現することで「規模の経済」を達成することに繋がるのです。各ECプラットフォーム別アグリゲーターが登場している状態ですが、日本においても同様のモデルがやってくるかもしれません。

9月21日〜10月3日の主要ニュース

1,000万ドルの調達をした「Regie.ai」(Image Credit:Regie.ai)
1,000万ドルの調達をした「Regie.ai」(Image Credit:Regie.ai)

AIテキスト生成を活用したマーケ支援「Regie.ai」1,000万ドル調達

OpenAIのテキスト生成システム「GPT-3」を使ってブランド向けの営業・マーケティングコンテンツを作成するのが「Regie.ai」だ。同社はScale Venture Partnersがリードし、Foundation CapitalとSouth Park Commonsが追加出資した1,000万ドルのシリーズAラウンドにおける資金調達を公表した。同社はこれまでに合計で1,480万ドルを調達している。— 参考記事

Web3セキュリティカンパニー「Blowfish」1,180万ドル調達

ウォレットに代わって悪意のあるトランザクションをスキャンし、ユーザーのために追加のセキュリティ層を作成する、スウェーデン拠点のWeb3セキュリティ企業「Blowfish」は、Paradigmがリードするラウンドで1,180万ドルの資金を調達した。— 参考記事

大学生向けヘルスケア企業「Caraway」1,050万ドル調達

大学生向けにバーチャル医療アプリサービスを提供する「Caraway」は、7wireVenturesとOMERS Venturesが共同リード、Hopelab Venturesが参加するシードラウンドで1,050万ドルの調達を実施。— 参考記事

AI配送レコメンデーションサービス「Noodle.ai」2,500万ドル調達

AIを活用して最速の配送手段を提案する「Noodle.ai」が2,500万ドルのシリーズCラウンドを調達。本調達は、HoneywellとServiceNowのベンチャーキャピタル部門がリードしている。同社は累計9700万ドルを調達している。— 参考記事

移民向け融資サービス「Nova Credit」7,940万ドル調達

信用情報が不足している移民向けに融資支援する「Nova Credit」は、HSBCから1,000万ドルを調達した。同社はこれまでに累計7,940万ドルを調達している。— 参考記事

再保険向け分散型保険プロトコルを開発する「Re」1,400万ドル調達

再保険市場のための分散型保険プロトコルを設計する暗号スタートアップ「Re」は、1億ドルのポストマネー評価額で1,400万ドルのシード資金を調達した。投資家にはTribe Capital、Framework Ventures、Morgan Creek Digital、SiriusPointが含まれている。— 参考記事