GB Tech Trend #064: InstagramのNFT機能にみる「Web3」ユースケース

ビッグテックによるWeb3領域への参入攻勢が強まりつつあります。

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NFT機能の試験的提供を始めた「Instagram」(Image Credit:Alexander Shatov)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

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ビッグテックによるWeb3領域への参入攻勢が強まりつつあります。

Meta傘下のInstagramは5月10日、試験的なNFT機能の導入を発表しました。具体的には「デジタルウォレットの接続」「デジタルコレクティブルの共有」「クリエイターとコレクターの両方に自動タグ付け」の3つの機能を展開するそうです。

これまでソーシャル上でのNFT利用用途は、プロフィール写真への実装以外あまり見当たりませんでした。Twitterはいち早く対応を発表しましたが、こちらもTwitter Blue(日本未上陸の有料サブスクリプション機能)登録を経由して、六角形のプロフィール写真を登録できる程度です。

そんな中、登場したのが今回のInstagramのNFT機能です。

本機能の先に見える新しい市場がデジタルファッションです。たとえばデジタルファッションスタジオ「The Fabricant」のような企業は、写真に映るモデルに奇抜なファッションアイテムを着せ、かつ該当アイテムをNFTとして購入する体験を確立しつつあります。デジタル空間だからこそできる表現(炎や氷など)を纏ったアイテムに興味を持ってもらうというプロセスを社会実験として進めてきました。

「メタバース」が人気になるにつれ、デジタルファッションを自分のアバターに纏わせたいとするニーズも高まっています。こうしたニーズを活かし、モデルの写真からNFTデジタルアイテムを購入、自撮り写真にアイテムを纏わせてシェアをしたり、アバターに着させるといった広いユースケースを狙うスタジオ企業が増えつつある印象です。

ちなみにThe Fabricantは先月に1,400万ドルの調達を実施し、デジタルファッション文脈の市場参入を強めています。

さて、今回のInstagramのニュースでは、NFTのデジタルファッションにおける楽しみ方を広げる可能性を大いに秘めていると考えます。先述したデジタルファッション市場を例に取れば、Instgaramインフルエンサーが着ているデジタルファッションアイテムをアプリ上で購入、自撮り写真に加工で着させたりして楽しむといった遊び方が徐々に浸透するかもしれません。

実際、自撮りのポージング写真を送付すると、デザイナーがデジタルファッションを纏った写真を仕立ててくれる「Auroboros」というサービスが既に存在しています。こういった流れからも、インフルエンサーと同じモノを揃えたいと考える「同一化ニーズ」を軸にした、NFTアイテムのバイラルが起こるかもしれません。

購入したアイテムはNFTとして自分のアバターに着させることもでき、アバターは親会社Metaが展開する「Horizon Worlds」で展開できるようになることも想像できます。ここまでユースケースを広げることができれば、モバイルアプリ「Instagram」から始まり、メタバース「Horizon Worlds」まで一気通貫したユーザージャーニーを描くことができます。

Metaが考えるメタバース・Web3戦略は未知数な点は多くありますが、日本からもThe Fabricantのように2D写真から始まり、メタバース空間におけるアバター着用ニーズまでを包括したファッション企業やサービスが登場してもおかしくないと考えています。インフルエンサー企業が真っ先に手をつけそうですが、今後市場がどう動くのか注目でしょう。

5月3日〜5月16日の主要ニュース

大手HR企業「Gusto」(Image Credit:Gusto)
大手HR企業「Gusto」(Image Credit:Gusto)

HR・給与計算サービス大手「Gusto」が1.75億ドル調達 サンフランシスコに本拠を置く企業向け人材プラットフォームを開発「Gusto」が、昨年T. Rowe Price Associatesがリードした1億7500万ドルのシリーズEラウンドに5500万ドルを追加調達し、企業価値を95億ドルとした。同社はこれまでに総額7億4610万ドルを調達している。— 参考記事

Reid Hoffman率いるAIスタートアップ「Infection AI」が2.25億ドル調達 LinkedInの共同創業者Reid Hoffman氏と、DeepMindの創業メンバーMustafa Suleyman氏が率いる機械学習スタートアップ「Inflection AI」は、米国証券取引委員会への提出書類によると、2億2500万ドルの株式による資金を確保したとのこと。同社は(まだ)資金の出所を明らかにしていないが、Hoffman氏がパートナーを務めるGreylockがおそらくその1つであるとされている。— 参考記事

ビッグデータを活用した資産プラットフォーム「TIFIN」約1億ドル調達 AIを活用したパーソナライズされた資産管理プラットフォーム「TIFIN」は、1億900万ドルのシリーズDラウンドを実施。出資元にはFranklin Resources、Motive Partners、Hamilton Laneなどが名を連ねた。同社は総額2億600万ドルを調達している。— 参考記事

請求書支払い分析サービス「Cushion」1,200万ドル調達 ユーザーが請求書情報を追跡、支払い、融資するためのアプリを開発する「Cushion」は、Rose Park Advisorsがリードする1200万ドルのシリーズAラウンドを実施した。Flourish Ventures、Vestigo Ventures、TSEF、Green Cow Venture Capital、CMFGらも出資した。同社はこれまでに合計2130万ドルを調達している。— 参考記事

クリプト取引所プラットフォーム「Oasis」2,700万ドル調達 暗号通貨資産を借りたり、交換したり、稼ぐことができる分散型金融プラットフォームを構築する「Oasis」は、2,700万ドルのシリーズAを調達した。本案件の投資家は、UDHC、Blizzard the Avalanche Fund、Inveniam、Redwood Trust、TrustLabs、Mirae、Gate Ventures、LedgerPrime、StableNodeなどが挙げられる。同社は総額2810万ドルを調達している。— 参考記事

A16zも出資するクリプト企業「TipTop」2,300万ドル調達 Postmatesの創設者Bastian Lehmann氏によって設立されたステルス・クリプトスタートアップである「TipTop」は、シリーズAラウンドでa16zから2300万ドルを調達した。Marc Andreessen氏が取締役に就任しており、本ラウンドの他の支援者には、Sam Altman、Naval Ravikant、Uncork Capital の Andy McLoughlin と Jeff Clavier、および元 Coinbase の VP である Dan Romeroが挙げられる。— 参考記事