GB Tech Trend #058: 脱Amazon、大手企業向けShopifyとして活躍する「Scalefast」

自社ブランドサイトとして確立させたいというジレンマに応えたのが、EC向けクラウドインフラを提供する「Scalefast」です。

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ゲーム業界からサービス展開をした大手ECプラットフォーム「Scalefast」(Image Credit:「Scalefast」)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

Shopifyは、ECサイトビルダーとしてフロントからストア管理システムまで、一貫したサービスを提供しています。ただし、主な利用対象は個人や中小企業で、大手企業はAmazonのような大量の受発注を処理できるシステムを外部に依存している状況があります。

一方、この方法ではプラットフォーム側(Amazon)にデータを抜き取られてしまう問題が発生してしまいます。販売手数料を支払う上に、出品者には顧客データが限定的なものしか共有されません。かといって、自社で巨大なECサイトを構築すれば、運用コストなどリスクのバランスが悪くなるケースも出てきます。

Shopifyより強力でスケール感のあるECサイトを組みたいが、Amazonには依存したくない。自社ブランドサイトとして確立させたいというジレンマに応えたのが、EC向けクラウドインフラを提供する「Scalefast」です。

Scalefastはリリースと同時に大量の注文が舞い込んでくるゲームソフト大手向けにECサイトソリューションを提供(現在はゲーム業界以外にもサービス拡大)しているスタートアップです。大企業ECサイトのバックエンドシステムを卸しています。

すでにECサイトを持っているがインフラ側が全く追いついていない大企業を対象に、クラウドシステムを提供しており、各種API連携やメンテナンス、ホスティング、モニタリングなど、Amazonが持っている受発注システム並にリアルタイムに大量に注文をさばける、ECに特化したクラウドインフラを構築しているのです。

Shopifyの一秒間の注文最大数は133件だそうです。一方のScalefastは175件まで対応でき、顧客獲得を逃さないと謳っています。また、ページ表示スピードもebayやNike自社サイト、Amazonよりも高く、ほぼGoogleに匹敵するとし、エンタープライズ向けECインフラの需要に応えようとしています。

コロナ禍によってEC市場は急成長中です。思い立って表側のECサービスを独自に作ることができても、突然の大量同時注文を処理しきれない、そんなインフラ側のトラブルが今後予想されます。

商材が限定されるほど、企業がECサイト運営に対して抱える悩みはAmazonのような大手プラットフォームでは解消しきれない場合があるでしょう。ニッチである一方、大企業向けに巨大なインフラを卸す「Back-end EC」としての市場ポジション確立を目指すスタートアップが国内に出てきても不思議ではありません。

2月8日〜2月21日の主要ニュース

創業3年で大型調達をした自然言語処理スタートアップ「Cohere」(Image Credit:「Cohere」)
創業3年で大型調達をした自然言語処理スタートアップ「Cohere」(Image Credit:「Cohere」)

カナダ拠点自然言語処理スタートアップ「Cohere」1.25億ドルの調達

オンタリオ州トロントを拠点とする自然言語処理スタートアップ「Cohere」は、Tiger Globalをリードに、Radical VenturesおよびIndex VenturesとSection 32らから、シリーズBラウンドとして1億2500万ドルを調達した。— 参考記事

データ分析プラットフォームサービス「Arcion」が1,300万ドル調達

DatabricksやSnowflakeなどのプラットフォーム上で、顧客が移行、複製、分析を行うためのツールを提供する「Arcion」は、Bessemer Venture Partnersをリードに、Databricksなどが参加するシリーズAラウンで1,300万ドルを調達した。— 参考記事

イメージマッピングプラットフォーム「Exodigo」2,900万ドル調達

イスラエルのテルアビブを拠点とするイメージマッピングプラットフォーム「Exodigo」は、Zeev Venturesと10D Venturesをリードに、2900万ドルのシードラウンドを調達した。— 参考記事

観光ガイドライブ配信プラットフォーム「Heygo」が2,000万ドル調達

ロンドンを拠点とし、世界の数百か所から配信されるガイド付きツアーをユーザーに体験してもらうライブストリーミングプラットフォーム「Heygo」は、NorthzoneをリードとしたシリーズAラウンドで2,000万ドルを調達した。— 参考記事

コストモニタリングサービス「Kubecost」が2,500万ドル調達

コストモニタリング・管理会社「Kubecost」は、Coatue Managementをリードに、First Round Capital、Afore Capitalの参加を得て、シリーズAラウンドとして2,500万ドルを調達した。— 参考記事

Web3.0向けアプリケーション「Multis」が700万ドル調達

Web3.0組織のクリプト発行等をサポートする「Multis」は、Sequioa Capitalをリードに700万ドルの資金を調達した。本ラウンドには、Long Journey Ventures、Sound Ventures、MakerDAO、White Star Capital、eFounders、Y Combinatorなどが参加した。— 参考記事

SDGsを意識した配送パッケージメーカー「Returnity」が310万ドル調達

再利用可能な配送用パッケージなどのメーカー「Returnity」は、Brand Foundry Venturesから310万ドルの資金を調達した。XRC Labsなどからも投資を受けた。— 参考記事