GB Tech Trend #057: 住宅の将来価値からローン算出する新たな金融モデル

リフォーム・ローンを再発明する面白い動きがあります。

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リフォーム・エクイティローンを展開する「Renofi」(Image Credit:「Renofi」)

執筆: Universe編集部

今週の注目テックトレンド

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リフォーム・ローンを再発明する面白い動きがあります。

ホーム・エクイティローンを利用したことがある方はいらっしゃるでしょうか?購入した自宅から残っているローン金額を差し引いた、「正味の住宅価値」を担保にお金を借りるローンのことです。米国では学費やリフォームなどのある程度まとまった費用を捻出するために使われる金融商品で、国内でもみずほ銀行などが商品を提供しています。

このローンにリフォームを組み合わせることで、新しい金融商品を生み出しているのが「Renofi」です。ホーム・エクイティローンの考え方では、その住宅の価値算定が重要になります。例えば、ボロボロのお家でも、立地がよくリフォームすれば大きく価値が跳ね上がる可能性があります。であれば、そこにお金を貸して回収するチャンスを伺おう、というワケです。

Renofiの仕組みは次のようなものです。まず、第三者査定員を立て、リフォーム後の住宅価値を査定します。現在の住宅価値が50万ドルで、リフォーム後に100万ドルにまで価値が上がるとしましょう。住宅価値の最大80%までローン額が組める相場であれば、エクイティローン枠は40万ドルから一気に80万ドルにまで倍増します(数値は一例です)。

Renofiは「リフォーム後」の住宅価値をベースにローンを算出し「事前に貸し出す」というアイデアの金融商品を提供することにしました。つまり、事前予測した住宅価格からローンを組む新たなビジネスモデルです。

リフォーム市場は世界規模で2兆ドルと試算があるほど巨大です。顧客は低金利、かつ柔軟な返済プランを提示してくれる新たな金融手段を求めていました。このニーズに最適化させたのがRenofiです。Renofiは、リフォームすれば価値があfがるのに、現在価値では利用できるホーム・エクイティローンが残っていない住宅所有者向けにサービスを展開しています。

Renofiの自社調査によれば、各金融機関でリフォーム後の住宅価値をローンプランとして提示しているところは皆無だったそうです。ここのギャップに切り込んだのが同社と言えます。

大手金融機関は金融商品の新たな借り手を獲得できますし、顧客は低金利でローンを組めます。もちろんリノベーション後の住宅価格に応じたローン額を返済できる能力を厳しく精査する必要はありますが、市場に柔軟な借入手段を提供できます。

パンデミックの影響もあり、手元のキャッシュを減らさずに現金調達をする需要が増えています。住宅を担保にお金を回すモデルは、2008年の金融危機(リーマンショック)の再来を彷彿とさせますが、最近ではRenofiのように顧客の返済能力に関して、AIを使った市場分析から与信スコアを算出するモデルが登場しています。

今後、住宅リノベーションのように、「資産価値が増大」するモノに対して、Renofiの金融モデルが応用される気がしています。

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